第231話 ひとつのベッド
違う話を書こうとしたのに、手が勝手に糖分を投下しておりました(笑)
そして、夜が明けた。俺たちは、いつの間にか眠ってしまっていた。
ひとつのベッドで……
※
「やっぱり、この季節は寒いですね」
ナターシャは、深夜にそつぶやいた。
「まだ、起きてたのか?」
「先輩こそ……独り言のつもりでつぶやいたのに、反応しないでくださいよ。ビックリするじゃないですか」
「それは理不尽だろ?」
「反応してくれると思わなかったから、照れ隠しですよ」
「そうか」
「不思議な気持ちです。ずっと使っていたこの部屋に、先輩と一緒に寝ているなんて……」
「俺も緊張してる。なんかナターシャのにおいにずっと包まれているみたいだから……」
「なんですか? ちょっと変態みたいなこと言ってませんか?」
「しょうがないだろ。女の子部屋なんて、初めてだから……」
「小さい頃にエカテリーナさんと遊んでたんじゃないんですか~」
「そんな小さい頃の話じゃねーよ」
「へー、じゃあどういう話なんですか? 詳しく教えてくださいよ、く・わ・し・く」
ナターシャめっ! わかって言ってるな。
エカテリーナの部屋に入ったことはあるけど、そんなのまだ俺が一桁の年齢の時のことだぞ。異性としてエカテリーナを意識してねぇよ。
「なんでもない、失言だ、忘れてくれ」
「そうなんですか。てっきり、異性として意識したのは、私だけだと思っていたんですが……違いましたか?」
やっぱり、わかってるじゃねーか。
「……」
「無言はイエスですね。先輩、わかりやすーい!」
「ナターシャはどうなんだよ? 俺以外に意識した男とかいなかったのかよ?」
「愚問ですね。何度も言ってるでしょ。私は、初恋をこじらせているんですよ。だから、そんな人いません」
言い寄る男はたくさんいただろうにな。
そう思うと、ナターシャは本当に一途なんだよな。
「そりゃどうも」
でも、正直に言ってもらっても恥ずかしいものは恥ずかしいな。嬉し恥ずかしい。
「言ってる私まで恥ずかしくなってきました。先輩のせいですよ!!」
「今日、2回目の理不尽をありがとう」
「恥ずかしくなってきたら、寒くなってきました……」
「ふつう逆じゃない!?」
「細かいことはどうでもいいんですよ! そっちの布団に行ってもいいですか?」
「えっ!?」
「寒くなってきたから、そっちの布団に行きたいんです」
「……」
「嫌、ですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」
そう言って、彼女はゆっくりと俺のベッドに移動する。月の光に映し出された彼女は、ドキリとするくらい美しかった。
「やっぱり、ふたりだと温かいですよね」
「寒いのは、口実だろ?」
「秘密です……いじわる」




