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32 商売結果

早くて7月末、遅くて8月末まで更新不定期で少なめになります。申し訳ない...


前回までのあらすじ

コピースクロール売り捌いてSPぼろ儲けしようと計画した。










「ありがとうございました~!」



服を作り、コピースクロール商売計画を立てた翌日。コピースクロールを求めてきた最後のお客さんがほくほく顔で帰っていった。


現在、夜の22時。夕方から店を開いて5時間くらいは経っただろうか。晩御飯を食べる暇すらない大盛況だった。

賑やかしのために机の上に並べて置いた大量の服やポーションも軒並み売り切れ、今では椅子に座る私と手伝ってくれた無口な[商人]のプレイヤー、まるで握手会の「はがし」のような立ち位置のショーイチだけになった。

昨日の時点ではそこまで売れず、ぼちぼちの結果に終わるだろうと予想していたのだけど...



「...大変なことになったね、マリ」


「そうだね...」



コピースクロール販売を開始してから数十分経った頃だろうか? いきなり客が大量に押し寄せたのだ。

最初は魔法がうまく使えない獣人のプレイヤーがそこそこ買いに来たのだけど、そのタイミングからは種族関係なく沢山来た。

それもそのはず。



「まさか、新しい職業が出現するなんてね...」


「グレンの時は出なかったから、油断してた」



そう、新しい職業が出現したという報告が掲示板にあげられたのだ。その名も[見習い水魔剣士]と[見習い精霊剣士]。この情報が文字通り呼び水になった。

聞いた話によると、<剣術>から派生したスキルの攻撃技と組み合わせたら職業が解放されたらしい。

ちなみに、他にもいくつか職業解放の情報があるとかなんとか...



「そういえばクロエとグレンはどこ行ったの?」


「あぁ、彼らなら...試し切りに行ったよ、新しい技能の」



お店のお手伝いをしてくれていたクロエとグレンも、机の上の販売用アイテムがなくなってからは手持無沙汰だったようで、私から「今日のお給料として要求するにゃ!正当な対価にゃ!!」とコピースクロールをぶんどって狩りに出かけて行った。グレンは特に何も言わずクロエについていったので、また後で会った時に今日のお給料を渡そう。



「そっか。ところでショーイチはスクロール要らないの?」


「うーん...僕もスクロールは使いたいんだけど、【水】は弓と合わない気がしてね...


「【精霊】ならエルフっぽくて似合ってると思うけど」


「【精霊】は...場所によって効果が変わるのがなんとも...」



[見習い精霊剣士]を解放した人に話を聞いてみたところ、【精霊】のコピースクロールを<長剣術>と複合させた結果生まれたのがスキル<精霊剣術>で、それに付随して[見習い精霊剣士]が解放されたらしい。

<精霊剣術>で得られた最初の技能が<精霊纏>。その場にいる精霊の力を剣に纏うらしい。火山なら火、海なら水といった感じで、時と場所によって変化する技能のようだ。


[見習い水魔剣士]に至るために生まれた<水剣術>というスキルでも、最初に得られた技能は<水纏>。こっちはいつでもどこでも水を纏うことが出来るらしい。



「マリには是非【風】の習得をお勧めしたいところだよ」


「余力があったらね」


「余力って、そういえばSPどれだけ溜まった?」


「3桁」


「やるねぇ...」



<魔述>でコピースクロールを作るために必要な消費SPは3。これをSP4で売ったから差し引き+1。

元々そこまでSPを持っていなかったし、普通に100枚以上売れたみたいだ。

ゲームバランス大丈夫かな?



「うーん...」


「何か心配事?」


「いや、私1人にSPが集中しちゃってるけど...SPの貧富の差が大きくなりすぎじゃない?」


「えっ? 大丈夫だと思うけど...ダンジョン奥の石碑もあるし」


「なにそれ」


「つい...昨日の昼間だったかな? お金(セル)をSPに変換する石碑が見つかったらしいよ」



どうやらダンジョンの奥の隠し部屋にあった石碑で、所持金(セル)をSPに変換することが出来るようだ。そのレートは5万セル→SP1。めっちゃ高いけど、資金調達さえできればSPには困らないらしい。

ついでに、報告を聞いた冒険者ギルドがその石碑を街まで運搬する計画を立てているとかいないとか...



「資金調達だったら冒険家業より生産職の方が効率的。戦闘ばっかしてないで生産系スキルも育てたほうがいいぞっていうメッセージが見え隠れしてるよね」


「考えすぎじゃないかな...」








◇◆◇









ひんやりとした風が木々をざわざわと揺らす、夜の森。並んで歩く、大男と少女。



「にゃ、2時方向に敵、3匹」


「了解」



小声で必要な情報を相方に伝えると、気配を殺して一気に近づく少女。一方、大男は正面から気配をまき散らしながらずいずいと進んでいく。

大男に気づいた大きなウサギが警戒態勢に入ると、大男は手に持った大きな盾を構えじりじりと近づいていく。

3匹の大きなウサギが一斉にとびかかってくる寸前、意識外の茂みから小さな影が飛び出す。



「<精霊纏>、<隠剣(ハイドソード)>にゃ...!」



少女の持つ短剣が風を纏い、切れ味を増して襲い掛かる。いきなり現れた想定外の敵になすすべなくウサギは倒れた。

油断なくウサギの死体が消えるのを確認すると、少女の短剣に絡みついた風が方々に散っていく。



「にゃー...思ってたよりすごいにゃ、この<精霊纏>...まるでバターにゃ...」


「そうなのか? 俺から見ればいつも通りだったが」


「手ごたえが違うにゃね」


「そうか...俺の出番も残しておいてほしかったが」


「にゃ? あんまりにも手ごたえ無かったから気づかなかったにゃ。次行くにゃ次」


「あいよ。次は俺の<弐鏡(デミリフレクト・ツー)>も試させてくれよ?」


「分かってるにゃ。...にしてもやたらかっこいい技能名にゃね」



満足そうな顔で語る少女とよく分かってなさそうな大男は、次なる試し切り相手を探して森を歩く。











―――――――――――――――――――――――――――――――――




今回マリの得た<魔述>によって、属性を内包したスクロールである「コピースクロール」が登場しました。

このコピースクロール系を使うことで、色々なスキルを合成し自分だけのオリジナルスキルを生み出していくのがこのゲームの重要な要素の一つになります。


また、コピースクロールと同じ効果を持つアイテムは他にもあり、スキルレベルが最大になった一次以上のスキルを分解することで得られる「オリジンスクロール」、イベント等の商品として手に入る「トレーススクロール」などがあります。これらはすべて使用にSPを要求しますが、入手難易度によってその数値に違いがあります。


「オリジン」はスキルを一つ分解する必要があるので入手難易度が高く、消費SPは5で使用可能。

「トレース」はイベント報酬なので入手難易度はそこそこ。消費SPは10。

「コピー」は<魔述>等でSPの消費のみで量産できるため入手は簡単。その代わり消費SPは20と多め。














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