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56 二人はアイドル

いつもより長め。申し訳ないです...


次回更新 2019/10/21 20時









雑貨屋ミラーウィッチは、今日もまた平和な日常を送っていた。

昨日は友人と出かけたからログインできなかったけど、エル姉曰く特に問題はなかったようだ。



「数人くらい闘技大会について聞きに来たんだけど、お手伝いしてくれてたショーイチ君が全部対処してくれたわ」


「うん。間違いなくここに話を聞きに来るプレイヤーがいると思ってね。あらかじめ待機してたんだ」



という事らしい。本当に、ショーイチの配慮には痛み入るね。闘技大会関連はエル姉でも返答できないし、そんなプレイヤーがたくさん来てしまうと店の営業に支障をきたしてしまう。

私がいれば問題なかったんだけど、ログインしてなかったからね。



「早速闘技大会についての情報共有をしておきたいんだけど...今大丈夫?」


「いいよ。じゃ、2階行こ」



いつものように1階をエル姉とミーナちゃんに任せて、私たちは2階へ。ショーイチはとりあえず座らせる。

私はそのまま食器棚からポットとカップを取り出して、慣れた手つきでお茶を淹れる。エル姉が住むという理由で2階のインフラ整備にかなりお金をかけたんだけど、これがなかなか良い。水も火も電気も全部"魔道具"を設置することで使えるようになってるんだけど、現実と違っていちいちお湯を沸かさなくても、丁度いい温度のお湯を取り出せるからめっちゃ便利。


棚に余っていた「元祖デリシャス食堂」の薬草ハーブティーのバッグをいれ、テーブルの真ん中に置く。

席についたら、待ってましたと言わんばかりにショーイチが話し始めた。



「とりあえず以前の計画から。当初の予定では『今日の夜、日付が変わるまでが闘技大会の参加受付可能時間。明日を予選として、明後日は予備日。闘技大会本番は3日後』っていう感じで計画してたよね」


「そうだね」


「そして各種申請をギルドに送ったあの日、すぐに掲示板にスレッドを建てて宣伝したんだけど...当初の予定よりもかなり多くのプレイヤーがギルドで参加を表明したみたいでね。僕はともかく、魔女が主催したゲーム内初の闘技大会...予想以上の大反響だったよ」


「よく考えてみれば、初めて対人戦をメインにしたイベントだもんね...」


「うん。それで参加人数が予想以上に多そうだったから、予選を2回に分ける事にしたんだ。1日じゃキャパオーバーしかねないから...こっちで勝手に決めちゃったけど良かったかな?」


「なるほどね、予選を2回...予備日を使うって事だよね? なら問題ないと思うけど」


「そういう事。元々予選に関しては運営...っていうかギルドがやってくれるらしいから僕らはノータッチなんだけど、一応僕は見に行くつもり。本戦は予定通り16人選出のトーナメントで落ち着いてるね」


「分かった。現状はこんな感じ?」


「概ね。あと...運営から連絡があってね。『イベント規模が思いの外大きくなっているから、闘技大会の予選と本戦の開催場所はこちらで用意する』ってさ。東の平原に今回限りのコロシアムを建てるとか」


「思ってたより大規模になったね...」


「ほんとにね。とりあえず情報共有はこれで終わり。また何かあったら連絡するね」


「りょーかい」



ショーイチは何かやる事があるらしく、お茶を飲み干して急いで出かけて行った。小声で「ネクサス...」って聞こえた気がしたけど、何をするにも彼の自由だろう。温かく見守ろう。












1階に戻り、レジで働くエル姉とミーナちゃんの間に営業スマイルで座る。いつも特にレジの仕事とかしないんだけど、カウンターに座って賑やかな店内の様子を見るのが割と好きだ。


昨日の話だと、(みどり)(あかり)が今日訪ねてくるとかなんとか。「じゃじゃーん、実は私が[鏡の魔女]でした!」をやるために敢えて正体を明かさなかったわけだし、なにかいたずらを仕掛けたい。何かいいものはないかな...?


と思って、「鼻眼鏡」を用意した。くくく、さぞかし驚くことだろう。

おもむろに鼻眼鏡を装着。まるで常に掛け続けていたかのような密着具合だ...ミーナちゃんの[細工]もレベルが上がってるね。



「マリさん...?」



隣で働くミーナちゃんが唖然としている。私の事を普段から見慣れているミーナちゃんですらこの驚き様だ。これは期待が持てるなぁ。


あいつらの驚いた顔を想像してにやにやしながら暫く待っていると、にわかに店の前がざわつき始めた。ん...なんでざわついてるの?



