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桜の栞  作者: Maria
6/9

桜六枚、 真夏の夜に。

「いやぁ〜、夏だね〜!おっ♪しおりんは水色派じゃないんだ?」





青々と広がる夏空が清々しい、初夏の朝。

太陽がとってもまぶしい。





春山くんが元気よく話しかけてくる。





「うん。私水色ってあんまり似合わないかなって思って…」





この学校の制服のシャツは2種類あって、どちらでも好きな方を選んでいいのです。





知的な結依には水色のシャツ姿がとてもよく似合っていて、羨ましい。






だけど私は毎朝白い方のシャツを手にとってしまう。





「そんなことないと思うけどなぁ。でもまぁ、しおりんは白って感じかもね!せ・い・じゅ・ん♪」





「…ありがとう。」





春山くんと話していると自然といつも明るい笑顔になっているような気がする。





「それよりさ、これ聞いてみてよ♪」





そう言って春山くんが私の耳にイヤホンをつけてくる。





耳元から流れてきたのは、ロック…?





「俺このバンドの曲が大好きでさ!くぅ〜、早くライヴ行きてぇ〜!」





私にはあまりなじみのない曲だったけれど、春山くんは熱心にそのバンドのよさを語ってくれた。





梓先輩はどういう音楽を聴いたりするのだろう。

ロック…とかも聴いたりするのかな。





「…ってことでしおりん!今度そのバンドのライヴがあるわけですよ。一緒に行かない?」





「…えっ?私あんまりロックとか聴いたりしないし、それにねライヴとかにも一度も行ったことないっていうか…」





私の言葉をさえぎるように、春山くんは大きな声で言った。





「経験がないなら尚更だよ!俺絶対にしおりんに生で聴かせたいの!すっごいいい曲だし、歌詞も胸に響くっていうか…」





「素敵な曲で春山くんがすごく好きなんだろうなっていうのは、とってもとっても伝わったんだけど…」






春山くんはまた子どもみたいに小さく拗ねている。





「結局あの時だってデート出来なかったじゃん?しおりんが風邪引いちゃってさ…」





あの時…





桜の雨が降っていたあの日…





──





「へっくしゅん…」






「大丈夫?もしかして風邪引いちゃったのかな?」





「梓先輩…あの…」





「家まで送って行くよ。歩ける?」





「はい…ありがとうございます。」






あの雨の日、梓先輩の赤い傘に入って家まで送ってもらった。





雨のせいか春山くんから聞いた話のせいなのかは分からないけれど、熱を出して寝込んでしまった。





次の日の金曜日も学校を休む羽目に…

生徒会がある日なのに…





─金曜日。





「へぇ〜!桜さんてモテるんだねぇ!」





「そうなんですよ〜♪もう朝から葵が、土曜日が待ちきれない〜!ってうるさくって…」





─ガラっ。





「あれ?梓どうしたの?」





「梓先輩っ!今日は生徒会に参加するんですか!?」





「嫌だなぁ、二人とも…僕副生徒会長だよ?何もおかしくないでしょ?」





「だったら毎回きちんと出席して下さいよ!まったく…」





「まぁまぁ…結依ちゃん。それよりどういう風の吹き回しかな?梓くん。」





「ん〜?栞ちゃんに会いに…あれ?栞ちゃんサボり?」





「栞なら風邪で休みですよ?先輩みたいにサボったりしません。」





「そう。それよりさ…葵って?何ていう名字の子?」




「え?春山です。春山葵。私たちと同じクラスなんです。」





「ふ〜ん…」





「先輩…?」





「…恭ちゃんやっぱり今日帰るね。じゃあね。」





─ガラっ。





「えっ!?ちょっと梓先輩…!」





「止めなくていいよ。結依ちゃん。」





「でも…っ」





「…良いんだ。」





「王子先輩…?」





─土曜日。





「朝だ…うぅ〜…」





寒いし頭も痛い。

春山くんに行けないことを連絡しなくちゃ…





ピロリロリ〜♪





「はい…もしもし?」





「あ…栞ちゃん?梓だけど。風邪の具合どう?」





「まだ熱が…って…梓先輩…!!?どうして?!!」





「結依ちゃんに聞いちゃった。大丈夫?」





信じられない…

私いま梓先輩と電話で話してる。

夢…?





梓先輩は優しい言葉をいっぱいかけてくれる。

やっぱり夢を見ているのかな?





「春山くんに連絡はしたの?」





「いえ…これからです。」





「そう…春山くんに伝えとこうか?」





「え…でもそんな…」





春山くんのお姉さんと先輩が付き合っていたということは、きっと春山くんとも仲良しだったりしたのかな?





「あの…先輩って春山くんの…」





「ん〜?」





聞けない。

そんなこときっと永遠に聞いたりなんてできないよ。





「やさしいですね。梓先輩。」





「副生徒会長ですから♪」






春山くんへの連絡を先輩にお願いして電話を切った。

だけど切ったあとも余韻に浸ってしまい眠れない。





ますます熱が上がってしまいそう。





──





「しおりん遅いなぁ…♪」





「…葵?」





「……っ!」





「誰か待ってるの?」





「梓…あんたに関係ないだろ。どっか行けよっ。」





「言われなくてももちろん行くけど…」





「けど何だよ!」





「栞ちゃんなら来ないよ?風邪つらそうだったし安静に家で寝てるよ?」





「どうしてあんたがそんなこと…」





「…じゃあまたね。」





「……っ。またなんてねーよ…」





──






春山くんは暑い夏より熱い。





「そのライヴの後はさ…近くで夏祭りやってるらしくて!」





「夏祭りかぁ〜…もう何年も浴衣着てないなぁ。」





最後に着たのはいつだったかなぁ。

…梓先輩と浴衣を着てお祭りデートなんてできたら…






「浴衣持ってるの!?着て来てよしおりん!」





さらに熱気…!!





「でも…ライヴに浴衣着て行ってはしゃげるかなぁ?」





「そっか…じゃあライヴはまた今度で大丈夫!夏祭り行こう!やっぱり夏は祭りだ〜♪」





「え!?行かなくていいの?あんなに誘ってたのに…」





「いいのいいの!だって絶対、浴衣姿のしおりん最強だもん♪すげ〜楽しみだ!」





やっぱり春山くんて小さな子どもみたい。

とっても可愛らしい。

春山くんてきっとモテるんだろうなぁ。





それなのにどうして私なんかに毎日話しかけてきてくれるのかな。

不思議。






──





「栞〜♪」





「結依〜♪どうしたの?」




休み時間に結依が話しかけてきた。

とっても嬉しそうに。






「今度の夏祭り一緒に行かない?生徒会のメンバーみんなでさ♪」





「みんな…ってことは」





梓先輩に逢える。

浴衣を着て先輩と一緒に…





「お祭りは二日間やってるみたいだし、みんなの予定が合うといいよね♪」





「う、うん…!!」





わぁ〜!!

楽しみだなぁ。

先輩来てくれるかなぁ。





─その日の夜。





梓先輩…





寝返りを打っても、両腕で顔を覆ってみても浮かんでくるのは、





梓先輩…





早く逢いたいです。

逢って声が聞きたいです。





「梓先輩…」





真夜中だというのにどうしても眠れないのはきっと…





熱帯夜のせいだということにしておこう。

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