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第三話 初恋の終わり



※※※



「初めましてですねローガン様!私はリアです!イザベラとは同い年なんですけど私の方が誕生日が遅いので義妹ということになるみたいなんですけど、私も仲良くして欲しいです!」


 リア達が屋敷に来て2週間が経つ頃に、リッチモント侯爵家で婚約者同士のお茶会をしているとリアが乱入してきた。


 なぜ使用人達はローガン様に対しても無礼にあたる、リアの蛮行を止めなかったのかと使用人達に目を向けると、みな素知らぬフリをしてジッと待機している。それどころか、リア付きのメイドはなぜか誇らしげにリアの様子を見守っているのだ。


(どうしてこんな……いや、今はそれどころではないわ。婚約者同士のお茶会に乱入するどころか、ローガン様のお名前を婚約者でもないのに呼ぶなんて)


 義妹の失礼な態度に気分を害しているに違いないローガン様に謝罪しようとローガン様に目を向けると、ローガン様は2週間前、お兄様がリアを見つめていた時の様子と同じように、口を半開きにしてポーッと熱に浮かされたように頬を赤くし、リアを見つめていた。





 一目惚れするとね、ポーッとなってしまうらしいわ。




 初恋の相手の初めて見る表情に、マリアの言っていた言葉が痛いほど頭に響き、サーッと身体中の血の気が引いていく。


 そんな私の様子を気にも止めず、ローガン様の近くの位置にいつの間にか用意されていた椅子に腰掛けたリアとローガン様が、お互いに顔を赤らめながらも言葉を交わし、良い雰囲気になっている。

 

 そんな2人の様子に割り込めるほどの自信も勇気もない私は、話すほどに、見つめるほどに惹かれあっていく愛しい婚約者と義妹の様子を、ただただ震えながら見つめるしかなかった。



※※※



 そこからの展開は早かった。ローガン様とのお茶会の度に現れるリアと、それを待っていたかのように迎え入れるローガン様。


「君の義妹だからね、仲良くしないと」


 言い訳のように繰り返すその言葉が真意でないことは、嫌でもわかってしまった。


 それでも、貴族であるローガン様はきっと、自身の心変わりを理由に婚約破棄などしないはずだ。結婚さえすればローガン様もリアを諦めざるを得ないだろう。そうすればいつか私に振り向いてくれるかもしれない。


 そんな希望に縋り、どんなに2人から邪魔そうにされようとも「婚約者は私なのだから」という一心で気づかないふりをし続けた。そんな事を続けていたところ、自分が気付かぬうちに心をすり減らしていたのだろう。1人になった時や夜のふとした瞬間に、涙が流れるようになった。


 しかし、そんな日々は"ローガンとリアの運命の出会い"から3ヶ月で終止符を打つことになった。



※※※



「お前をローズデール伯爵家の養子にする」


 あと半年で結婚というタイミングで言い放たれたお父様の言葉に、ガンッと頭を殴られたような衝撃を受けた。


 ローズデール伯爵家はお母様の実家だ。一度も会ったことがないお母様のお兄様、私の伯父様が爵位を継ぎ現伯爵になっている。


(なぜ私をローズデール伯爵家に?)


 何とか冷静を取り戻し理由を尋ねると、返ってきた言葉は「リアのためだ」だった。


 お父様が言うには、リアとローガン様は心から愛し合っている。そんな2人が引き裂かれるのはあまりに忍びない。そこで私とローガン様の婚約を私有責で破棄して、リアと婚約し直すことにしたと。


 それまで黙って聞いていた私も、さすがに黙ってはいられず口を開いた。


「私有責とはどういうことですか?婚約破棄されるようなこと、私は何も……」


 バチン!!


 部屋に響く大きな音と衝撃に倒れ込み、焼けたようにジンジンと頬が痛み出したところで殴られたのだと気がついた。


「リアから聞いたぞ!!お前、リアを陰でいじめていたというではないか!!そんなお前だから愛想を尽かされたんだろう!!最初に言ったはずだ、リアに何かしたら追い出してやると!!」

「何のことかわかりません!!私は神に誓ってリアをいじめたことなどありません!!」

「使用人の証言もある!何より清らかな紫の瞳を持つリアが嘘をつくはずがない!!」

 

 義姉の婚約者を奪うリアのどこが清らかだというのだろうか?


「前々から伯爵家でお前を引き取りたいという話をされていたが、婚約の件もあって断っていた。だがリアのおかげでお前はもう用無しだ。ハートフォール侯爵家の求める品行方正な婚約者として相応しくない行いをしたことでお前有責での婚約破棄になった」

「何かの間違いです!!お願いします、どうかお調べください!私は何もしていません!」

「くどい!連れて行け!」


 使用人に無理矢理立たされ引きずるようにして自室に戻されると、使用人のアンは「明日出立です」と投げ捨てるように言って出ていき、バタン!と大きな音を立ててドアを閉めた。


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