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第167話 後輩と幼馴染

 私は、エカテリーナさんと約束していた場所に向かう。

 特に約束していたわけじゃなかったけど、彼女はやっぱりそこにいてくれた。


「やっぱり、来たのね。ナターシャさん」

「はい、待っていてくれたんですね、エカテリーナさん」

 私たちはそう言って、笑い合った。


「先輩との話し合いは終わりましたか?」

「ええ! でも、まさかあなたがセッティングしてくれるとは思わなかったわ」

「それが、ふたりにとって一番いいと思ったからです。でも、騙すような形になってしまってごめんなさい」

「そう……まぁ、いいわ。あなたが動いてくれなかったら、たぶん私はアレクと話せずに終わっていたと思うから……それについては、本当にありがとう。お礼にお茶でも奢るわ。付き合ってくれないかな?」

「ええ、喜んで!」


 私たちは、カフェに移動した。


 ※


 エカテリーナさんは、ローズマリーティーを注文し、私はフェンネルティーを飲む。


「そうですか。先輩はそんな風に言っていましたか」

 私は少しだけ心が揺さぶられた。やっぱり、先輩はちゃんと感謝の気持ちを伝えたんだ。でも、本当に本心はどうなんだろう? 私はふたりの邪魔なのじゃないのかな? そんな心配になる気持ちを必死におさえていた。


「うん、やっぱりキチンと話せてよかったよ。アレクと正面から話せてよかった。ナターシャさんのおかげね」

「そう言ってもらえると嬉しいです。あの、エカテリーナさん? ひとつだけ聞きたいことがあるんですが、いいですか?」

「うん、いいよ」

 彼女は、私が何を聞きたいのかよくわかっている様子だった。ローズマリーの香りが私を包み込む。


「先輩は、きっとあなたに恋をしていたと思います。たぶん、初恋を……」

「そう言われると照れちゃうね」

「エカテリーナさんは、どうだったんですか? 先輩に、恋、していたんですか?」

「随分とストレートね! そういうところ嫌いじゃない」

「どう、なんですか?」


 彼女は笑いながら、お茶を飲んで天井を見ながら私に語り掛ける。


「好きな人でなければ、命を懸けてまで守ろうとしないでしょう?」

「……」

「そんな悲しい顔をしないでよ」

「ごめんなさい……」


 私は慌ててお茶を飲んだ。


「愛情に値する」

 エカテリーナさんは、私にそう言った。


「えっ?」


「知ってる? フェンネルの花言葉よ。ちなみに、私の飲んでいるローズマリーの花言葉は、『思い出』と『変わらぬ愛』よ」


「やっぱりそうなんですね」


「うん。やっぱり、あきらめきれないわ。でもね、あなたたちの関係を否定しようとも思わないの」

「どういうことですか?」


「あなたが、リヴァイアサンから必死に彼を助けようとしていたところ、病院で寝る間も惜しんでアレクを看病していたところ。あなたの深い愛がよくわかったわ。それに、アレクはずっとあなたを褒めていたのよ?」

「私を?」


「そう。ナターシャは、俺とは違って、人の命を直接救うことができるのがすごいとか…… 俺は、あいつがいなければ、勇者パーティーを追放された時に、たぶん立ち直ることができなかったとか…… あんたどんだけ、ナターシャさんのこと好きなのよって思うくらい()()()()を聞かされたんだからね」


 嬉しすぎて、顔を下げてしまう。恥ずかしいほど顔が熱くなっていた。


「だから、私からもお礼を言わせて。ありがとう、ナターシャさん。私の大好きな人を支えてくれて! お互いのアレクへの気持ちは、一度置いておいて、私たちも友達になりましょう。ちゃんと、あなたとは向き合っていきたいのよ」


 彼女は力強く私を見つめる。


「はい!」

「よかった~! じゃあ、これからもよろしくね、ナターシャさん!」


「でも、先輩は渡しませんよ」

「言ってくれるじゃない! 後輩のくせに」


 私たちは軽口を叩きながら笑い合った。

 そして、言っておかなければいけないことを彼女に伝える。


「エカテリーナさん、ありがとうございます」

「えっ?」

「ありがとうございます。先輩を命懸けで先輩を助けてくれて……本当に本当にありがとうございます!」


「もう、ホントにどんだけお互いのことが好きなのよ?」

 

 彼女はそう言って笑った。

次回からは少しスローライフ的な話になります(^^)/

いつも本当にありがとうございますm(__)m

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