第5話 レジェンド級冒険者と冒険力判断テスト
レジェンド級冒険者。
それは、S級冒険者でも特に実績を残した選ばれし者だけが、名乗れる称号だ。
軍人なら元帥。
官僚なら終身名誉宰相。
冒険者ならレジェンド級。
この役職が最高の名誉を持つ。
500年の歴史をもつ冒険者ギルドでも、レジェンド級冒険者に任命されたものは、わずか10名足らず。その中でも生きて、称号を授与された人はわずかに3人。他の者たちは、困難なクエストに成功したものの命を落として殉職し、死後の昇進となっている。
レジェンド級に生きて昇進したのは、魔王の分身のひとつを討伐した勇者イール。魔王軍最高幹部の四天王の筆頭であった冥王を単独で撃破した大賢者ジジ。魔大陸にひとりで潜入し、地図を作り上げた探検家で史上最高の地理学者タレス。
俺はこの3人に並ぶために、冒険を始めたはずなのに……
「どうして、ギルドでペーパー試験を受けてるんだよ~」
「先輩、テスト中なんだから、お静かに」
「ごめんなさい」
ギルドの受付で「アレクさん、そういえば、5年に1度は受験しないといけない冒険力判断テストですが、まだ未受講のようですね。いい機会なので、やっていってください」と言われてしまい、「先輩がやるなら私も受けまーす」というナターシャと一緒に受験することになった。
こいつの座学の知識は、半端ないから絶対に負けるの分かっているのに……S級冒険者の威厳が……
※
「それでは、次は攻撃魔法の測定診断です。この魔力測定装置に、手を置いてくださいね」
受付嬢さんは、そう言って機械の説明をしてくれた。これをやるのも久しぶりだ。
俺はゆっくりと手を置く。
そうすると装置が反応し、魔力を数値化してくれることになる。
俺も一応、魔法職よりの人間なので、専門家ほどは高くないが、まあまあの結果が残せるだろう。
少しはナターシャにカッコつけることができればいいのだけど――
0→10→100と数値が上がっていく。だいたい、100で駆け出し黒魔導士レベル。300で中堅。500でベテラン。700でA級黒魔導士クラスで、だいたい世界ランク30位くらいだ。たしか、あの忌々しい女賢者エレンは、1000を少し超えて、世界ランキング1位だったはず。
あいつは、ムカつくがポテンシャルだけは高いんだよな。
俺が目指すのは、700くらい。さっきやったナターシャは、攻撃呪文を専門にしていないのにもかかわらず、650でなかなかの成績だったから、それくらいは抜いておきたい。
よしよし、順調に伸びている。700→800。おお、やっぱり俺、結構、魔力あったんだな。ちょっと安心。これくらいで止まれば、イイ感じだろう。
「おお、さすがは腐ってもS級だな」
「すげー、800超えるのはじめて見たー」
外野も少し騒がしくなってきた。ちょっと恥ずかしいぜ。
「えっ」
受付嬢さんも驚きはじめる。A級最高位に近い900の数字を突破したからだ。
「おい、どこまで上がるんだ? 900超えたら、S級の黒魔導士や賢者と同格じゃねえか」
「やべえよ、あいつ。器用貧乏の代名詞・魔法戦士のくせに、どうしてこんなすごい攻撃魔力を持っているんだ」
「止まるぞ、ランクは何位だよ」
<測定値:990>
「うお~」
その数値を見て歓声が巻き起きた。
「すご~い、アレク先輩、S級の専門家と同格じゃないですか~」
ナターシャも横でテンションが上がっている。
「ランク出るぞ、みんな静かにしろ」
<世界ランキング:2位>
「「「おおおおおおお」」」
この度は素敵なレビューをいただきまして、本当にありがとうございますm(__)m
まさか初日にレビューをいただけるとは思っていませんでした( ̄▽ ̄;)
読みやすさ重視の甘々ファンタジーを目指すので楽しんでもらえると嬉しいです!