襲撃事件と…
「目的地はどうやら中古車の解体修理工場のようだね」
車がとある街郊外にある人気の少ない場所にある工場に入っていく。工場といくつか固まっている住宅街を除けば大半が畑や雑木林が点々と広がっている。このあたりはとある国籍のコミュニティと聞く。
工場付近の雑木林に隠れるようにバイクを止める。
その時、エレンのもとに報告が届く。
「一旦待機して、しばらく指示を待て。何かあれば連絡しろ」
「了解」
一旦、通信を切り、エレンは別の通信をつなぐ。
「お待たせ。ロイ、休日出勤ご苦労様」
「それはいい…あの腐れ外道…」
ぐっと怒りに歯ぎしりしながら、報告をする。
「どうやら、予想どおり自分らのコミュニティ使って声高に子供さがしてる奴らからグロいことわかったみたいね」
「まずは聞いてくれ、その団体が襲撃を受けた」
「次から次へといろいろ起こるな…」
恨みを買っているからおかしいことではないが、まさかこのタイミングで起きたことに少し驚いた。
「犯人は黒人の男。身長は190近く、髪は短く刈り上げている。映像は現在分析中だ。団体を調査していたスタッフから、なにやら争うような騒音が聞こえると相談を受けて駆けつけたら、死亡したものはいないが、連中は硬い鈍器で殴られ倒れていた。その中で、開いていたパソコンの画面と散乱していた書類、さらには意識のある奴を問い詰めたら…」
通話ごしにギリギリと怒気をはらんだ歯ぎしりが聞こえる
「児童の人身売買にかんでいた?」
「その通りだボス!!あいつらの探していたのは他人の子で!!さらにはその子はもう組織に売り払ってたんだ!!リストを見るともうひと組の子供を探している夫婦の子も被害にあっていたんだ!!あのクズ共!!」
激昂するロイに対して、エレンは諭す。
「被害者面して、弱者を食い物にする連中はどこにでもいる。だから、あたしらがいる。でしょ?」
努めて冷静なエレンは内心激怒していることは付き合いが最も古いロイは知っている。それはとても恐ろしいことだと理解していた。それを思い出したロイは冷静さを取り戻した。
「あっああ、そうだな…公的警察の対応はこちらでしておく。得た情報は送信済みだ。子供らの人生を狂わせたツケは払わせてやる」
「たっぷりと利子をつけてな。警察の対応が終わったこのホテルに来い」
「了解した」
通信を切ったあと、送られてきたデータを確認する。
児童の人身売買を行なった顧客リストのデータ、密入国や不法滞在をする為の援助、偽造された身分証明書、違法に入手した銀行口座や土地の運用などのデータが送られてきた。
その中にある自動車修理会社の名前があった。車関連で考えられるのは事故車の隠蔽、盗難車の加工や密輸などだ。
いよいよ、忙しくなりそうだ。
エレンは次々と部下に指示を出し、タチアナに次の命令を出すべく、ドローンで工場の様子を見ながら再び通信を繋いだ。




