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48 初めての北の街



次回更新 2019/09/24 20時









ボスの残りHPは3割。特殊行動警戒で一撃で仕留めるとしたら...あのツタも利用できる彼女が適任かな?

きっとあれから成長しているはずだ。



「<友鏡喚(ミラーコール)> /エシリア」



燃え滾る炎と魔女の帽子の紋章。現れたのは、赤い髪の小柄な少女。爆発的な威力を誇る<炎熱魔術>を振りかざし、その一撃の大火力に巻き込まれたプレイヤーは数知れない活発な女の子...通称"爆熱幼女"。

真っ赤な魔女帽とローブを身に纏った威厳あるその佇まいには、もはや「大魔女」と呼ばれてもおかしくない威厳に満ち溢れている。

前に会った時は魔女になれないって相談されたけど、無事に魔女になることが出来たのかな?



「にゃ? 落ち着いた雰囲気にゃね...?」


「魔物討伐戦の時みてぇな破天荒さが嘘みたいに落ち着いてんな...成長したか?」


「召喚したコピーはAI操作の無表情だから落ち着いて見えるんじゃない?」


「あぁ、納得」



本物より落ち着いた雰囲気を醸し出すエシリアの幻影が緑の宝石が先端についた杖を構えると、バチリと雷のようなエフェクトを体全体に纏った。私がついぞ教えてもらえなかった<魔女魔術>のうちの一つ、魔物討伐戦の時に使っていた「次に使う魔法の消費MPと威力を2倍にする」という効果を持つ<充魔(マギチャージ)>だ。



「なんつーか、魔術師らしい魔術師だよな...」


「確かに、マリって魔術師感ないよね」


「まぁ、否定はできないかな...」



次に使ったのは彼女の代名詞ともいえる<炎熱魔術>。杖の先に大きな赤い魔法陣が展開されると、前見た時とは比べ物にならない力強い真っ赤な炎が溢れるように放射される。



「おー、まさに大技にゃ」


「この炎に...一体どれだけの人が巻き込まれたのだろうか...」


「ショーイチ、お前この魔法見て最初に出る感想がそれかよ」



そこそこ距離のある私達ですら煽るような熱を感じるその炎が、津波のように鉄鱗の大トカゲ(アイアンリザード)に襲い掛かる。

巻きついて行動を封じていたツタごと焼き尽くす業火は、その鉄でできた鱗を瞬時に赤く光らせるほどの熱量で鉄鱗の大トカゲ(アイアンリザード)を飲み込んだ。毎秒ごとに削れていくHP...あれ? これ、ひょっとして...



「もしかして火弱点?」


「無きにしも非ず、だね」


「いくら鉄の鱗でも、中身はただのトカゲだしな...そんなこと言ったら全生物が火弱点になっちまうが」


「まるで蒸し焼きにゃ」



莫大な熱量を生み出した魔法が終わると、そこにはHPが底をついた鉄鱗の大トカゲ(アイアンリザード)の亡骸。名前にもなった自慢の鉄の鱗は無惨に溶けて固まり、まるでトカゲの丸焼きのチョコレートソース掛けみたいになっていた。


『PT{猫魔女の集会}によりアイネール北エリアボス「鉄鱗の大トカゲ(アイアンリザード)」が討伐されました。以降弱体化されます。』


ワールドアナウンスのログが流れる。どうやら倒せたようだ。



「倒したなぁ...」


「うん、案外いけるもんだね」


「割と余裕だったにゃ」


「私、ほとんど自分で何もしなかったな...」



フレンドの召喚してたら、いつの間にか終わっちゃってたね。回復系の魔法以外ほとんど使ってないし...

とりあえず、今回使わせてもらったカナデさんとエシリアさんには早いうちに会いに行こう。ゲーム内で出会わないと使用回数がリチャージされないからね。



「おい、これ結構いいもんなんじゃねーの?」


「流石はボスのドロップアイテムだね。東のゴブリンと南のウサギのドロップがしょぼかったから期待してなかったけど...初回だからかな?」


「傷んだ武器も打ち直せるにゃ!」



ドロップアイテムを漁っていたらしい3人が喜んでいる。そういえば鉄って今のところ貴重品なんだっけ?

アイテム名は「鉄鱗の大トカゲ(アイアンリザード)の黒鉄」。ドロドロに溶けて固まったボスの亡骸が光になって消えた場所に、数十個のインゴットとして残っていた。


グレンの大盾はブレスを受けた結果ぼっこぼこになっているし、クロエの短剣も<獣化(ビーストライズ)>中に使い捨て続けていたから、何本もダメになっている。大半はそっちの補填に充てる感じかな。

私の取り分としてインゴット数個貰ったけど、私には使えないからね...[細工師]のミーナちゃんへのおみやげにしよう。



「そういえば、この先って鉱山都市なんだっけ?」


「難波はそう言ってたね」


「鉱山都市っつーくらいだし、レベル高い鍛冶屋とか期待できるかもな...(セル)あったっけなぁ」



ボスを倒し、ドロップアイテムの質のいい鉄を手に入れた結果、みんな現在の所持金を気にしだした。このゲーム、NPCのオーダーメイドって何故かやたら高いんだよね...

