隠れん坊はおしまい
スプーナーからしても、タチアナに対して何らかの狙いがあることは勘付いているだろう。タチアナとしては、身を隠すことでスプーナーを撒いた上で囮に使い二人組と工場責任者を押さえるつもりであった。囮にしてマークしてなくとも騒動を起こして、さっさと逃げなかったスプーナーが目的を果たさず逃げることはないと考えていた。しかし、結果は異なった。とはいえ、エレンが駆けつけるまで、この4名を工場の敷地内に足止めをすればいい。
その時、フィオナから通信が入る。
『タチアナ姉さん、ガレージより例の二人組の姿を確認しました。ボディーアーマーに短機関銃で武装しています。車で逃走するようです。急いで阻止してください』
スプーナーを撒けなかった以上、隠れん坊の意味はない。数がいるだけで、ここの連中の脅威度は彼女にとって低い。
「何やってるんだ!!相手は二人だけだぞ!?何を手こずってるんだ!!」
「すみません!!あいつらいつのまにか消えやがって…」
「幽霊かなにかじゃねーんだぞ!!人が簡単に消えるか、とっと見つけて始末しろ!!」
怒号の元、工場責任者が部下に指示を出す。出入り口は人で固めてあるからまだ敷地内にいるはずだ。最低でも、警察が来る前に客人たちを逃さねばと考えを巡らせる。逃走に必要な荷物を積み終え、マークされていることを考え、組織の拠点に戻らず、ほとぼりがさめるまで次の潜伏先に向かうことにする。
用意した逃走用の車に乗り込んだ二人組。エンジンをかけてガレージを出た瞬間、ピンク色の粉末により視界が塞がれる。思わず急ブレーキを踏み、止まる。フロントガラスに使用された消化器が叩きつけられて大きくひびが入った上に凹んでいた。
「エンジンを止めて、動くな!!」
視界が晴れたころには、タチアナに銃を向けられて、ホールドアップされていた。防弾ガラスでないことはフロントガラスの状態で確認されており、彼女の.38スペシャル弾を防げないだろう。そして、この車で逃走することは難しくなった。




