第315話 史上最高の決戦
史上最高の決戦。
後にそう呼ばれる決闘は、ついに幕を開く。
俺はカウンター型、会長は攻撃型だ。俺は敵の攻撃に合わせて戦闘を作り出すのがスタイルだ。だから、攻撃の主導権は会長に渡す。
一番最初の攻撃は会長からだった。
雷魔力によって極限までスピードが上がっている会長は、瞬間移動したかのように俺の眼前に移動した。早すぎる。並の冒険者や魔族では、会長の姿を視認することもできない。
なぜなら、会長の攻撃が早く強すぎるので、一撃ですべてを倒してしまうから。
会長の瞬間移動のような攻撃は気がつかないうちに敵を葬り去る。
だが……
俺は対策を考えていた。
会長が動き始めた瞬間、俺は魔力の動きに注目する。
会長のスピードは、魔力の活用によってもたらされている。だから、常に魔力の流れに依存しているんだ。その魔力の流れに注目すれば、会長の攻撃を予測することができる。
そして、いくつか予想したルートの中から、大量の魔力が滞留する場所が――
会長の出現ポイントだ!!
俺はエルを使って、会長のキックを防いだ。
「ほう!」
「よかったですよ。一撃で終わっていたら、観客さんたちが暴動を起こすかもしれませんからね」
「わしの攻撃を受け止めた人間は、何年ぶりかのぉ」
「たぶん、100年ぶりくらいじゃないですか?」
「それは楽しみだ。久しぶりに壊れないおもちゃを見つけたんだからの~」
同じ伝説級冒険者をおもちゃ扱いかよ!!
「セリフがまるで魔王ですよ、会長!」
俺はエルを振るい、会長を後方に下がらせる。
※
―ナターシャside―
「すごい」
会場が騒然となっているわ。眼前のコロシアムで起きている戦いが異次元だったから。
ほとんどの人たちは、会長が瞬間移動したように見えているはずだわ。一瞬で別の場所にいるんだから。
あんな移動方法で攻撃されたら、誰も防御することもできずにやられてしまうはずよ。
アレク先輩以外なら……
観客たちも別次元の戦いに言葉を失っているわ。そもそも何をしているかもわからない世界の戦いだもん。会長が瞬間移動して、先輩がそれに対応していく。
「おい、あのふたりの戦闘は、早すぎて何が起きているかわからねぇぞ」
「そもそも、どうしてアレクさんは、会長の動きについていけてるんだよ。あれが天才か!?」
「ダメだ。俺たちみたいな一般人じゃ同じ次元にすら立てねぇよ。冒険者の人たち誰か解説してくれ!」
無理よ。冒険者でもほとんどの人がこの戦いには対応できていないわ。
たぶん、ボリスさんくらいしかどうなっているかわからないはず。
世界トップクラスのS級でもなければ見ることすら叶わない世界。
「あれが、伝説級の実力なのね……」
私も言葉を失った。