「えっ...マジ?」


「うわ、俺初めて見た!」


「すげぇ!本物だ!可愛いーっ!」



普段店の前じゃ聞きなれないような言葉と喧騒。まるで芸能人を目の前にした一般人のような落ち着きのなさに、店内にいたお客さん達も何事だろうと店のドアの外に興味を示す。

そんな注目を浴びたドアがカランコロンとベルを鳴らしながら開かれ、二人の女性が入ってくる。

店内が水を打ったように静まり返る。


黒髪赤目。アシメなウルフカットに真っ直ぐに捻じれた二本の角を持った釣り目の魔人の女の子。

白髪青目。セミロングの緩いウェーブヘアに背中から真っ白な翼が生えたたれ目の獣人の女の子。


ただ、うーん...なんか見たことあるっていうか...?

君ら、昨日会ったよね?



「ついに出会っちまったぞ...」


「マギラトラのアイドルと、現役VRアイドル...歴史的瞬間じゃねーか...!」



偶然居合わせたプレイヤーたちが、何かを期待したように打ち震えている。あぁ、理解してしまった。これは...私と彼女らに期待してますね。

隣で仕事をしていたミーナちゃんが、囁くように呟いた。



「ね、ネクサス...本物...?」



確信。

そんなネクサスの二人としばし見つめ合う。見れば見るほど見慣れているなぁ...アイドルなのに。

きっとこの時、私たちは通じ合っていたのだろう。あぁ、周りの人たち期待してるなぁ...と。でもこれ、落としどころなくない...?と。

なんとか期待のハードルを越えたい!こっちはアイドルなんだぞ、何とかしてくれ!...そんな助けを乞うような目で見つめられている...気がする。


私はゆっくりと立ち上がり、二人ににっこりとアイコンタクト。ネクサスの二人はゆっくりと小さく頷くと、私の後についてくるように二階へ上がった。ここで言及するのは恐らく非常に不味い。戦略的撤退だ!



私達のいなくなった一階から歓声の混じった喧騒が響いてきたけど、一旦聞かなかったことにした。
















緩やかな日差しが降り注ぐミラーウィッチ二階のリビング。部屋の中央の美しい木製の机を囲んで座る、悩ましい顔をした3人の女の子がいた。



「まっさか、鞠華本人だったとはな...まんまとしてやられたぜ」


「ほんと、あの時言ってくれたらよかったのに...」



何故か二人から口々に不満を言われる私。えっ、なんか私が悪いみたいになってる?

いやいやまさか、一旦落ち着こう。まずはお茶でも飲んで冷静になろう...


カップに口をつけ、ゆっくりとお茶を飲む。香ばしい抹茶のような薬草の風味が鼻に抜け、喉からお腹にかけてゆっくりと温まっていく。吐いた息にお茶の温もりが混ざっている。

...よし、落ち着いた。やっぱりお茶は偉大だね。


平静を取り戻した私は、おもむろに鼻眼鏡を外して机に置く。それにしても...



「ふぅ...噂のネクサスが、普通に私の友人だったとはね...」


「こっちのセリフだわ!つーかなんだよその鼻眼鏡ッ!大方アタシらを驚かそうって魂胆だったんだろうが、もっと他に色々あっただろ!!なんでそれチョイスしたんだよ!!」


「まあまあ朱里(シュリ)ちゃん、一旦お茶でも飲んで落ち着きなさいな。

...にしても、中々の派手髪よねぇ...虹に光る白メッシュなんて、鞠華ちゃ...んんっ、マリちゃんにしては思い切ったわね」


「いや、これは不可抗力で...」



昨日遊びに行った二人の友人のうちの一人、黒髪赤目の魔人の(あかり)...もとい朱里(シュリ)は、机に置いた鼻眼鏡を指さしながらあーだこーだ言いながらお茶を飲んでいる。落ち着け。

よっぽど鼻眼鏡がお気に召さなかったらしい...面白いと思ったんだけどなぁ。



「まぁ、(わたくし)はマリちゃんの新たな一面が見られて嬉しいですけどね」



白髪青目、白い翼の獣人の(みどり)...もとい碧依(アオイ)が、机に置いてあった私の鼻眼鏡をかけながらキメ顔で語る。つけてみたかったんだね。

前からお上品な子だと思ってたけど、なんというかゲーム内だとその所作がさらに洗練されている気がする。鼻眼鏡の掛け方もお上品だし、一人称も"わたくし"だし、ティーカップもカチャカチャさせないし。



