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桜の栞  作者: Maria
4/9

桜四枚、 白馬のプリンス。

─五月の終わり。





「まったく…梓のやつ今日も来てないのかぁ。」





「はい。」





「まぁ配布プリントや連絡事項は、僕から水嶋くんに伝えておきます。それでは始めましょう。」






初めての生徒会の日から、もう3回連続で梓先輩は委員会に参加していない。





そもそもあまり学校にも来ていないようで、何だか淋しい新緑この頃、という感じです。





─キーンコーンカーンコーン♪






「ごめん、栞っ!私今日バイトあるから先に帰るね。これよろしくです。また明日ね!」





「うん、気をつけてね。ばいばい♪」






机の上には結依から託されたプリントの山。

急いで職員室へ運ばないとっ。





「桜さん?僕が運んでおくから大丈夫だよ。」





「生徒会長っ!!そんな…私が持って行きますっ。」






夕暮れの教室。





王子先輩が声をかけてきてくれた。





「"生徒会長"って面と向かって呼ばれるのは少し照れちゃうな。」





「あっ…ごめんなさい。それじゃあ白馬先輩…?」





「あれ?"王子先輩"って呼んで頂けるんじゃなかったでしたっけ?」





王子様みたいな微笑み。

その名のとおり先輩は本物のプリンスみたいで、最高に爽やかな素敵男子なのです。





だから…





「でも…私なんかがそんな風になれなれしく呼ぶなんて、どうなのかなって…」





すると王子先輩はプリントをざっとまとめて、そのうちのほんの少しを私に持たせてくれた。





「はい、これ持って。職員室まで付いて来ること。分かった?」





「…は、はいっ。」





「よし。じゃあこれからは王子先輩と呼ぶこと。」





「……。」





「僕もこれから桜さんのこと、栞ちゃんて呼ぶからさ♪分かった?」





「…はいっ♪」





「それじゃあぱぱっと持って行っちゃおう!」





「はいっ!!」





──





「ツートップ?何それ〜?」





「この間ね、となりのクラスの子たちが話してたんだけどね、この学校でツートップって言われてるみたい!!」





「まぁ王子先輩は納得しちゃうよね。見た目も短髪で好青年風だし爽やかなスマイル、おまけに勉強もスポーツも出来る上に、極めつけは生徒会長!言うことなしだもんね!」





「うんうん!!毎週当たりまえのように生徒会で会ってるけど、それってとってもすごいことだったんだね!!」






もうすぐ季節は梅雨。

突然の雨のために体育の授業が変更になり自習中。





結依と2人協力してプリントを埋めながら、楽しくお喋り中。





「でもさ〜、もう一人のツートップってのはどうなのかな〜?副生徒会長のくせにいつも不参加だし。だいたい学校にだってたま〜に顔出す程度とか。」





「…まぁ、それはそうだよね…でも…」





結依はプリントの端っこに書いたハートマークに落書きをし始めた。





「でもまぁ、あれか♪あれはあれで乙女心をくすぐられちゃう感じ?ちょっと長めの髪の毛にゆるくしゅパーマが外国人のこどもみたいで可愛いわけだ。ちょっと気だるそうなところもミステリアス風な雰囲気でそそられちゃうわけね〜?」





「…う、うん。あとすっごくふんわ〜り柔らかい雰囲気っていうか、私にとって梓先輩は桜の…」




─コンコン。





やばい…っ!!

すっかり話に夢中になっていたら、小山先生がこんなに近くに…っ!!





「本家さん、桜さん。いまは"自ら習う"大切な授業中ですよ。」






「ごめんなさい!真面目に自習しま〜す!」





「是非そうして下さい。」





そう言うと小山先生は教卓の方へと戻ってくれた。

やっぱり副生徒会長の結依の信頼は厚いなぁ。






──





今日は生徒会がないのでもう帰れる。

嬉しいような寂しいような、そんな気分。





「雨…?」





革靴をはいたけど傘を忘れてしまった。





今日も梓先輩には逢えなかったなぁ。

学校休んでいたのかな。





王子先輩は学校のツートップらしく、いつ見ても女の子に囲まれている。





もちろん梓先輩も同じ状況なのだけれど、先輩の場合は学校に来る頻度の問題なのか、会えるのは本当になかなか貴重でレアキャラ並みなのです。





「…栞ちゃん?傘忘れちゃったの?」





「王子先輩…っ!!」





びっくりした〜!!

私…ぼーっとしていてまったく気がつかなかった。





「ごめんね…びっくりさせちゃったかな?」





「あっ、あの全然大丈夫です!!私ちょっとぼーっとしていて…」





「そっか。良かった!それより傘…」





そうだった。

今日の朝ママに雨が降るかもしれないからって、傘を持って行くように散々言われたのに。





ちょっぴり雨宿りのつもりがけっこう長い間こうしていたのかもしれない。





「良かったらお送りしましょう。」





王子先輩は傘を開いて少しだけ頭を傾けてる。





「……っ。」





それはまるで王子様がお姫様を迎えに来た時の挨拶みたいに。





「なんてね♪駅まで一緒に帰ろう!」





「あ…ありがとうございます…っ!!」






何だか信じられない…!!

夢見るお姫様気分。





雨が降っているせいか、周りには誰もいなくて、まるで2人っきりみたい。





ツートップの王子様を独り占めだなんて本当に夢を見ているみたい…

明日結依に自慢しちゃおうっと!!






──





「あれって…栞と王子先輩?」





「うん?どうかしたの?」





「…窓の外。」





「あぁ、桜さんと生徒会長の白馬くんか。」





「ふ〜ん…♪?」





「どうかしたの?結依?(笑)」





「何でもない♪それより今度のお休みどこ連れて行ってくれるの〜?小山先〜生?」





──





王子先輩の傘に入れてもらって駅まで歩く道のり。





き、緊張しちゃう〜!!





─コトン。





「…恭?」





綺麗な人。

まさに雨も滴る美人さん。





赤い傘を差したその人はゆっくりとこちらに向かって近づいてくる。





王子先輩の知り合いなのかな?

さすが王子様。





「…葉月さん!お久しぶりです。」





名前まで素敵な響き。





「久しぶりだね。元気だった?」





「はい。元気です。」





「そっか。良かった。…梓は…元気、かな?」






「……。」





王子先輩…?





「…"相変わらず"です。」





……?






"相変わらず"





雨の中に王子先輩の口からこぼれ落ちた、





たった一つの…





真実。


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