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3 鏡魔術師と友人

 




 ミラがすっと近づき、私の額に手をかざす。



「...んっ」



『[鏡の精霊]ミラの干渉により、スキル<鏡魔術>を解放、有効化されました。』

『[鏡の精霊]ミラとの接触により、スキル<精霊術>が解放されました。』

『称号【合鏡(あわせかがみ)の邂逅】を取得しました。』



「お?」


「よし、これで職業に[鏡魔術師]が追加されたはずだ。

 さぁ、次はお待ちかねの転職の時間だ」



 ミラの言葉と共に、新しいウィンドウが表示される。

 次は...


▽解放済み職業を選択してください

 ▽魔法系職業

 [見習い水魔術師] [鏡魔術師]


 ▽生産系職業

 [見習い服飾師]


 ▽便利系職業

 [見習い鑑定士]



「職業の一覧が出ただろう? これが、君が今就くことのできるすべてだ」


「思ってたより少ないですね」


「最初はそんなものさ。僕はさっきSPを入手する方法を教えたけれど...」


「プレイヤーレベルとスキルレベルの上昇で手に入る、ってやつですね」


「そうそう。具体的にはプレイヤーレベルは...最初の方は1つ上がる度にSPが1貰えるね

 スキルレベルは基本的に5刻みでSP1。まぁ、この限りではないんだけどね」


「なるほど...あんまり序盤に使いすぎると、後が大変かな...」


「そうでもない、とは言えないかも。まぁ、何も考えずに使わないスキルを有効化しまくったりしない限りはなんとかなると思うよ。

 それよりも、ほら! 職業を選びなよ!」


「そうですね。では」



『職業が[鏡魔術師]に変更されました。』



「これで転職チュートリアルは終わりだね。お疲れさまでした。」


「ありがとうございました。」



 これで私も無事に無職を卒業できた。よかった...

 なんだかんだもうゲーム開始から2時間は経ってるし、オープニングイベントにいた人の中で無職卒業が一番遅かったかも?

 ...まぁいいんだけどね。



「それじゃやる事も済んだし、最初の街まで送ろう」


「いいんですか? ありがとうございます」


「ふふ、居座られても困るからね?」



 ミラが手を振る。部屋に張られた鏡の一枚がふわりと浮き、私の目の前にゆっくりと移動する。

 移動が終わったかと思ったら、鏡がきらりと光る。すると、鏡に映っていた私が消え、どこかの森の景色が映る。



「さ、出口はそちらだ」


「色々ありがとうございました。」


「どういたしまして。またいつでも来てくれたまえ」



 優男スマイルを背に受けながら、森を映す鏡に一歩踏み出す。

 膜を通り抜けるような感覚を感じつつ、通り抜けたそこは鏡に映っていた森の中だった。








 ※









「ここ、どこだろう...」



 ミラに送られて森の中に放り出されたけど、周りを見渡しても木しかない。

 街の方向なんて分かるはずもなく...



「...とりあえず、歩いてみようかな」



 立ち止まっていても仕方ないし、とりあえずその辺を散策してみよう。街が見えたら儲けものだ。

 本当に最初の街の近くなら、魔物が出てきたとしてもそこまで強くないだろう。多分。


 と、行く当てもなく歩く事数分。<目利き>のレベル上げも兼ねて目に入るものを片っ端から見ていると


<N> 薬草 10セル

<N> 薬草 10セル

<N> 薬草 10セル

<HN>魔草 40セル

<N> 薬草 10セル 品質:E-


 と、素材がそこそこ見つかった。

 薬学や錬金術で使うんだろうなぁ...なんて考えながら、とりあえず採取しておく。


 途中から品質が確認できるようになったのは、<目利き>のレベルが上がったからかな?

 確認してみると<目利き>はレベル3、<水魔道>はレベル2になっていた。

 よく見ると、ログにもスキルレベルが上がった報告が上がっていた。

 小さくて見逃してたよ...


 ぽやぽやと薬草採取に励んでいたら、いきなり背中から衝撃が走る。



「ギィ!ギィ!!」


「いってて... お、初魔物」



 角の生えたウサギが背中からぶつかっていたようだ。

 HPは...えっ、嘘。半分も削れて...



「もしかして、結構やばい?」


「ギィイ!!」


 必死になって避ける私と、突っ込んでくるウサギ。


「あっぶね! <水球(ウォーターボール)>!!」


「ギギッ...!」


<水球(ウォーターボール)>がパァンとウサギにぶち当たり、びしょ濡れになる。

 しかし、そんなにダメージを受けてない感じ? 逆に怒りを煽った感じになってる。


 水魔法じゃ時間がかかる。HP半分の私が長い時間避け続けられる保証はない。

 何かないか、何かないか...<鏡魔術>!


▽鏡魔術 Lv1

 反射(リフレクト)

 目の前にダメージを反射する鏡を出現させる。

 ダメージ反射率や同時出現枚数などはスキルレベルに依存する。


 いけるかなコレ...?



