純白
死にたい。
この大空に溶けてしまいたい。
どうしようもなく恋してる。
大人になったら剥奪されてしまう制服の着方、机の質感、ノートに。
すべて持ち去ってしまいたいくらいに。
舞い落ちる桜の花弁をすべて自分のものにしたいように。
やらない。
お前らなんかに渡すものか。
ずっとずっと私はそこに立ち続けたい。
だから未来のお前らなんかにそこは渡さない。
スカーフが飛んでいく。
どこへたどり着くのか知りたかった。
向日葵に囲まれて笑ってた日々に帰りたい。
誰のものかも知らない手紙にずっと胸を高鳴らせていたい。
未熟な子供の手を眺める。
握りこんで離したくないものが両手に入りきらないのだ。
年なんてとらなくてもいいのに。
ずっとこのままで。
でも進んでいくの。
抗えない逆風に吹かれて、いずれ戻れなくなる。
だから私は死ぬ。
窓枠に手をかける。
人間というものに生まれてよかった。
「いかないで」
手を握られている。
手汗と泥に塗れた、大きくて、汚い手だ。
大切なものをずっと宝箱に入れたまま、私はなくしてしまったのかもしれない。