表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/75

35 1位

次回投稿 2019/08/10 20時






「こんにちは。調子どうですか?」



サイとの戦いが終わったところで、物陰から出て気さくに声をかける。黒髪黒目。ちょっとやんちゃな男子大学生のような見た目だ。

VRゲームではほとんどの人が髪や目の色を変えるけれど、この人は変えていないみたいだ。もしかしたら現実の方が派手髪の可能性もあるけれど。



「ん、おう。ぼちぼちってところかな。

 君の方はどうだい? 見ていたんだろう?」


「バレてましたか」


「そりゃあれだけ熱心に見られたんだ。流石に分かるさ」



結構距離があったはずなのに、観戦していたことがバレていたようだ。私より察知能力高いね...

こんなエリアでソロ狩りしているくらいだし、察知が高くても何ら不思議ではないけどね。



「それにしても、流石は噂の魔女さんだな...このエリアでもソロで戦えるのか」


「あら、私の事をご存じで?」


「そりゃあ...このゲームやってて知らないやつの方が少ないだろうよ...」


「そうですかね? それじゃ改めまして、マリカードって言います。[鏡の魔女]です」


「ご丁寧にどうも。[長剣士]のカトリ丸だ」



カトリ丸と名乗った青年は、ドロップアイテムを残して消えたサイの魔物(アースライノ)の残り香から長剣2本を拾い上げる。

今までいろんな[長剣士]のお客さんが店に来たけど、何本も剣を使って戦うプレイヤーは珍しい。

っていうか...カトリ丸って魔物討伐戦の個人1位だった人じゃん。そういえば初期装備で暴れる人がいるとか聞いたことがあるね。



「私は職業柄、魔法には強いですからね。このエリアだからこそソロで戦える、とも言えます」


「あぁ、<鏡魔術>だっけか? 自分の攻撃をそのまま返されるなんざ、敵からしてみれば考えたくもない悪夢だな」


「カトリさんも相当では? スキルを一切使わずに適正レベルの魔物を倒したように見えましたけど」


「あれはカラクリがあってな......ふむ、これも何かの縁か。フレンド交換しようぜ。ステータス開示した方が説明が早い」


「あら、そんな簡単にばらしてしまって良いんですか?」


「構わんよ、間違いなく真似できないからな。それに、最初のフレンドは好敵手にするって決めてたんだ」



いい機会だったのでフレンドカードを交換する。その後ステータスも互いに開示する。特に秘密にしてることもないし、一方的に開示されるのもなんか悪い気がする。なにより1位のステータスは気になる。





-----------------------------------------------------------


<カトリ丸> ヒューマン ♂ Lv35

 職業:長剣士 

▼装備

 <N>旅人のシャツ

 <N>旅人のズボン

 <N>履き潰れた靴


▽有効スキル

 ▽武術系スキル

  ▽特殊武術系スキル

   長剣 Lv27

 ▽パッシブスキル

  ▽特殊パッシブスキル

   貫徹 Lv20



▽称号

 【長剣の貫徹】

 【Dランク冒険者】



-----------------------------------------------------------





トップの中のトップ。前回の魔物討伐戦で堂々の1位をソロで成し遂げたプレイヤーのステータスにしては、いささかシンプルだった。



「スキルを使わないで倒したように見えたってさっき言ってたな? 実際そうしたくて縛りプレイしてたわけじゃない。スキルを一つも覚えてないから、どうあがいたってそうなっちまうんだよ、これが」



なにやら、ゲーム開始時にスキルを選ばず、以降何も覚えずに長剣のみ手に持って敵を倒していたら、1次転職(Lv15)の時に2つの能力を手に入れたらしい。それがこれ。


<長剣> 新たに自分でスキルを有効化すると消滅してしまうが、長剣を使う攻撃すべてに威力増加、攻撃判定の拡張の効果。長剣1本装備の時しか使えない。

<貫徹> 新たに自分でスキルを有効化すると消滅してしまうが、全能力に大きな補正。


<長剣術>ではなく、<長剣>。確かに、これは公開したところで真似できない。おそらく現時点でカトリさん一人しか持っていないようなレアスキルだ。

なんというか、スキルを選んだりする楽しみが根こそぎ失われるようなスキルだけど...



「なんつーか、俺好みのスキルなんだよな。スキル有効化による行動の補正?みたいなのが一切得られないんだが...」



行動の補正とは、例えば<剣撃(スラッシュ)>であれば横の薙ぎ払い。<連剣(ソードラッシュ)>であれば5連続の前方斬り...といった行動を、剣を握ったことがない人でも普通に使えるように動作にアシストが入る事だろう。多分。

確かに、<杖術>を有効化してから杖の扱いが楽になった気がしていた。これは多分スキルを有効化したことで動作にアシストが入ったのだろう。



「ま、実際に近くで見たほうが早いか」



カトリさんが長剣を手に持ち素振りすると、スキルが発動した時と同様の淡い光が剣を包む。



「こんな感じでな。スキルを使えない代わりに、剣を使ったすべての攻撃の威力が増すんだわ。

 つっても、本物のスキルに比べたら片手落ちだが」



通常の攻撃すべてがスキル同様の攻撃になる...本人の技量によるところが大きそうだけど、使いこなせればとんでもなく強そうだ。













この後、丁度いい機会だったので二人で簡易パーティを組んでレベル上げを行った。カトリさんに前衛を任せれば、例え狼の群れでも難なく倒せた。



「それにしても...お前さん、戦場にワンピースはどうかと思うぞ」


「えっ? まさかカトリさんにそんなこと言われるとは思いませんでしたが...鏡出しましょうか?」



ある程度戦闘回数を重ねると、互いに冗談を言い合えるくらいの余裕が出てきた。やはり5万人の中から1位を掴み取るレベルの実力者。スキルがない故の変幻自在の剣には隙が無い。


ダンジョンの奥にいたボスの話とかコピースクロール関係の話をしつつ、数時間も経たないうちにレベル上げを切り上げてカトリさんと共にレンヴァイツに戻ることにした。満足のいくレベル上げだったし、そろそろ寝るにはいい時間だからね。



「似た者同士だと思ったが、戦い方は大きく違う...スキルのない前衛と、スキルを駆使する後衛か。

 なかなかどうして、面白いじゃないか」


「そうですね。直接戦うことは恐らくないと思いますが、良いライバルになりそうです」


「そう...だな。ま、機会があれば手合わせしようじゃないか」










変更:2019/10/27 6:00

<長剣> 長剣を使う攻撃すべてに威力増加、攻撃判定の拡張の効果。ただし長剣1本装備の時しか使えない。



<長剣> 新たに自分でスキルを有効化すると消滅してしまうが、長剣を使う攻撃すべてに威力増加、攻撃判定の拡張の効果。長剣1本装備の時しか使えない。


本来意図していた表現に変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