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59 闘技大会-1 開戦

闘技大会編は全5回予定。かなりさっくりです(重要)

物語の動きがないのでサクサク毎日更新。


次回投稿 2019/10/28 20時





闘技大会本戦の日、アイネール東に広がる平原。見渡す限り新緑の絨毯のようなだだっ広いこの土地に、2日前突如として巨大な建造物が出現した。

両手を広げても届かないような、大きな灰色の煉瓦のようなものを積み上げられて構成されたその建造物は、まるでコロッセオを近代的、未来的に作り替えたような威容を呈している。

一言で言うと、かなりデカい。


聞くところによると、このコロシアムは今回の闘技大会のためにだけ作られた運営からのサービスらしい。ほとんどのプレイヤーを巻き込んだ大規模なイベントとなったことで、コロシアムや試合を見やすくするディスプレイ機能、私達の実況解説の声をメニュー画面からon/offする機能なんかをサービスしてくれたようだ。

イベント終了後にこのコロシアムは消えちゃうらしいけど、結構精緻に出来てる良い建物だ。もったいない。


コロシアム内の実況解説用に設置された席からは、器の内側のように弧を描いて設置された沢山の席を文字通り埋め尽くすような大量のプレイヤーが見渡せる。

ざわざわと空気を揺らし、熱気が伝わってくる。一昨日、昨日と開催されたこの闘技大会の予選が大盛り上がりだったらしく、この本戦にも大きな期待がうかがえる。



「――予選でも既に熱い戦いが見られている今大会の主催者より、挨拶を頂きましょう! ショーイチさん、お願いします!」


「ご紹介いただきました、今大会主催者の一人のショーイチです。本日はこの闘技大会にご参加いただきありがとうございます。開催告知から今日まで1週間と少しというとても短いスパンでしたが、ここまで大規模で、ここまで盛り上がるとは思ってもみませんでした。参加してくださったプレイヤーを始め、今日ここに観戦に来てくださった皆様に感謝申し上げます。また――」



進行役のギルドのお姉さんに呼ばれたショーイチが、主催者の挨拶を真面目に述べている。大会の進行は運営...もといギルドが行ってくれるので、私たちは基本的に戦闘中の実況解説だけだ。



「――実況解説として試合中に[鏡の魔女]マリカードと共に喋りますので、よろしければそちらもお楽しみ頂ければ幸いです。以上をもちまして、主催者の挨拶とさせていただきます」


「大会主催者のショーイチさんありがとうございました!ではこれより、「第一回闘技大会本戦」を開催いたしまーす!」



挨拶を終えたショーイチと入れ替わるように出てきたギルドの受付お姉さんが、高らかに闘技大会の開催を宣言した。観客席がドーンと盛り上がる。



「それじゃ、熱く激しい予選を勝ち抜いてきた16人の猛者たちを紹介していただきましょう!上方にあるディスプレイにご注目!実況解説のお二人ーっ!」



すでに予選は終了し、そのディスプレイには本戦に出場する16人のプレイヤーの名前が大きく書かれている。

ここからは、私とショーイチで本戦出場プレイヤー紹介のターンだ。



「先ほども挨拶させていただきました、こちら実況席のショーイチと」


「[鏡の魔女]、雑貨屋ミラーウィッチ店主の解説役、マリカードです」


「では早速、本戦に出場する16名のプレイヤーを紹介いたしましょう!

まず最初は[軽業師]クロエ! ゲーム内最速と呼ばれる程の敏捷を持つ猫獣人。その素早さを活かしたヒットアンドアウェイや死角を突いた一撃を得意としています」


「私的にはその可愛らしい容貌と、そこから繰り出される容赦ない一撃に注目してほしいですね」



中央のディスプレイにどーんと大きくクロエの映像が流れる。これは予選の時の戦いかな?