「実は私が[鏡の魔女]でした!って驚かせようと思ってたんだけど...びっくりさせられたのは私の方だったね...」


「いや...アタシらも十分驚いたぞ。どっちかってーと鼻眼鏡とその派手な白メッシュの方が驚きだったけどな」


「にしても、マリちゃんったら既にマギラトラやってたのね。私達がマリちゃんを引っ張っていこうと思ってたのだけど...その様子だと第一陣でしょ?」


「その通り、第一陣」


「やっぱり...マリちゃんを引っ張っていけるいい機会だと思ってたのだけど、引っ張るのはマリちゃんの方になりそうね...」


「しかも、[鏡の魔女]なんてトッププレイヤーの一角だろ? しかも固有スキルとかよぉ...

っかー!いろいろ言いてぇけど、過ぎたことをうじうじいうのも辛気くせぇ!折角だから色々教えろ!」


「別にいいけど、なんか...朱里(シュリ)、現実より言葉遣い荒いんだね。そういうキャラ?」


「うぐっ...」


「ダメよマリちゃん、ダメ。それ以上は朱里(シュリ)ちゃんが危ないわ」


「ぐっ...いい切れ味じゃねーかよ...ッ」



それ以上はいけないらしい。朱里(シュリ)もなぜか言葉だけでダメージ受けてるし...

それにしても「色々教えろ」かぁ...昨日は「そろそろ転職だし...」なんて言ってたから、恐らく彼女らは転職してからここに来たはず。ならアイネール付近の奥地エリアをツアーガイドっぽく一周するくらいが丁度いいかな?

なんならアイネールの街並みを観光してもいいんだけど...実は私もよく知らないし、有名なお店とかもよく分かってない。次の機会までに誰か誘って勉強しておこうかな。

















「まずはココ、東の平原奥地。転職したプレイヤーがまず自分の力量を試すのに一番丁度いいエリアだね。ちなみに推奨Lvは15」


「よっと!つっても相手はゴブリンだからなぁ、ちーと物足りないっつーか...<剣撃(スラッシュ)>!」


「推奨Lvよりちょっと上のエリアが難易度的に丁度良いのよね、このゲーム」


「分かる。私の時もすぐ別のエリアに行ったよ。<杖撃(スイング)>」



アイネール付近の奥地エリアを紹介程度に一周しようと提案したら、二人ともめっちゃ乗り気だった。やっぱり観光よりレベル上げ...生粋のゲーマーだね。


そんなこんなで、まずは東の平原奥地。「ゴブリン:平原奥地」が主に出現する魔物で、推奨Lvは15。転職後に力量を確かめるのに丁度いいけれど、すぐに物足りなくなって別のエリアに行くのが通例だ。ドロップアイテムも美味しくないし、それならちょっと無理してでも南の森の奥地の方が実入りがいいからね。



「にしても、本当に貰ってよかったのか?」


「スキルスクロール...ゲーム始まってすぐに何とかやりくりして1枚だけ買えたけど...2枚目は手が出せなかったのよね」



アイネール周辺ツアーを始めようとお茶を飲み終えた3人で店を出る矢先、碧依(アオイ)の目線がスキルスクロールを見てたから、1枚ずつプレゼント...いや、物々交換することにした。


このゲーム、覚えられるスキルの数にややこしい規則がある。特に魔法系スキルでいえば、"自分で覚えられる基本の魔法系スキルの種類は、職業のランクが上がるごとに一つずつ増える"らしい。私は[鏡の精霊]ミラからチュートリアルを受けたから聞いてなかったんだけど、ギルドの受付員からチュートリアルを受けた他の皆は「常識だろ」と言わんばかりの顔だった。


簡単に言うと「初期職(見習い~)だと一種類しか覚えられないけれど、一次職に転職したら2つまで覚えられる」という事。

ネクサスの二人は「転職した後にそのままここに来た」って言ってたから、1枠分魔法系スキルを覚える枠が間違いなくありそうだと思ってね。「折角だから1枚持っていきなよ」とささやいてみた。



「ッ...いってぇなテメェ!<闇球(ダークボール)>!」


「<小癒(ライトヒール)>! にしても、本当に貰ってよかったのかしら...?」



嬉々として二人が選んだのは、碧依(アオイ)が<治癒魔道>、朱里(シュリ)は<闇魔道>。ふたりとも前から狙っていた属性らしい。



「スキルスクロール分の元はもう取れてるからね。へへ、気にしないでよ」


「なんか...マリ、暗い笑い方してなかったか?」


「気のせいよ、朱里(シュリ)ちゃん。気のせい」


碧依(アオイ)? そ、そっか...」



ちなみに対価はサービスたっぷりなネクサスのサイン。店用とショーイチ用、闘技大会の優勝賞品用にばっちり3枚書いてもらった。

これでショーイチにも恩が売れるし、今をときめく現役アイドル御用達のお店だと宣伝もできる。元が取れると分かっている投資ほど、美味しいものはないからねぇ...!

















