心理的瑕疵
タチアナたちは、あれから民間警察として活動する為に会社の物件を見つけ引越しの準備を終えていた。
「思ったより、きれいでいい感じじゃない」
仕事の合間を縫って、顔を出したエレンが上座のソファーでくつろぎながら言う。
「よくこんな物件見つけましたね。廃業した民間警察の事務所とは聞いてますが…」
ロイがコーヒーを出しながらエレンに聞いた。建物は一戸建てであり、事務所だけではなくトレーニングや組み手などができる部屋がある。中古とはいえ、まだ真新しい感じがする。
「前の会社の社長トラブって弾かれたから、ここで」
「「…」」
固まるタチアナとロイを尻目にタチアナは言葉を続ける。
「ちなみにそこの壁に脳漿飛んでたって、いやほんとにきれいに掃除してくれたね」
エレンの表情はいたって笑顔だ。なお、この事件はなかったことにされている。
「事故物件ですか…」
まさかの状況にタチアナが呟くように言う。
「そう言うおまえは、前回事故物件つくったが…」
「そうでした…すみません」
エレンはいたって笑顔である。感情的にはキレているが…
「あのあと移転や活動の再開に向けてやらで、妹と財団に迷惑かけるわ。妹がすっごい心配しててな…いっそ怒られた方がマシだったよ」
エレンの妹は、先代の実子である。母が設立した財団の後を継ぎ代表をしている。
「申し訳ありませんでした」
タチアナは頭を下げたまま謝罪をする。
「反省して、殺しから離れればいいよ。財団もうちらもガキらの社会復帰活動がメインだ。お前もお前のような難儀な奴の受け皿を作りたくてできるだけ平和な国で活動したかったんだろ?とりあえず、財団と話し合った折衷案だ半分ハジキ(銃)が関わる仕事だがやってみろ」
裏の仕事を行なった都合上、彼女らを守る為に一旦、PMCに戻り、後方作業はどうかとの話があったもののとりあえず様子見にするようにエレンは話し合った結果である。何かあれば全力で守るし、責任を取ると説得していた。
「ありがとうございます…」
「本当は例外なく社会復帰したいがあたしらみたいにできない奴もいるからな…少しでも社会復帰できる奴が増えることを期待してるからがんばれ」
「はい、がんばります」
「さて、話はここまでにして体を動かそう。せっかくのトレーニングルームだ。久しぶりに相手になれ」
その言葉でタチアナとロイのトラウマが蘇った。