「ギィイ!ギィイ!!」


「うわっと!」


 いきなり突っ込んできたから咄嗟に避ける。振り返りざまにすかさず<水球(ウォーターボール)>。

 案外これだけでもなんとかなるかも? なんて慢心したからだろうか。


「ッ!<反射(リフレクト)>ッ!」


「グギャッ...!」


 キィンという高い音とともに、ウサギをはじき返す。

 いきなり際どいコースで突っ込んできたから焦った。ありがとうミラ、あって良かった<鏡魔術>。

 反射(リフレクト)にぶつかってひっくり返ったウサギにこれでもかと<水球(ウォーターボール)>を放ち、殴る蹴るの暴行を加えるとウサギはぐったりして光になり消えてしまった。



『<鏡魔術>のレベルが上昇しました。1→2』

『<水魔道>のレベルが上昇しました。2→3』

『プレイヤーレベルが上昇しました。1→2』



 なんとか勝てた。おかげさまでレベルも上がりました、ウサギさんありがとう。

 ドロップアイテムは『角ウサギの角』。そのまんまだね。

 ...っていうか、最初の敵から普通に強かったけど? 大丈夫? これ設定間違ってない?



「おい!そっち行ったぞ!」


「任せろ!<剣撃(スラッシュ)>!!」



 間違ってなかった。角ウサギとの闘いから数分、周りにちらほらと角ウサギと戦うプレイヤーが増えてきた。

 街の方向、こっちで合ってたようだ。一安心。


 それにしても、みんな上手く角ウサギと戦ってるなぁ...

 剣でいなしたり、盾ではじいたりしてる。魔法使ってるソロっぽい人は、私と同じように気合で避けている人と、杖をつかって立ち回る人の2種類かな。<杖術>取ってもいいかもなぁ。



