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6 箱庭

週末はかなり退屈だった。


『特別試験』と『法の解除』を月曜日に控えていたが、何か対策しようという気にはなれなかったからだ。まあ、対策のしようもないのだが、、


巷で話題の『Beauty Of Bullet』、通称『BOB』というバトルロイヤルゲームをプレイしたり、検閲済みのネット上の動画を見たりしていた。


二日間の食事は、学校に併設されているコンビニで購入したの物がほとんどだ。

この学園では一か月につき、個人に5万円が支給される。

支給額は個々の成績や技能によって多少変動するらしいが、平均を保っていさえすればそれより減ることはないだろう。この三年間は、コンビニだよりの生活になりそうだ。


かくして俺は怠惰とも言える土日を過ごして、週明けを迎えた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――




 「皆さん、そろいましたね」


 「「うーっす!」」


場所は男子寮前。男子数名が先生に返事をしたのち、常盤先生の後に続いて今日の特別試験の会場へと皆で足を進める。

今年は例年に比べて暖かかったため開花が早く、道の傍らの八重桜は既に散り始めていた。


 「...おはよう」


横から声がして見てみると俺の隣人、眠り姫がいた。相変わらず目が開き切っていない。

一週間の様子を見る限り、彼女はかなり燃費が悪いのだ。


 「ああ、おはよう。 もう膝は大丈夫か?」


 「...うん、おかげさまで」


 「そうか、それなら良かった」


散りゆく桜と、夜桜の茶色の髪が重なり、一層彼女の美しさが際立っている。甘やかされた愛らしい少女のような、引っ掛かりのない綺麗さである。

しかし、まんまるとした赤い大きな瞳はどこか虚ろ気で、到底輝いているとは言えないような様相であった。


 「た、大変だね、試験なんて―― 私、うまくできるかな、、」


 「心配してるのは夜桜だけじゃないと思うぞ。ほかの生徒もみんなスタートラインは同じだ。」


 「そうかな、そうだといいんだけど、、 ゆ、結城君はうまくできそう?」


まだ、何とも言えないというのが本音だ。詳細を知らない限りその先のビジョンは見えてはこない。

ただ、彼女を励ますためにもここは自信なさげな感じにしておこう。


 「いや、俺も全くできる気がしない。お前と同じだ」


 「そっか、それなら仲間だね」


 「ああ、まあせいぜいやれるだけのことはするさ」


しばらく話をしていると、巨大なゲートが前方に現れた。

場所としては生徒玄関の前方、今まであまり気にしていなかったが、この先がどうやら会場らしい。常盤先生が皆に止まるよう促す。


 「ここから先は、学校と政府、そのほかの機関が共同で使う場となっています。 その為ここから先は敷地外、法の拘束力が働きます。 来週からは、その点を注意してください」


先生が言葉を言い終わったところで、スライド式のゲートの扉が物々しい音を立てて開き、白塗りの半球状の建物が姿を現した。

一般の球場などとは比べものにならないはど巨大だ。近くまで足を進めると、その大きさがさらによく分かる。生徒たちも一様に感嘆の声を上げた。


 「これが皆さんが今から、サバイバルゲームを行うための施設になります」


建物の入り口付近、屋根付きのエントランスには、綺麗に並べられたリュックサックが数多あり、一つ一つ名前の付いた札がぶら下げてあった。

量からして、この後他のクラスもここに来ることが伺える。

生徒たちは名簿番号が早い順から自分のものを見つけて背負いこむと、その後続々と中へと入っていく。


先頭付近の生徒の間で何やら取違いがあったらしく、あたふたしていたが、そのうちに全員各々のリュックを見つけるに至った。


建物の中に入ると、そこには大きな街が広がっていた。

俺たちがいる場所から、まっすぐにメインストリートが延び、そのわきに様々な建物が並んでいる。ガラス張りのビルもあれば、灰塗りのマンションや小さな民家も点在していた。

しかし、遠くには鬱蒼とした森や、乾燥した草原も広がっており、なんとも言えない異様な雰囲気がそこにはあった。


そして―――


 「お、おい、この場所って...」


 「ああ、そうだよな...」


そんなような声が、ちらほらと周りから聞こえてきた。 俺自身もこの場所に見覚えがある。


ここはまさしくバトルロイヤルゲーム『BOB』のゲームフィールドだった。画面の中と寸分たがわない光景がそこには広がっている。


 「全員中に入りましたね。 では端末を開いてください」


常盤先生の指示に従い、端末のロックを解除すると一斉配信メールでこの試験の内容が送られてきていた。

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