鎧を着た大盾のプレイヤーを素早く撹乱し、見失った鎧のプレイヤーの首筋に後ろから短剣で斬りつけている。そのままの勢いで複数のプレイヤーを翻弄してキル、その姿はまるで熟練の暗殺者だ。

その小柄で可愛らしい姿と猫のように柔軟な身体から繰り出される三日月の刃に、観客大盛り上がり。他を寄せ付けない素早さとか、圧倒的な破壊力、大迫力な魔法は見るだけで楽しいからね。



「次はこの人、[双剣士]イザム! 今では解放した人も増えてきた<双剣術>を初めて入手したトッププレイヤーの一人。圧倒的な手数による他を寄せ付けないインファイトは必見です!」


「やんちゃな言動や負けず嫌いな行動が、世のマダムプレイヤーたちの心をつかんで離さないとかなんとか...この闘技大会でも、その負けず嫌いなハングリーさで勝利をつかんでほしいところです」



クロエの時と同じように、イザムの戦いが映し出される。二本の長剣を自由自在に動かし、相手に選ばれた槍を持つプレイヤーに猛攻を仕掛けている。心の底から戦いを楽しむように笑いながら敵を圧倒するその姿に、畏怖する人と奮い立つ人がいたようだ。黄色い歓声もちょっと混じっていた。













その後も、残った14人の出場選手の軽い説明が私とショーイチによって行われた。



[拳士]ロー。道場で手に入れた<拳術>をメインに戦う、マスクを付けた低血圧な狼獣人のおじさん。


[長剣士]カトリ丸。初期装備に身を包んだ流麗の剣技を扱う、ソロでイベント1位になった強者の青年。


[炎熱の見習い魔女]エシリア。その幼く可愛らしい見た目から想像できないような炎熱の大魔法を操る通称"爆熱幼女"。


[見習い水魔剣士]騎士長。魔法はご法度だった[錆銀(せいぎん)騎士団]のリーダー。魔法剣のカッコよさに、"魔法はダメ"なんてこだわりはすぐ捨てたらしい。


[商人]難波。今大会唯一の非戦闘職を持つ戦うエセ関西弁。ギルド主導で行われている「優勝者予想ギャンブル」では堂々のオッズ最高値。



他にも魔物討伐戦PTランキング8位だったMFC(魔女っ子ファンクラブ)の会長、[土精術師]マリオネ。同じく魔物討伐戦PTランキング4位、まるで勇者のような出で立ちの好青年の[見習い光魔槍士]ルイ(エース)。今までに見たことのない[刀士]や、[双槍師]などなど。



「以上、千を超えるプレイヤーの集まった予選を勝ち抜いた猛者たちの紹介でした。一体だれが勝ち抜き、初代闘技大会優勝者の称号を手にするのか...とても楽しみですね」


「たくさんの皆様に参加いただけた結果、優勝賞品もかなり豪華になりました。僕も欲しいくらいです」



優勝賞品に軽く触れると、ディスプレイの表示が"優勝賞品一覧"にササっと切り替わった。

賞品は予選前に既に明かされていたらしいんだけど、いつのまにか思ってたより豪華になってた。


・運営から記念として称号【第一回闘技大会優勝者】

・開催規模に応じた豪華な記念トロフィーと、ゲーム内で使える各種アイテム

・私の提供した「【鏡】のコピースクロール」+SP100、エンチャントされた装備の「優勝者の外套」

・ネクサスのサービスたっぷりサイン色紙


決まっていた賞品は元々これくらいだったんだけど、アイネールのプレイヤー区画にお店を開いた人や、コロシアム付近に出店を建てて稼いでいる人達から「俺からも優勝賞品を出したい!」「ぜひ使ってくれ!」と色んなものを頂いた。

鍛冶屋を開いたプレイヤーから「オーダーメイド武器作成1回無料券」や、食堂を開いたプレイヤーからの「お食事10回無料チケット」などなど、全部まとめて優勝賞品にしました。


結果、副賞がすごい豪華になった。


ちなみに本戦出場者というだけでも色々貰える。運営からSPとか、一回限りのデスペナルティ回避アイテムとか...結構羨ましい。



「私が提供したものもいくつかありますので、是非勝ち取っていただきたいですね」


「選手紹介ありがとうございました! この二人の実況解説はゲームシステムのメニュー画面の音声から副音声をONにすることで聞くことが出来ますので、是非聞いてみてください!