「次はココ、南の森奥地。東のゴブリンに比べると、ここのメイン魔物のデブウサ(ファットラビット)の素材は人気で売値も安定して高め。だから転職後のプレイヤーは東の平原奥地を早々に切り上げてこっちに来がちだね。推奨Lvは20」


「おいおい、四つん這いの状態でアタシらの腰ぐらいまで高さあるとか...よっと。本当にウサギで合ってんのか?」


「角ウサギちゃんはあんなに小さくて可愛かったのに!どうしてこうなるまで放っておいたのよ!」


碧依(アオイ)...?」



森の暗がりからいきなり突進してきたファットラビットを、軽口をたたきながらも平然と武器でいなす朱里(シュリ)。色んなゲームで目撃されているネクサスらしく、流石にゲーム慣れした危なげない体の動かし方だ。


その後ろから、なぜか太ったウサギに怒り心頭な碧依(アオイ)が追撃を行う。流れも言ってることもハチャメチャだけど、たった一回見ただけで熟年の連携が見て取れた。



「<構断(セイヴァースタンス)>...っと、碧依(アオイ)


「えぇ、<突撃(スピアー)>!」



少し離れて戦いを見物。なんというか、必要最低限の言葉のやり取りだけで完璧な連携を取っている。

碧依(アオイ)は槍、朱里(シュリ)は大剣。朱里が前に出て大剣を振り回して戦い、碧依が少し後ろから朱里の攻撃後の隙を上手く消すように立ち回っている。



-----------------------------------------------------------


<碧依(アオイ)> ハーフビースト(鳥) ♀ Lv16

職業:槍師

▼装備

 <HN>兎の角の長槍

 <HN>犬猪の軽鎧

 <HN>白インナー

 <R> 銀のイヤーカフ

 <HN>犬猪の革のブーツ


▽有効スキル

 ▽武術系スキル

  <槍術> 長槍術 Lv2

 ▽魔法系スキル

  光魔道 Lv12 治癒魔道 Lv1

 ▽生産系スキル

  解体 Lv7 換羽(かんう) Lv2

 ▽便利系スキル

  察知 Lv8 獣の勘 Lv7 羽搏(はばたき) Lv5 滑空 Lv2

 ▽パッシブスキル

  <物攻微上昇> <敏捷微上昇> <魔攻微上昇> <器用微上昇> 魔防微上昇 Lv12

  物防微上昇 Lv10 物攻上昇 Lv2 敏捷上昇 Lv2 魔攻上昇 Lv1 器用上昇 Lv1


▽称号

 【Dランク冒険者】


-----------------------------------------------------------




鳥系獣人だからか、スキルの<夜目>が取れなかったらしい。<光魔道>はゲーム開始すぐになんとか所持金をやりくりして、<治癒魔道>と悩みに悩んだ末に買ったとか。




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<朱里> デミデモン ♀ Lv16

職業:大剣士

▼装備

 <HR>鉄の大剣

 <N> 着古したシャツ

 <HN>すり切れたズボン

 <N> 履き慣れたブーツ


▽有効スキル

 ▽武術系スキル

  <剣術> 大剣術 Lv3

 ▽魔法系スキル

  火魔道 Lv7 闇魔道 Lv2

 ▽便利系スキル

  夜目 Lv7 威嚇 Lv9 察知 Lv14 剛腕 Lv2

 ▽パッシブスキル

  <物攻微上昇> <敏捷微上昇> <物防微上昇> 魔防微上昇 Lv14 器用微上昇 Lv14

  魔攻微上昇 Lv12 物攻上昇 Lv2 敏捷上昇 Lv2 物防上昇 Lv1


▽称号

 【Dランク冒険者】


-----------------------------------------------------------




なるべく早くに高い大剣を買い、今よりいい大剣が目に入ったら迷わず購入とガンガン買い替えているために、防具を買うお金がなく完全に初期装備のままだ。

<大剣術>は「大剣」に分類される武器を使い続けることで開放できる1次スキル。カテゴリとしては<双剣術>と同じ取り方だと掲示板に書き込まれていたらしく、そんな情報アドを存分に使って<大剣術>を解放したらしい。



