酷いあだ名だよマッスルチンチンなんて
人の身体的特徴を揶揄うなんて。良くないのは明かじゃないか。
先生は厳しく注意すべきだけど、なんかへらへらして頼りにならない。
多感な高校生に着けちゃいけないあだ名だ。
紅顔の美少年がマッスル・チンチンなんて!
皆、はー↑ぁとして僕を見る、
顔と全然マッチしないから頭を振り振り、
訳を考えて、また見る。
見るな!
そんなアカンべーしたみたいな下唇で。
友達も気の毒に思い慰めてくれるかと期待しても、
肩を叩いて、
お早うマッスル・チンチンと、
むしろ僕と友達なのを自慢している風があって、
はーとため息が落ちるよ。
困るのは女子だよ、
とても顔を合わせられない、
もう避けて避けて、
地面ばかり見るから高校生なのに猫背になってしまう。
僕が下を向いて女子をやり過ごそうとすると、
友達が背中をバンと叩くから、
ビックリして顔を上げると
女子の顔とバッチリご対面しちゃう。
困り顔で目をおよおよさせるから
こっちも申し訳なく思うけど、
すれ違った時、ちょっと笑っていたように思う。
女子に笑われるなんて耐えられないよ、
しかもこんな問題で。
しかも綺麗で良いなと思っている彼女だったし、
友達はそれを知っていての背中バシッだし。
気持ちを悟られたくないから抗議も出来ないし。
友達にこんな問題でマウントを取られるのは、
そのにやけ顔を見るに、悔しさに袖を噛みたくなるよ。
女子もだけど、男子にもそんな目を向けられるのは耐えられない。
高校生になって気の利いたグループなんかに入って
大人っぽい芸術的なセンスを磨きたいなと淡く考えていたら、
3年生にすごい人が居た。
ハンサムでスポーツマンで頭良くて、
まあ、どこの高校にも一人は二人いるかも知れないけど、
既に社会で活躍していて、
その上自分の劇団を作って主催している。
クラブの遥か上を行っている。
友達は上級生の前で揶揄うことはしないから、
それは良いんだけど、
彼らは遠くから、
マッスルーと声をかけて来て、
両手で口を覆って、
チンチンとは口に出さないけど、
口唇術を知らなくて分かるように動かす。
この流れは周りに丸わかりだから、
大声で全部言うのと変わらないから、
上級生にも筒抜けだ。
女子達も僕の存在に気付いて、肘をつつき合う。
通りでも駅でもお構いなしのお気に入りらしく、
前を歩く女子はキャッと飛び跳ねて、笑いながら逃げる。
不登校にならないのが不思議な扱いだ。
女子と云うものは、なぜあんなにまとまっちゃうのかな。
一人では済ましているのに、
まとまると始末に負えない。
こんにちはー、さようならー、げんきー?
とか言い方が気に障る。
傍から見れば全く自然だから、むしろ僕の方が悪者にされる。
しかも彼女たちはそれを十分知っているし、
僕の気持ちをざわつかせることだけを意識していて、
なんか不思議な能力で僕のダメージを計っている。
僕の落ち込みようが激しければ、
半比例して彼女たちは元気になって、
ピーと遠ざかるスピードやら、
スカートの翻り具合とか、
楽しさ一杯で見せられる目には涙が浮かぶよ。
でもご相伴に預かっている友達はケツしかみていなくてにやけっぱなしだ。
そんなことをずっとされると女子にバリアを築いてしまう自分に気が付いた。
高校1年生としてはそれは構わないかもしれないけど、
友達はそんなこと全然分からない子供だ。




