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第160話 ビジネス

()()()()ですか?」

 俺は聞き返すと老人は目を閉じて首肯する。


「そうビジネスだ。キミたちには、この何百年もの間、誰も成し遂げられなかったことをしてほしいと思っている」


 老紳士は目を開けると、まっすぐに俺たちを見つめる。


()()()()()()()()()()()()()


「戦争を終わらせる?」

 そんな考え方はしたことがなかった。この世界では、人間と魔王軍の戦争が常に起きている。この戦争は数百年間、ずっと繰り広げられているものであり、両軍の戦力が消耗すると、戦闘は落ち着き、戦力が回復すると戦争が激化するを繰り返す。


 それが世界の(ことわり)だとみんな諦めていた。この数百年間、人間は誰一人として、魔王本人を見ることすらできていない。魔王軍の最高幹部の厚い壁によって、挑戦者はことごとく葬り去られてきた。だから、戦争を終わらせることなんてできない。敵の大将を誰も倒せないのだから。


 最高幹部も、レジェンド級冒険者が命を()けて互角レベル。おそらく、今回の戦争では俺たちは最高幹部のリヴァイアサンを退却させただけであり、まだその域には達していない。


 そんな俺に、戦争を終わらせほしい?

 

「そうだ、この戦争を終わらせほしい。老人として、キミたちに未来を託すのは本当に情けないことだと分かっている。だが、おそらくキミたちにしかできないことだ」


「魔王を倒すということですか?」


「それができたら理想だろうね。だが、人間は有史以来、魔王軍の最高幹部の域までしか達していない。それよりも上の魔王に勝てる者がでてくるだろうか? なぁ、ナターシャ君?」


「難しいと思います」

 ナターシャは断言した。それができたら、この戦争はすで人類の勝利で終わっているからな。


「だから、次善策を狙う。それが、私の作戦だ」


「次善策?」


()()だよ。魔王軍と和平をしてほしい」


「和平!? そんなことができるんですか?」

「可能性は、ある。魔王軍は、一枚岩ではないからね」


「どういうことですか?」


「魔王軍には少数派ながら、和平派というものが存在しているのだよ。その派閥を率いているのが、魔王の息子"パズズ"」

「魔王に息子がいるんですか!?」


「そう、パズズは、急進派によって危険視されて、世界のどこかに幽閉されていると聞く。彼と接触できれば、この戦争は終わらせられるかもしれない」

「なるほど……」


「だから、キミたちには世界をめぐって情報を集めてほしい。知っているとは思うが、人間だって一枚岩ではない。この計画は、私とミハイル君が主導している。もし情報が漏洩すれば、急進派の妨害があるかもしれない。だから、他言無用で頼む」


「俺たちが、あなたたちの仲間になることを拒否するとは、考えなかったんですか? 俺には個人的な恨みだってあります」

「その可能性は考慮していないよ。キミたちの性格はミハイル君からよく聞いている。キミたちは、この計画を拒否できない、そうだろう?」


 俺はワインを飲んだ。横にいるナターシャも俺を見つめて首を縦に振る。


「共犯者ということですね」

「そう、私たちは共犯者だ。私とミハイル君が、政治的にキミたちを後押しする。キミたちは、キミたちの理性に従って動いてほしい」

 主犯はそう言って笑っていた。


「なら、その前に教えてほしいことがあります、閣下!」

 ここでナターシャが本格的に、議論に参加する意思表示を見せた。


「この戦争の本当の目的とは、一体何ですか?」

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