捜査協力
「事情聴取と厳重注意を行う予定でしたが、暴力行為が見受けられましたので事情が変わりました。公的な警察に引き継ぎますのでその場で待機をお願いします。事前に状況の説明をお願いします。こちらは“任意”ですが、ご協力をお願いします」
目の前の凶器を持った集団、それを丸腰で殴り倒す男の光景に意に介さず、淡々と告げる。
「こいつらに何言っても無駄だぞ」
例の黒人はやれやれといった様子で作業員らを一瞥する。
工場の関係者たちはあちらの言葉で何かを相談している様子だった。
「こいつが勝手に敷地に入ってきたんだ!!先に手ェだして、身内が殴られてるんだぞ!!それにお前がおれらの行動を決める権利がどこにあるってんだ⁈」
恰幅のいい体型、高級時計を身につけた丸顔の中年の男が納得いかなさそうに怒鳴る。おそらく工場の責任者だろう。
「権限上の問題はありますが、そちらの対応によっては現行犯逮捕は可能です。事情はおありでしょうが、見たところ1人に対し、凶器を持って複数人が襲いかかっているのを見ていますので、それはそちらに問題があるかと…」
男は大きな声で怒鳴り散らし、もはや言葉が聞き取れないが、文句を言っているのだろう。さらには周りも同調し、大きな騒ぎとなっている。
「こちらでも事情聴取を致しますが、ご協力いただけませんのでしたら、後ほど公的な警察が駆けつけますのでそちらに引き継ぎます。その場合、任意から義務に切り替わりますのでご了承下さい」
端末を使い公的な警察へ連絡する為の動作をしようとする。
「待て!!そしたら、こうするのはどうだ?」
「なんでしょうか?」
「お前と黒人は、ここに来なかった」
背後から忍び寄り、スパナで頭部を殴打しようと振り上げる作業員をタチアナは後ろ蹴りで顎を蹴り飛ばした。
「ここまで来ると、不審車両の目撃情報がありますので、そちらも捜査のメスがはいるかと…」
雄叫びをあげながら次々と襲いかかる。
「おいおいおい!!まじかよ!!どうする、一緒にやるか?手貸すぜ」
「事情が不鮮明な状況でありますが、一応あなたは加害者でもあります。後ほど、協力願えますか?」
「それはちょっと勘弁してよ。民警の姉ちゃん」
「タチアナです。なら、お互いしばらく“自衛”に徹しましょう」
「ははっ、了解。タチアナ殿」
殴り、蹴り、投げ飛ばしながら、何事問題ないように集団を薙ぎ倒してゆく2人。
「クソ!!」
悪態をつきながら、建物の方へ走って向かう工場責任者。話にあった不審車両、お得意様の二人組を迎えてる今、すこぶる状況が不味い。招かれざる客に民間警察。少なくとも民間警察を早く始末しないと厄介なことになる。通報を防ぎ、民警の仲間が来る前になんとかすれば、ここに来なかったとシラを切ればいい。
いや、まずは客を逃さないと…
ちらり、背後を見る。仲間が一人、また一人と倒されていく。数で勝るはずが、はたして足止めになるかすら怪しい。とにかく、客を逃さないとさらに状況が悪化するだろう。
敷地のまわりは、仲間たちの住居などで固めてある。最悪、道具を使わざる得ないだろう…




