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44 地下を進む

外伝っぽい話の2本目。


次回投稿 2019/09/06 20時









「ショーイチはん...どうするつもりです?」


「そりゃあ...普通、追うでしょ?」


「あぁ、いや...まぁ、そんな事聞かなくても分かっとりますけども...」



黒ローブが入っていった地面の前で、難波が変な顔をしながらそんなことを聞いてくる。先に進むなんて難波も聞かずともわかっているだろうに...何故そんなことを聞いてきたのだろうか。よく分からないけど、僕は僕で準備を進める。



「...何で着替えてはるんです?」


「ん?」



あぁ、そっちが気になってたんだね...

僕は手に持った新品の服に袖を通しながら言葉を返す。



「この服、着るの楽しみにしてたんだ。タイミングとしては丁度いいでしょ?」


「そうなんや...」



暗い緑の、まるでカラスの羽のように布切れを重ねたローブ。少し前にマリと会話してるうちにテンション上がった結果、その場の悪ノリと勢いで作られた「悪に堕ちたエルフの英雄」風の装備だ。装備の能力も地味に普段着よりいい感じの、僕の虎の子だ。厨二病感が凄まじいから普段から着れないのが難点だけど...

ついでにこの前ふらりと立ち寄ったドライアの雑貨屋で一目惚れして買ってしまった「大輪の花の仮面」もきっちりつけておこう。目の穴が開いてないのに視界ばっちり、鼻の穴も開いてないのに通気性ばっちりの不思議な仮面だ。

ないとは思うけど、この先誰かとこの格好でばったり出くわしたら恥ずかしいし。


確認してみるとこの全身コーデ、控えめに言ってかなり不気味だ。昼間っから街中にこんなのがいたら奇異な目で見られるのは間違いないだろう。こういう機会でもないと、装備も仮面もこの先使うことなさそうだし仕方ない。



「難波は準備できてる?」


「そらもう、ばっちりですわ」



胡散臭い笑みを浮かべながら地面に何かを埋めた難波。僕には大きな穴をあけるような技はないし、ここは彼に頼るほかない。自信満々のようだけど、どんな方法を使うのか...


彼は僕に「隠れましょう」と言った後、一緒に木に隠れて一言。



「小爆石、/起動(アクティブ)



瞬間、入り口のあった地面が吹き飛ぶ。ズシンと地面は一瞬震え、大人一人なら通り抜けられそうな地下への入り口。滅茶苦茶に大きな音がそこら中に響いたけど大丈夫かな...?

それにしてもこれは、自信満々になるのも頷ける。正にこの状況にバッチリあったお(あつら)え向きのアイテムだ。

後ろでは「おほー!」なんて言いながら難波がきゃっきゃと喜んでいる。そんなにこのアイテムが使いたかったのか...



「どうです? いやー、僕もこれ手に入れた時からずー......っと使いたかったんですわ!! アイネールの北の街から来たNPCの行商人から買うたアイテムなんやねんけどな? なにやら北の街は鉱山都市らしゅうて、こういう起爆系アイテムが仰山(ぎょうさん)あるらしいんですわ」


「...すごいね」



興奮冷めやらぬ難波が聞いてもない情報を語りだす。そんな語りを適当に受け流しながら穴に入り込む。



「アイテムで道を切り開く、これぞ[商人]の戦い方やで!」















「にしても、えらいじめっぽいところやね...悪魔とやらはこういうところがお好みなんやろか?」


「確かにこの前会った悪魔も暗い所に住んではいたけど...あんまりじめじめとはしてなかったよ」



レンヴァイツの方向へ真横に伸びる洞穴のような一本道の通路を進む僕と難波。洞穴にしては大人二人が並んで進める程度に広く、ところどころ木や石で補強されているのが見える。自然にできたものではなく、誰かが長い時間をかけて掘ったものだろうか...いや、土の魔法のあるこの世界なら存外早く掘り終えることが出来るかもしれない。


