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第十四話 密告者



※※※



「よくやったなイザベラ」

「ありがとうございます」


 襲撃者が連行されていく様子を見守っていると、お義父様から声をかけられた。


「陛下の懸念されていた通りになりましたね、父上。イザベラに来てもらっていてよかった」

「そうだな。後はあいつらが素直に自白してくれればいいんだが……」

「そこは騎士団の方達にお任せしましょう。我々は吉報を待つだけです」

「そうよ。早く帰ってイザベラを着替えさせてあげないと」


 お義母様はそう言うと私の方に手を伸ばし、スッと私の耳から眼鏡を取り外した。


 3人が話す姿を見て、3人の無事に改めて安堵する。


 なぜ私達が襲撃計画を事前に知ることとなったのか?


 話は数日前に遡る。



※※※


 

 襲撃の起きる数日前。


 結界や浄化について司祭様と訓練を行うために教会へ向かう予定の前日、司祭様から手紙が届いた。

 その内容はというと、『家族揃って教会に来て欲しい』というものだったため、当日はお義父様、お義母様、お義兄様、私の4人揃って教会へ向かうことになったのだが。


(なぜこちらに陛下が?!)


 教会に着き、通された部屋には国王陛下が待っていたのだ。


 挨拶も早々に、なぜ陛下が教会で私達を待っておられたのか語られた。


 今から2日前、ある人物からの密告によってお義父様、お義母様、お義兄様の命が狙われていることがわかったという。

 密告者によると、首謀者は私の元家族であるリッチモント侯爵夫妻で、既に殺人を生業とする者達への依頼も済んでいる状況。

 王宮からの手紙を偽造し、私から3人を離した上で確実に殺そうという計画のようだ。


 しかし、その証拠が密告者の証言しかないため、今の段階でリッチモント侯爵夫妻を捕えるのも難しい。


 そこで、罠を張って暗殺者集団を捕え、自白をさせることでリッチモント侯爵夫妻を捕えたいという。

 暗殺者集団の根城はわかっているため今すぐ捕えることも可能ではあるそうなのだが、"聖女の家族を害そうとした"という言い逃れができない事実が欲しいため、わざと襲撃の隙を作りたいのだという。


「聖女の元家族といえど、殺人を依頼した時点で処刑は免れぬ。だが襲撃の事実と襲撃者の自白で確実に裁きたいのだ。そのためにも4人に協力を頼みたい」

「それは勿論、我々自身の為でもございますれば、ご協力は惜しみません。しかし一体なぜ我々を?我々が死んでリッチモント侯爵家に何か得があるのでしょうか?それに密告者というのはどなたなのでしょう?」


 お義父様のご指摘はごもっともだ。

 家に戻ってこいという手紙にははっきりお断りをしているため、元家族が無理矢理私を連れ戻そうとすれば聖女保護法に基づき処罰を受ける。

 だからといって、考えたくもないが、仮にお義父様達を殺されてしまった場合も、私はローズデール伯爵家の後継者となるため元家族のもとへ戻ることはない。

 では何のためにお義父様達の命を狙うのか?

 そして誰がそれを密告したというのだろうか。


 すると、陛下は少し私に気遣うような視線を向けられた。


「それがだな、密告者によると、リッチモント侯爵夫妻は聖女イザベラのことを侮っておるようでな。伯爵達がいなくなれば泣きついて戻ってくると考えているらしい」

「なっ……!!」


 元家族の私に対する侮辱ともいえる認識に、家族の顔色が怒りに染まる。


「無論、其方のことをそう考えているのは奴らだけだ。其方が侯爵らから怒られぬためにと、勉学の実力も隠し続けていたことはわかっている。それでも奴らは変わらぬ、事実から目を背けようとする。全く救いようのない……」


 陛下は額に手を当てながら「はぁ……」と深い深いため息を吐かれた。


「だからこそ、奴らは裁かれねばならん。自らの欲のために他者を害そうとする、そんなことは決して許してはならぬ。それでよいか?聖女イザベラ」


 陛下は探るような視線を、そして家族からは気遣うような視線を向けられた。


 私は、お義父様、お義母様、そしてお義兄様の顔を1人ずつ見る。


 罠を張り、暗殺者集団が捕えられれば、元家族達が受ける処罰は恐らく処刑、それも連座になる可能性が高い。


(命を狙われているというのに、お義父様も、お義母様も、お義兄様も、みんな私のことばかり心配して……。いつも私を守ってくれたみんなを、今度は私が守ってみせるわ)


 私は陛下にしっかりと向き直り、答えを口にする。

 

「はい、陛下の仰せの通りでございます」


 私が答えると陛下はフゥ、と息を漏らし「そうか」と言って、その慈しみ深い瞳を私に向けられた。


「ローズデール伯爵、もう一つの其方からの質問への答えだが……ここからはその密告者も交えた話し合いを行おうと思う」


 陛下の合図で扉から部屋に入ってきた人物を見て思わず声を上げてしまった。


「……っ!!お兄様?!」


 扉から現れた密告者は、私の"元"お兄様だった。


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