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パワーローダー

「なんか、女王エイリアンと殴りあった奴が来たんだけど!!」


 ジェーンが、銃で応戦しながら、インカムに向かって叫ぶ。


 搭乗者の背面はパワーローダーの外骨格に覆われているが、前面は身体への装着部と屋根にあたるヘッドガードとフレーム以外は身体を覆うものは本来ならばないはずである。しかし、防弾ガラスのカバーに覆われており。いくらライフルでも銃身を切り詰めた故に銃弾の性能を発揮しきれないARピストルでは撃ち抜くことはできない。作業用であることが災いし、動きが遅く射線は彼女をとらえることができなかった。


 まるで、轟音と共に嵐のようにコンクリートの塀や建物、車を重機関銃で八つ裂きにしていく。遮蔽物は意味をなさず、1発でも受ければひとたまりもないが、逃げ回るジェーンは避け続け当たらない。


「もうすぐ、タチアナさんが向かいますし、ボスもしばらくしたら来ますので持ちこたえてください」


「だから、グレラン持ってこうって言ったじゃん!!」


「パソコンごと建物を破壊する気ですか?」


「××××!!」


「Fコードはやめてください」


 エッチィはモニターを見る。現在2人の武装した敵に襲われているタチアナの近況は、首をへし折られ横たわる敵1名と残りの1人現在進行形でワイヤーガンからワイヤーを引っ張り出して首を絞めらている。


 防弾で弾が身体に着弾を防ぐとはいえ、衝撃までは防げない。社長を盾として、接近しながら銃を何発も撃ち怯ませて、近接戦闘に持ち込んだ結果だった。


 使っていたポリマーフレームで有名なオーストリア製の拳銃は弾切れになり投棄されている。


 エッチィはその一連の光景若干引いたものの表面に出さず、タチアナにジェーンの援護に向かうように指示する。


「タチアナさん撤退するにしても、ジェーンの援護をお願いできませんか?」


「了解…少し準備をしていく…」


 絞殺した敵を無理な使い方で壊れたワイヤーガンと共に打ち捨てる。


 インカムでジェーンに向けて話す。


「しばらく、ガレージから目を逸らせる?」


「やるけど、絶対!!なんとかしてね!!」


「約束はできないけど、やってみる」


 体勢を低くし、ひっそりと一階に降りるとショーウィンドウの高級車やカウンター付きのダイニング、絵画や美術品は見る影もなくなっていた。ダイニングを後に敵に見つからないようにガレージに向かう。


 まさに無尽蔵とも言える体力で翻弄し逃げ回るジェーンだが、それでも限界はある。こちらの攻撃は当たっても問題にならず、相手の攻撃は1発アウトで時間の問題であり。逃げようにも門まで伸びた一本道では背中を撃たれる。さらに、現在タチアナの言葉の通り、ガレージから目を逸らすと行動範囲が狭まりピンチだ。もしかしたら、タチアナが撤退するためにジェーンを退路から射線を逸らす囮にしたと思う人もいるだろう。しかし、ジェーンはそう思わず、タチアナの行動にはある種の信頼と呼べるものがあった。実際、彼女はやってくれた。


 パワーローダーがタチアナの存在に気づく時は手遅れだった。背後の気配に振り向いた瞬間、視界が炎に包まれる。


「モロトフカクテルだッー!!」


 思わずジェーンは叫び、大きな声で笑った。




 


 


 


 


 




 

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