しばらく歩いていると、人の手で掘られた原始的な洞穴はまるで下水道のような整備された場所につながった。



「下水道...? にしては、下水なんて流れてないね」


「うーん、アレちゃいますか? お偉いさんが裏から逃げられるように作られた地下道みたいなアレ」


「なるほど...それなら住民が知らないのも納得か。

 ...足跡はこっちに続いてるみたいだね」


「よう気付かはりますなぁ...」



少し前にソロでレベル上げをしていた時に、索敵用に有効化しておいた<狩人>というスキルが反応している。まだSLvは低いけれど、足跡などの痕跡を見つけやすくしてくれるスキルである<狩人>はしっかりと仕事をしてくれているようだ。

急に迷路のように入り組み始めた地下道を、残された足跡を頼りに進む。すると、道中でいくつかの部屋のような空間が見つかった。



「こんな地下に隠れ家かいな...」


「ここの悪魔は...本当にじめっぽいのがお好みなのかもしれないね」



お世辞にも綺麗とは言えない地下の部屋に、明らかに不釣り合いな家具や調度品。見るからに高価そうなそれらは、恐らく上流階級...領主館から持ち運ばれたものだろうか。中には明らかに儀式なんかに使いそうな趣味の悪い置物まである。

この通路が領主館からの脱出経路ではないかという難波の考えも、あながち間違っていないように思えてきた。


なにか情報がないかと机や棚を軽く調べる。いくつかそれっぽい書類があったのだが、何故か文字が読めない。ギルドで受けるクエストの書かれた紙なんかは読めるんだけど...



「ショーイチはん、面白そうなん見っけましたわ」



何かを見つけた難波が渡してきたそれは、数枚のスクロール。表示されたアイテムの名前は...



「「<鑑定回避>のスクロール」...」


「数枚あったんやけど、全部同じでしたわ。これ、街でも売ってる「スキルを覚えるタイプのスクロール」やね」



<HR> <鑑定回避>のスクロール

 使用すると1次スキル<鑑定回避>を解放できるスクロール。一度使用するとなくなる。


難波が鑑定結果を教えてくれた。

こんなスキルがあるということは、成長によって<鑑定>は他人のステータスを覗き見ることが可能になる...という裏付けになる。



「もしやとは思うんですけど、ひょっとしてこれ...闇ギルドとかある感じやろか?」


「<鑑定回避>...聞いたことないけど、裏がある人しか使わないようなスキルだよね。街でこんなスキル売ってるとこも見たことないし」


「闇ギルドなんちゅーもんはMMO系ならあって当然とも言えますけどね...」



スクロールやそれっぽい書類、趣味悪い置物をインベントリにしまって、部屋を出る。また足跡に沿って追跡を開始する。













「見つけたね...」


「あんなん明らかに悪者(わるもん)ですやん...」



部屋に入る前に、バレないように部屋の状況を確認する。

まるで城にある謁見の間のような広い構造。奥には一段高くなった床。そして玉座のように設置された椅子に座る黒ローブ...僕らが追っていた黒ローブだ。

玉座前に広がる広場には大体30人ほどのNPC。みんなして黒ローブに平伏しているからよく見えないけど、恐らくはいなくなったレンヴァイツの住民だろう。ひとりだけやたら身綺麗な女の子がいるし。


気になるのは、平伏したNPCから黒い靄みたいな何かを吸収していることだろうか。



「情報と一致してる。マリの書き込んだ情報がこれかどうかは分からないけど、レンヴァイツ地下の一連の騒動についてはここで間違いなさそうだね」



「なんや、えらいあっさりでしたなぁ」


「いやいや...大変なのはここからじゃない?」



あの黒ローブを倒さないと、きっとクリアにはならないだろうし...恐らくあれは悪魔。[長弓師]とあろうことか[商人]でアレと戦うなんて、厳しい戦いになりそうだ。









◇◆◇ 新登場スキル ◇◆◇



▼便利系スキル

 ▽狩人

  思い浮かべた索敵対象の痕跡を見つけやすくなるスキル。

  索敵対象の情報をある程度知らなければ反応しない。







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