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取引

 ビジネススーツを身につけた金髪碧眼、歳は20代半ばの女性はモニターごしにある男と会談を行っていた。その女性は、タチアナが前に所属していたPMC、C&S社の代表エレンだ。

 

 彼女は、二十代でテロで死亡した義父から会社を受け継いだ若手女社長と聞けば、聞こえがいいだろう。受け継いだ会社がPMCでなければ…


 Collect & Scrap、通称"鉄クズ回収屋"。元少年兵や犯罪組織で暴力装置となっていた者で構成されている。簡単な成り立ちは、貧困や紛争などで苦しむ人々を支援する慈善活動をする上流階級出身義母と傭兵をしてた義父と出会い。そこからいろいろあって、義母が学校にいけず、教育を受けれない子供達や犯罪組織の片棒を担がされたり、少年兵らを暴力から遠ざけて、一般社会に送り出す活動をするReLIFE財団が設立。

 子供達の中で、暴力が忘れられず、社会に溶け込めないだろう子たちに、義父が、ましなことに力を使えと受け皿にC&Sが、財団の下部組織として設立した背景にある。


 あくまでも戦争の介入は一切せず、平和活動を行う方針であり、主な活動として、犯罪組織や紛争地域などの暴力との関わりを持ってしまった子供達を保護し、財団でDDR(Disarmament Demobilization Reintegration)、日本語で武装解除、動員解除、社会復帰のプログラムを受けさせる。さらには、犯罪を犯し、暴力を身につけてしまった子たちの更生施設としての活動。

 名前の由来となった、犯罪組織の武器の密造、密輸ルートの壊滅。

 紛争地域や治安が悪い地域での、警備など。


 ただ、深淵をのぞけばなんとやらで、政治や裏社会の事情に巻き込まれる為、表立って、堂々と言う訳にはいかず。そもそも、PMCの印象が悪い。他、戦争に銃が登場し、保護対象である少年兵をやむおえず射殺となる場合や政治的な面で公表されない事件に関わる等、組織的に関わりを持ったことをまわりに知られるのが嫌がられる。


 そして、軍と名のつくものにシビアな国、日本もその一つだ。

 治安悪化で、警察業務の一部委託した民間警察が必要とされたが、対テロとして銃撃戦をともなう状況が起きても、民間"軍"事会社は忌避されている。

似たようなものと言われるが、自衛隊のように微妙な立場という事だろう。


「この件で、是非ともご縁を持ちしたい」


 この事案を解決すれば、こちらが後ろ盾として、国内のReLIFE活動を認め、支援する。非公式ではあるがC&Sの日本国内の活動を黙認する。先方からの要求と見返りだ。


「せっかく社会復帰した子をまたこちら側に戻すのは不本意なんだけど…」


 組織の方針として、社会復帰を奨励している。しかし、この国で活動する意義はある。世界には独裁者の出生率を上げる政策も一つの家庭に子供は1人と制限した政策などの弊害で、捨てられたり、売られたり、劣悪な環境に置かれ、筆舌し難い人権が侵害された大勢の子供達がいる極端な国ではない。しかし、一見治安の良さを取り戻しつつはあり、世界でも最も安全な国ではある。しかし、そのような国であっても、意図せず生まれ、母子手帳もなく、戸籍もない子たちがいるし、不法滞在者や密入国者が子供をつくり、本来ならば、この国にいないはずの子ども達がいる。他にもさまざまな理由で国が認知していない子供達がいる。人身売買においても、性や臓器売買などで子供の商品的価値は高い。ある年の行方不明者数約9万人の中の割合で10代と20代でおよそ4割、9歳以下の子供たちは1,115人行方不明になり、10万人あたり12.5人が行方不明になっている。はたして、そのような事案とは完全に無関係とは言えるのだろうか?


 こちらとしては、まともでない境遇の子供達を救うことを目的に活動している。今までは、この国で活動しようとすると「そのようなことはありませんから、あなたたちの出る幕はありません」とPMCでない財団であっても断られた。前述の忌避もあるだろうが、問題は見て見ぬふりをされていた。そのかわり、なんらかの繋がりのある人権保護を訴える団体が不明瞭な活動を公的資金で行っていたり、その後をどうするか考えず、不法ではあるが生活の為にそうせざるおえなかった人々を居場所から追い出したり、疑問符が付く活動は認められていた。


「とはいえ、あの子も大人になった。こちらとしては選択肢はあの子に委ねるつもりです。とはいえ、何故今になって、当社の活動を認めると?非公式とはいえ、話が良すぎるのでは?」


 上手い話はなんとやらで訝しむ態度を隠さずに男に問う。


「貴女の嫌いな権力闘争ですよ。あなたに協力を得て、あちらの力を削ぎたい。貴女達の動きは隠蔽し、事件ごとなかったことにする以外は、極力貴女達の意にそぐいましょう。信用でしたら、商工会に則る誓約でどうです?」


「そこまで、当社にこだわる理由がわかりませんが?」


「そうですね…」


 少し考えるそぶりを見せ、答えた。


「強いて言うなら縁ですかね」

 



 

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