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第一話 私の家族

※※※



 私はリッチモント侯爵家に長女として生を受けた。私の2つ上にはオーウェンお兄様がいて、お父様お母様の寵愛は全てお兄様に注がれていた。


 殴られたり食事をさせてもらえなかったりという虐待はされなかったものの、両親からの無関心は幼心に深い寂しさを覚えた。


(勉強をもっと頑張れば、お兄様のように褒めてもらえるかもしれない)


 そんな幼い私の願いは、満点をとった家庭教師のテスト結果を見せに行き、バチンと初めて頬を打たれた時に砕け散った。


「オーウェンより頭が良いっていう自慢のつもり⁈顔がお義母様そっくりなだけでも嫌だというのに、何て性格が悪いの!」


 そう言って泣き崩れるお母様、そんなお母様に寄り添い冷たくこちらを見つめるお父様。


 頭が真っ白になりつつも、いつの間にか自室に戻っていた私は、打たれた頬を冷やしてくれるメイドのアンから亡くなったお祖母様の話を聞いた。


 どうやらお祖母様は非常に厳格な方だったらしい。奔放な性格のお母様は嫁いできてから毎日ビシビシしごかれ、お祖母様を恨むようになったそう。お父様もお祖母様には逆らえず、また幼少期から厳しくされていたこともあってお祖母様が苦手なのだそうだ。


 お祖母様は私が生まれる前にお亡くなりになっていて、お祖母様の肖像画も全て燃やしたくらいお父様お母様からすれば忌むべき存在だったと。そうして生まれてきた私がお祖母様と同じ銀髪に紅瞳を持っていたため、両親は心底落胆した様子だったらしい。


 ただし、昨今家族を虐待などしたら貴族といえど罰せられることになるため、殴ったり食事をさせなかったりということはしないものの、なるべく私と関わりたくない……と。


「できれば私もオーウェン様付きになりたかったんですけどね、これもまあ仕事ですから」


 アンはそう言い捨てるとサッサと部屋を出ていってしまった。


 これが私がまだ7歳になったばかりの出来事である。



※※※



 それからの私は、家庭教師からのテストも当たり障りのない点数をとり、なるべく自分から両親に近寄らないように心がけた。「あの眼で見られるとゾッとする」という両親の会話を盗み聞きしてからは、分厚い眼鏡をかけて瞳が見えないようにした。


 おかげで周囲から受けた評価は"容姿も勉強もまあまあの侯爵令嬢"。


 その評価に私は凄くホッとしていた。正しく私が狙っていた通りに周囲から私が見えているということだからだ。お兄様はそんな私の心情を知らず、「こんなのが妹なんて最悪だ」といつもバカにして笑っていたが。


 そんな私にも6歳の頃からお父様に決められた婚約者がいた。ローガン・ハートフォール侯爵令息だ。


 家族の愛を受けられなかった私に「僕がずっと君のそばにいるよ」と照れながら微笑みかけてくれたローガン様。


 私の初恋だった。


 眼鏡をかけるようになってからもローガン様の態度は変わらず、16歳になってローガン様に嫁ぐ日を今か今かと心待ちにしていたが、私が15歳になり、お母様が亡くなってすぐに新しいお義母様と義妹が現れたことで、それは儚い夢となってしまったのだ。



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