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後戻り

 タチアナは直感的にジェーンの盾になるように前に出る。

 目出し帽を身に着けたで3人組でガッチリと鍛えられた体格的に3人共男性、手には拳銃を持っている。古いソ連時代の小型の拳銃だ。

 1人は先行し、タチアナの前に来て、もう1人は先行した者から少し離れたところに立ち。最後の1人は出入り口を塞ぐように立っていた。


「日本政府に寄生する外国人がっ…ぁ!!」


 そう言葉を発しながら、銃を突きつけた彼にとって悪手だったことは、彼女に近づき過ぎたことであった。

 銃と手を掴まれ、まず銃口をあさっての方向にずらし、被弾の危険を避けつつ、腕を捻り、銃を奪った。

 さらには、腕を捻り上げながら、相手の体を回す様にを引き寄せて腕を背中に回して拘束し、盾にする。


 唖然とする2人に対し、タチアナは奪った銃で近くにいた男、そして、出入り口にいた男の頭を躊躇なく撃ち抜いた。


 そして、拘束した男を地面に叩きつけ、両足を撃ち無力化する。


 タチアナは拳銃を構え、まわりの警戒をしたまま、ジェーンに怪我がないか確認する。見た限りでは、怪我はない。仕方がなかったとはいえ、目の前で人が死んでいる状況だ。


 そこの襲撃してきた連中はそうだが、目の前で人を殺したタチアナを含めてジェーンを怖がらせてしまったであろう。


 しかし、奇異なことに上質な映画のアクションを見てたかのように喜んでいる様子だった。


「おお〜、これはいいものを見ちゃった」


 様子のおかしいジェーンに声をかけようとするが、タチアナの背後から声がかかった。


「やってくれたな…」


男性の声である。


「ロイ…」


 ロイと呼ばれた男性は、三十代手前の筋骨隆々のスーツをきた短く剃り上げられた赤毛の身長185㎝の大男だ。


 射殺された2人と立ち上がれず痛みに悶える襲撃犯を一瞥する。


「その為に私が受付をやる理由なんでしょ…不本意だけど。他のみんなは?」


「そこで食い止めたおかげで、こちらには被害はない。今、利用者を落ち着かせてる。あとは、警察が到着次第、事後処理だが…しばらく、みんなにはここにいてもらわないとな…」


 後方では、銃声をともなうこの騒ぎでパニックになっている様子だ。利用者でこの様子を目撃した者ジェーンのみで、各部屋から何があったかわからない状況だった。安全が確認されるまでスタッフがなんとか利用者を部屋からださないようにしている。


「そちらの嬢ちゃんは、大丈夫か?」


 ロイは、ジェーンに目を移し、声をかける。


「ええ、そちらのお姉さんに守ってもらったから、へーき、へーき」


「タフだな…」


「ええ、私のいた国はもっと物騒だったしね」


 タチアナとロイは、この娘に違和感を感じていた。しかし、タチアナに対して何かを期待するような眼差しを見るとこちらに対して害意を持っている訳ではなさそうである。


その後、しばらくして通報を受けた警察が到着した。














 


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