ミッションコンプリート
ダイニングで瓶、ガレージでガソリンを調達して作った火炎瓶。別名モロトフカクテル。物理的破壊力は榴弾には劣るが戦闘車両にも熱によるダメージを与え、行動に支障をきたすには有効である。炎上し、視界不良の上、高熱に晒される操縦者は脱出をはかる。
防弾ガラスのカーバーを開き、装着部を解放して外に飛び出したが、その際に銃撃され、胸と腹部に衝撃がはしった。ボディーアーマー越しとはいえ、その衝撃による激痛に悶絶する。そして、後頭部への一撃で意識を失った。
「今回はヤらないんだね?」
「私をなんだと思ってるの?イレギュラーだから1人は生かす必要あるんでしょ?必要ないなら始末するけど」
タチアナが鉄屑回収屋時代から、サブとして愛用している黒い357マグナムのリボルバーを操縦者の首とアーマーの隙間に銃口を突っ込む。
「OK、ありがとう。殺さないで…まあ後はアレがドカンする前に帰ろう」
ジェーンが炎上中のパワーローダーを見る。
「敵影無し、任務終了です。お疲れ様でした」
ドローンでまわりの警戒を終えたエッチィがインカムで引き上げを告げる。
タチアナとジェーンの2人を拾いに行く道中、ロイはエッチィにある疑問を聞いた。
「そういえば別働隊の動きはどうなんだ?」
「ボスと秘書のペアですね。パワーローダーの対処出来なかった時の予備案として、こちらでキルポイントまで誘い出して狙撃する手筈でしたので同じく引き上げてます」
「結局顔すらあわせないか…」
「その点は失礼で、申し訳ありません」
「まあ、顔を知られたくないのは別段珍しくないが…」
「ジェーンがあんななので、裏方でフォローしていただいてます」
「お互い相方に苦労してるな…」
「いえ、努力目標はともかく、別の収穫がありましたのでタチアナさんには感謝してます」
「武器密造と麻薬畑…あの程度の組織にしては規模がデカくないか?」
「世間一般で言うほど日本も平和ではないのですよ。今回は、あくまで彼らは下請けで設備的にはまだ準備段階でしたし」
「なるほど…ギリギリまで待って相手の被害を大きくするのが目的か…」
「そうです。非正規部隊とパワーローダー配備は想定外でしたが…『話し合い』にはいい材料です」