山の頂上にあるこの岩場から、アイネールと逆の方向に続く登山道を道なりに下っていけばお待ちかねの北の街だ。



「早速行くにゃ!」



元気そうに飛び跳ねるクロエを先頭に、私たちは道なりに北の街へと向かった。











アイネール北の山を越えた先にある5つ目の街「ニューフ」。山の斜面に沿うように発展したこの街にはいくつもの煙突が立ち並び、煉瓦や石材、金属を多く使った無骨な見た目の家屋が多い。

そんな「ニューフ」は鉱山都市としても知られており、街の中心にはあるいくつもの坑道から質のいい鉱石が産出されている。


そんなニューフはいくつかの地区に分かれている。

街の住民が暮らす「住宅区」はもちろんのこと、鍛治に使う木材を作る「植林区」。酒屋や飲み屋の多い「酒呑(しゅてん)区」、鍛治に使われた熱や地熱を利用した「温泉区」などがある。

中でも質のいい鉱石を求めてやってきた鍛冶師が多く集まって出来た「鍛治区」には、見たこともない武器や防具が大量に並んでいる。各地の冒険者が一目置いているその地区には、数々の冒険者がお世話になる事だろう。



「にゃ!早速短剣作ってくるにゃ!」


「俺も大盾打ち直すわ!クロエ、一緒に行こうぜ」


「早くいくにゃ!」



クロエとグレンの獣人コンビが声を弾ませながら鍛治区の方に向かった。新しい街の新しい武器に、心躍っているんだろうなぁ。



「僕は酒呑(しゅてん)区でお土産のお酒買ってくるよ。マリは?」


「私は適当にその辺ぶらつくかな」


「おっけー、じゃ...っとその前に、これ渡しておくね。この前のお土産」



ショーイチからお土産と言って渡されたのは「<鑑定回避>のスキルスクロール」。何だろこれ、今のところこのゲーム内では聞いたことない名前のスキルだけど...どんなスキルかは見ただけでばっちり分かっちゃうね。



「何枚か手に入れたから一つあげるけど、闇っぽいから使うのは気を付けて。固有持ちだし、マリは特に盗み見られる危険があるからね」


「闇?...分かった」



よく分からないけど、闇ってアレかな? 後ろ暗い感じの...闇ギルド的な。とんでもないお土産のあったものだ。

ショーイチ、なんでそんなの持ってるの...と聞きたくなるけど、今回はとりあえず置いておこう。使うかどうかは、一応クリスに聞いてからにしようかな? その方が安心だし、何か知ってるかもしれない。



「さて、どこ行こうかな...」



街を見て回る。武器や防具は今のところ問題ないし、また必要になったら買いに来たらいいか。この街は間違いなく[鍛冶師]のカーネルさんが来たがるだろうし、ボス討伐お手伝いついでに何回か来ることになるだろうからね。



「ま、ここは外せないよね。新しい街の重要ポイント」



目の前にはニューフ冒険者ギルド...の隣に建つ雑貨屋だ。レンヴァイツ、ドライアでは毎回新スキルのスクロールが販売されていたし、ほぼ間違いなくここにもあるだろうね。



「やっぱり今回もあったね...えっと、<アイテム操作延長>...<爆破耐性>...」



ざっと見渡すと見たことのないスキルがいくつかあった。<アイテム操作延長>、<爆破耐性>、そして<麻痺耐性>...お金ならあるし、一応一つずつ買っておこう。使うかどうかは別としてね。

それにしても<麻痺耐性>かぁ。<アイテム操作延長>と<爆破耐性>は、鉱山都市だから何となく理解できる。そんな中に<麻痺耐性>はちょっと怪しいよね。



「あ、これって...」



そんなスキルスクロールの隣には「小爆石」がどっちゃりと山積みになっていた。一個1000セル...これって高いのか安いのか...ダメだ、金銭感覚が完全にバグっちゃってる。

でも、こっちも使うかどうか分からないけど買い込んでおこう。結果使わなくても店で売ればいいからね。


街中の店をいくつか回っていたら、いつの間にか日が暮れて夜になっていた。腕の太い鍛冶師達が酒を飲んで騒いでいる。とても活気があっていい街のようだ。あぁ、何回見てもカーネルさんが来たがりそうな街だなぁ...




















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