本戦参加者の方がゲストにくるかもしれないらしいですよっ!」



実況解説の私たちの声は、ゲームシステムで副音声として聞くことが出来るようになっている。イメージとしては、戦いを見ながらイヤホン付けて実況だけをラジオで聞く感じ。

私たちの実況解説の内容で、戦っている最中のプレイヤーに手の内がバレたりするかもしれないからね。ちょっとした配慮だ。



「また、今大会本戦は16名の予選を勝ち抜いたプレイヤーによるトーナメント方式です。予選でも用いたゲームシステムの一つ「決闘モード」を使用し、相手のHPを削り切った方が勝者となります。

細かなルールにつきましては、メニュー画面より「第1回闘技大会:本戦ルール」を各自閲覧いただければ幸いです」



私とショーイチの選手紹介に続いて、進行役のギルドのお姉さんが闘技大会のゲームシステムについて説明してくれた。詳細なルールはいつでも個人で確認できるようだ。


ちなみに...


・勝利条件は「相手のHP全損」のみ。戦闘中はコロシアム内に張られた結界のようなエリアから出ることが出来ないので、場外敗北はない。

・スキル、アイテム等は一部例外を除いて何を使ってもOK。スキルはもちろん、アイテムを集めることもアイテムを効果的に使用する事もプレイヤースキルの内。

※ただし、試合が長時間になってしまうため回復系アイテムは不可。回復系スキルはOK。

・煽り行為や人道に反したプレイもOK。15万人に近い観客にどう思われるかは知らないけど。


簡単にまとめると大体こんな感じ。

かなり自由な"なんでもあり"の戦いだ。アイテムやスキルによる奇抜な戦法とか、対人ならではのブラフ、フェイントなどの妙技が見られたらいいなぁ。



「...説明も一通り終わりましたね! さぁさぁ皆様お待ちかね。早速第一試合に参りましょう!」



進行役のお姉さんが確認すると、上方の大きなディスプレイに第一試合の組み合わせが大きく表示された。初戦は...彼の出番か。




「第一試合、[拳士]ロー vs [重戦士]ライナス!」




お姉さんの掛け声とともに、会場を大歓声が包む。そんな歓声を背に受けながら、中央の闘技上に続く花道を悠々と歩きながら進む2人のプレイヤー。


大観衆をざっと見て、私たちのいる実況解説席を見て、最後に本戦参加プレイヤーが座る一角を見て、自信ありげににやりと笑う狼の獣人のロー。いつもはやる気のないだらけた雰囲気の彼も、今日この場では幾分かやる気がみなぎっているようだ。


それに対するサイの獣人、大盾と大剣に分厚い金属の鎧を着た[重戦士]のライナス。周囲の観客に一切の興味を持っていないかのように、傲岸不遜に歩くたびにずしんずしんと地面を揺らす巨漢。重い鎧、大盾、大剣。その下に隠れたサイの獣人としての超防御力と超威力をこれでもかと兼ね備えた重戦車のような容貌に、震えるように湧きたつ観客。


互いに一切の言葉をかけあうでもなく、コロシアム中央のフィールドで向き合って構える二人。



「[拳士]ロー vs [重戦士]ライナス...試合開始っ!」



これからどうなってしまうのか。私たちの闘技大会は、こうして始まった。












※決闘モード...


他プレイヤーと対人戦を行うモード。戦闘開始前にHPが全回復し、相手のHPを削り切るか、リタイアするまで続く。

HPが全損した場合はその場で即時リスポーンし、デスペナルティはつかない。使用したアイテム等は対戦前の状態に復元されるが、得られたスキル経験値やプレイヤー経験値は獲得できる。しかし得られる経験値の量は魔物との戦闘に比べて約5分の1程度に減少するので、大半のプレイヤーにとっては普通に魔物と戦った方が効率がいい。


また、決闘モードは決められたセーフティエリア内でしか使用できないので、例えば「魔物との戦闘中に決闘モードを起動して全回復&死んでもペナルティを回避して即時リスポーンする」みたいな抜け穴は使えない。


「武術系スキルであれば、スキル名を言葉に出さなくても発動できるようにする」などのオプションがあるけれど、今大会はあくまでも"他プレイヤーにスキルを実際に使って見せる"という目的があるので使っていない。





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