碧依が<治癒魔道>を覚えたことで継戦能力が上がって、朱里は<剛腕>や<闇魔道>を活かした立ち回りで攻撃性が増している。

大剣の幅の広さを上手く使って盾のようにも扱っているし、朱里にばかり気を取られていると、碧依が背中に生えた白い翼を利用して高く飛び、上空から攻撃してきたりする。手助けする隙間がないくらい連携が上手く、高いレベルで完成されている。


...ショーイチが太鼓判を押すだけあるね。













南の森奥地でのデブウサ(ファットラビット)狩りが思っていたよりも楽しくなっちゃって、結局アイネールの西と北の奥地には行かずに帰ってきた。

ゲーム内ではもう夕暮れだ。現実だと...大体21時くらいだろうか。友達と沢山遊んで、日が暮れるころに家に帰る...なんだかとても懐かしい気分でミラーウィッチに続く大通りを歩いていると、不意に朱里が話しかけてきた。



「そういやマリ、闘技大会やるんだって?」


「ん?うん、3日後の予定だね」


「おー、楽しみだなぁ!絶対盛り上がる奴じゃん!」


「掲示板でも既にかなり盛り上がってたよね。流石は私たちのマリちゃん」


「言い出しっぺは私じゃないんだけどね。でも、やるからには盛り上げたいかな」



闘技大会の運営とか準備には全然かかわってないけど、私とショーイチが主催する初めての大規模イベントだ。私がやったことと言えば、名前を貸して賞品を提供したくらいだけど...絶対に成功させたい。

そういえばこの二人って噂のアイドルだったっけ...



「闘技大会前に、余興とかやる?歌う?」


「流石にそれは...ね?朱里ちゃん?」


「そうだなぁ...ちっと厳しいかもなぁ」


「そっか、残念。盛り上がると思ったんだけど」


「うん...流石に衣装がないのは...」


「あ、理由ってそれ? それなら...うーん...」



明日頑張って二着拵えるのは...なんなく出来る。むしろ余裕の部類だ。でも、今店に保管してある素材だと...ちょっと厳しいかな。一般販売用の安めの布ばっかりだし、高級品とか見栄え重視の奇麗な布は少ない。

周囲の街を回って高級な布を買い集めるのは今からじゃ遅いし、ありあわせの布で衣装を作るなんてありえない。こいつらに歌わせるのは、また今度だね。



「じゃ、次はアイドル衣装を作るための素材集めでもしようよ。レアドロップで高級な布を落とす魔物がいるって聞いたことあるし、その辺の情報集めとくから」


「お!それめっちゃいいな!アタシも装備どうにかしたいと思ってたところでよぉ!」


「朱里ちゃん...マリちゃんと衣装つくるまで、その装備で戦う気...?」


「おん?何言ってんだ? もちろんそのつもりだぞ」


「...マリちゃん、ちょっと店の服見せてもらっていいかしら?」



急遽朱里の服を買うことに。碧依も相方がずっと初期装備で戦っている状況にもやもやしていたみたいだ。

そこまで高くなく、まあまあ動きやすく、そこそこデザインも可愛らしい装備一式購入。



「今日は楽しかったぜ! また来るわ!」


「またね、マリちゃん」



来た時もそうだったけど、帰る時も嵐のようにサッと帰っていった。でも、なんだかすごい楽しかった。

闘技大会は3日後だ。私も出来るだけの準備をしておかないとなぁ...














◇◆◇ 新登場スキル ◇◆◇



▼武術系スキル

 ▽槍術

  <突撃(スピアー)> Lv5

  槍による高威力の刺突攻撃


 ▽大剣術

  <構断(セイヴァースタンス)> Lv1

  【構】大剣ですべてを断ち切る構え 【斬撃】威力大上昇、それ以外のスキル威力中低下。

  

▼魔法系スキル

 ▽治癒魔道

<小癒(ライトヒール)> Lv1

  対象のHPを小回復


▼生産系スキル

 ▽<換羽(かんう)>

  翼の羽を新しく生え変わらせる。抜け落ちた羽は素材になる。

  一部のネクサスファンの間でプレミア価格。


▼便利系スキル

 ▽<羽搏(はばたき)>

  翼を大きく羽ばたかせることで、少し高くジャンプできる。飛べはしない。


 ▽<滑空>

  翼を大きく広げることで、ゆっくりと落下する。移動もできる。飛べはしない。













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