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灰色の希望  作者: Syun
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序 誰も長所など知らない

 自分を正しく認識するのは大事だ、と誰かが言っていた。事実だと思う。自分自身のことを知っていれば、何ができて何ができないのかもわかる。致命的な失敗をすることは無くなるだろう。

 しかし、それを知る前に考えることがある。正しい認識とはそもそもどういうものなのだろうか?

 たとえば、一つのことに打ち込める人間がいたとする。彼が自分に肯定的であれば、おそらく、「集中力が高い」とか、「粘り強い」とか、「我慢強い」とか、そういう人間だと自分を評するだろう。否定的であれば、「視野が狭い」とか、「あきらめが悪い」とか、「頑固」とか、マイナスの評価で語るかもしれない。となれば、それらの自己認識は結果に拠った過去形で語られるべきだ。

 ところが、逆方向から考えるとまた変わってくる。視野が狭ければ他のものに気を取られなくてすむ。あきらめが悪ければ途中で投げ出すことはない。頑固であれば自分を曲げずに進むことができる。限られた時間の中で目的を達成するためには、それらの要素は必須と言ってもいいだろう。結局、表から見ても裏から見ても大して変わりはない。結果が見えない分、プラスの認識でも嘘にはならないというくらいだろうか。

 長所は短所、短所は長所。そうは言っても、短所を自覚する人間よりも長所を誇る人間の方が人間的に強く見える。自己認識ができている人間は本来逆だと思うのだが、誰もそんなことは言わない。あるいは、言われた方も「こいつは自意識過剰に過ぎる」と思っているのかもしれないが。

 こちらの人間性を推測した上で、相手はテンプレートのように聞いてくる。「あなたの長所はなんですか?」と。

「粘り強いところです」

「優しいところです」

「明るいところです」

「なにごとに対しても挑戦できるところです」

 などと、こちらもある程度テンプレートとして返すことになる。それが嘘であろうと実であろうと、自信満々か真面目な顔で、だ。

 高校の面接試験でそれを問われて、渋面で「わかりません」と解答したのはおそらく俺一人だっただろう。それをどう判断するのかは、俺ではなく相手に任せるしかない。

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