プロローグ
「イザベラが聖女だと?!そんなバカな!!いや、そもそも瞳の色が聖女と全く違うではないか!!」
陛下と共に現れ、聖女として紹介を受けた私を見て顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら怒鳴るように大声を上げる元お父様と、「そうよそうよ!」とキーキー頭に響く大声で合いの手を入れる元義母様。
「嘘だ!!聖女はリアのはずだ!!だって瞳の色が……」
非難の滲む声を上げながらも、困惑したように私の瞳と義妹の瞳を見比べる元お兄様。
義妹の…いえ、元義妹のリアはというと、プルプルと身体を小刻みに震わせながら、可愛い顔を歪め紫の瞳で私をキッと睨め付けている。そんなリアを支えるように肩に手を添えながらも、なぜか私をボーッと見つめてくる私の元婚約者ローガン・ハートフォール侯爵令息。
他にも見知った顔がたくさんいる。リアが現れた途端、私の元から離れていった元友人。「そんなんだから愛想を尽かされるのよ」と婚約破棄された私を嘲笑うためにわざわざ手紙を送ってきた侯爵令嬢。
そんな仕打ちに傷ついた私を優しく受け入れてくれた新しい家族。私の環境が変わっても、変わらずに側で支えてくれた大切な友人達。この人達が誇りに思ってくれるような私でありたい。
「鎮まれ!」
陛下の一喝でシーンと静寂が流れる会場で、陛下に促され、新しい名を名乗る。
「この度聖女の任を拝命いたしました、イザベラ・ローズデールです」