道すがら弟子を鍛え、己を知る
気ままに投稿。書ける範囲で書きました。次回は四月には出すかも。
切り開けたというより、抉れるような何かがあったかのように開けた道を進んでゆく。
「♪〜〜♫〜♪〜〜」
こんな日にゃ、鼻唄でも唄うに限る。どんな日でも唄うが。
「…………師匠…………」
にしても凄いな、空を見ると細い枝が見える。勿論、手が届かないどころか、背にある山より高いぞ。
「し、しょ、………………」
にしても、今日は清々しいほどの青空だな。…………最近、色々あったし、空がオレに休めていってるかのような、そんな天気だ。
「…………師匠ぅ…………」
「もう何だよ? 行き先決めてからそんなに経ってないぞ」
情けないことにこのバカ弟子は体力が無いようだ。やはり最初は走り込みでもやらせるか、というかそんな体力ないのなら、まずそれを身につけることが最優先だろ。今まで何やってたんだ、コイツ。
「少しぐらい持ってくれても良いじゃないですかぁ?」
「よし、しゃべってられるならさっさと動け」
減らず口を聞けるならまだ大丈夫、だから行け!
「…………せっかく小屋から持ってきたのに」
「なら、お前が終始持ち続けるのが当たり前だと思うが…………」
しかし、モルドはその場で蹲った。
「今日はもう無理です、ここで野宿…………」
「せめて、町まで歩けよ!」
そんな意思薄弱だから弱いのだ、限界まで、限界が来ても歩くぐらいでないと世界最強にはなれない。
まあ、このバカ弟子がそんなものを目指すはずもなし、オレもわざわざそんな面倒な事をしようとも思わないが。
「…………ケチ臭い」
「町、あと数百メートルだぞ? そんなところで野宿するのか?」
その荷物を上手く捌けば、荷物も減らせて、屋内で寝れると思うのだが…………
「むぅ、少し持ってください」
差し出されたのは袋の半分、
「…………はぁ、しょうがない。村の前までな」
鎌を背後に回して、両手で受け取る。
「…………重ッ!」
たった数歩で動けなくなる。背後を見ると、バカ弟子が目を大きく開けている。
「あれ? そんなに重かったですか?」
バカ弟子は軽々とは行かずとも、片手で持ち上げる。
「…………弱体化か」
「大丈夫ですか? ……やっぱり自分で持ちます」
バカ弟子は結局、自分で持ち始めた。
「いや問題ない。此処の世界に来るまでに消耗した力は思ったより大きかっただけだ」
本来なら、あの程度の袋をオレも片手で持てる筈。
しかし、この世界に着いた時には、指定の転移なら三回。ランダム転移なら十回ぐらいのエネルギーしかなかった。
そのぐらいのエネルギーしかないと、常時のエネルギーも必然的に少なくなっていく。
つまり、今オレは重いものが持てない。
「ふむ、荷物持ちとしても役に立つ道案内を兼ねたバカ弟子」
「評価酷くありません?!?!」
それは最初からだ。そもそもあのジジイのような力を持ってる時点で、評価は右肩下がり。風評被害だがな。
「…………さて、オレは外にいるからお前は中で休んでこい」
バカ弟子にあと数十メートルほど先の家を指差して、去ろうとする。
「…………はい、ではありがたく休ませてもらいます……」
項垂れる弟子の姿を見送り、オレはこの町の墓場に向かう。
☆
「はい、次」
私はいつも通り、今日の仕事に取り掛かる。
「グル、ググル、ググルアア」
「ふむ、恨み節はその程度に」
ラタトスクから話、というよりこれは愚痴ですね。
人間を襲ったそうですが、食糧もやっと増えてきたところですしね。
「グル、ググルア」
「ふむ、黒い衣を纏ったよく分からんヤツですか…………」
最近見た覚えが、あっ、ランシェル。
「…………その方がどうだったか、もう少し詳しく」
後ろに控えたリスたちが部屋にどんどん入ってくる。
「…………、あの親友は一体何故こんなにラタトスクを……」
聞いてる限り、襲われた人を助けようとしてやったことらしいので、特に追求しないが…………
「いつ、帰ってくるのかな」
唯一の親友を待ち遠しく思った。
何故かラタトスクを気に入ってしまった。
パワーアップさせて、いつか出したいな。