「にゃ? もしかしてマリ?」


「ん? なんで、あっ...」



 どうやら友人と出くわしたようだ。








 ※









「まさかマリがMagiratora(マギラトラ)はじめてたとはね、にゃはは」


「そんな笑うことないでしょ?」


「にゃーごめんごめん。アイツらやんわり断られてたから、マリはもうゲームしないのかと思ってたよ。

 んで? 今回も名前はマリカード?」


「正解。まぁ昔からずっと変えてないんだけどね」


「あちしもにゃよ」


「ってことは、クロエ?」


「それにゃ」



 といって朗らかに笑うクロエ。どうやら()()黒髪の猫の獣人のようだ。

 彼女は私にやたらVRMMOを勧めてきた友人のうちの一人で、昔から黒髪の猫獣人を選択する生粋の猫RP勢(ロールプレイヤー)だ。

 ちなみに、「クロエ」という名前は彼女が飼っている黒猫の名前だ。猫愛が行くとこまで行った結果、バーチャル世界で彼女自身も猫になった。

 ...最近は現実でも猫化し始めたけど。



「それで?」


「にゃ?」


「クロエがいるってことは、他の2人もいるんでしょ?」


「もちろんにゃ。ちょっと前まであちしとパーティ組んでレベル上げしてたのにゃ。

 今は早めのご飯とお風呂で落ちてるにゃ」



 現時刻は18時。きっとあいつらの事だから、夜通しゲームやるために早めに済ませようとしているのだろう。

 本当に、ことゲームに関わると類まれなる勤勉さを発揮する奴らだ。



「それで、マリはもう誰かとパーティ組んでるにゃ? あちしとレベル上げしないかにゃ?」


「いいね」


「にゃら、あちしのパーティに入るよろし。 にゃー、マリと一緒にゲームするの久々ぁ」


「確かにそうね。一番最後に遊んだのって3年前だったっけ?」


「んー。多分? まだ高校生だったしそんなもんかもにゃ」


「何はともあれフレンド交換にゃ」


「語尾パクるなにゃ」



 他愛もない話や情報交換をしながら森に入り、ウサギ狩りを始める。

 その合間にステータス談義が始まる。とりあえずお互いにステータス画面を共有して、見比べる。

 どうやらクロエは近接攻撃系のキャラ育成を目指しているようで、職業は<見習い戦士>だった。



-----------------------------------------------------------


<クロエ> ハーフビースト(猫) ♀ Lv6

職業:見習い戦士

▼装備

 <N> 使い込まれた銅の剣

 <N> 初心者の小さな木盾

 <HN>角兎の皮鎧

 <N> 旅人のシャツ

 <N> 旅人のズボン

 <N> 見習い戦士の靴


▽有効スキル

 ▽武術系スキル

  剣術 Lv6 盾術 Lv4

 ▽便利系スキル

  夜目 Lv1 威嚇 Lv3 察知 Lv3

 ▽パッシブスキル

  物攻微上昇 Lv6 敏捷微上昇 Lv4 物防微上昇 Lv1


▽称号

 【Fランク冒険者】


-----------------------------------------------------------




「レベル6って、早くない?」


「にゃ、あちしらは3人でパーティ組んで効率よくレベル上げてたからにゃ。

 それに、持ち込みアイテムで経験値増えるがあったにゃろ?」


「なるほどね。そりゃレベル上がるのが早いのも納得にゃ」


「パクるなにゃ。似合ってないにゃ」


「っていうか、なんで夜目なんてとってるの? 明らかにまだ必要なくない?」


「猫だから」


「ん?」


「猫は夜でも目が見えるのにゃ」


「あぁ、納得」



 流石は生粋の猫RP勢(ロールプレイヤー)。スキルまでこだわってやがる。

 【Fランク冒険者】は、多分ギルドへの登録が条件なのだろう。冒険者ギルドがあるというのは、前情報で知ってた。



-----------------------------------------------------------


<マリカード> ヒューマン ♀ Lv3

職業:鏡魔術師 SP:3

▼装備

 <N> 木の棒

 <N> 旅人のローブ

 <N> 旅人のシャツ

 <N> 旅人のズボン

 <N> 履き潰れた靴


▽有効スキル

 ▽魔法系スキル

  水魔道 Lv4 鏡魔術 Lv2

 ▽生産系スキル

  服飾 Lv1

 ▽便利系スキル

  目利き Lv5


▽称号

 【合鏡(あわせかがみ)の邂逅】


-----------------------------------------------------------




 クロエとのレベル上げで、また少しずつレベルが上がっていたようだ。

 ちなみに、落ちてた木の棒を拾って振り回しただけで装備欄にばっちり表示されている。



「なんかもう既に色々ツッコミどころがあるにゃ...」


「私もそう思う」


「まず、レベル低すぎないかにゃ? 最初は東の平原がいいってギルドのお姉さん言ってたの聞いてなかったのかにゃ?」


「私まだ街にすら行ってないから...」


「にゃるほど。折角だから教えてあげるにゃ」



 どうやらここは最初の街の南の森らしく、初心者がレベル上げに使うエリアの中でも一つ上の場所らしい。

 目安としてレベル5までは東の平原、レベルが上がったら次の南の森...という風に分けられているらしい。

 道理で最初に戦ったウサギが強かったわけだ。納得。



「次にゃ。[鏡魔術師]ってなんにゃ? 初期職って[見習い]のはずにゃけど...」


「実は私もよく分からないんだよね」



 よくよく考えてみれば、確かにミラも「初期職は[見習い]」って言っていた気がする。

 あれ?「大体が[見習い]」だったっけ? なら案外そういうものなのかな?



「大体<鏡魔術>って何にゃ? ちょっと見せるにゃ。丁度いい()もそこにいるにゃし」



クロエが指さした先には、さっき私にぶつかってきたのと同じ角ウサギが一匹。なるほど、アレが的ね。

わくわくキラキラした猫目をこちらに向けてくるクロエに苦笑しつつ、こちらに狙いを定めて自慢の角を突き出し飛び込んできたところを<反射(リフレクト)>ではじき返す。

キュウとか細い声で鳴きながら逆方向に吹き飛ばされた角ウサギに、クロエがささっと近づき短剣でさっくりととどめを刺す。なるほど、二人以上のPT(パーティ)を組んでいれば結構安全にレベル上げ出来そうだね。



「ほー!守り系の魔法にゃ?使い勝手よさそうにゃね」


「今のところ守り一辺倒だけど、使い勝手はばっちりだよ」


「にしても、いきなりユニークスキルにゃ? いつもいつも節操ない女にゃ...」


「偶然の産物だから今回のはセーフ」



 確かに昔やってたゲームでも、なんかよく分からないイベントに巻き込まれていた記憶がある。

 いつのまにか魔女の弟子になってたり、いつのまにか超重要なイベントアイテムを持ってたり。

 最愛の吸血鬼NPCが死んだり...良いことも悪いことも経験してきたなぁ...



「まぁいいにゃ、マリは毎回こんな感じだったにゃ。

 んで、その称号ってなんにゃ? なんか効果あるにゃ?」


「うん。なんか[鏡の精霊]に会ってね。すんなりもらえたよ。

 今のところ...効果は実感できないね」


「まだゲーム始まって3時間なんにゃけど...にゃ、本当にこのゲームでよかったにゃ。

 初期スキルに<鑑定>なんてあったら一大事にゃよ?」


「ほんとにね。これで誰かに称号を見られでもしたら、大事な大事なゲーム時間が質問攻めだけで終わってたかもしれないし」


「こんなの鑑定されたら一発で質問攻めにゃ...」



 そう、このゲームの初期スキルには<鑑定>がないのだ。

 つまり、序盤で他人のステータスを覗き見ることが実質不可能なのだ。私と同じような、ユニークじみたトンでもスキル入手をしてない限りは。


 私はいつか<目利き>が<鑑定>になると信じているけど、同じように<目利き>を育てている人もきっと私と同じ希望をもっているのだろう。その時に他人のステータスを鑑定できるようになるかはまだ分からないけれど、それまでは誰かにステータスを盗み見られる心配はほとんどないと言える。



「昔みたいにフードでも被ってお茶を濁すかにゃ?」


「できれば今回は勘弁...おしゃれしたいし」



前にちょっとした騒動を起こしちゃった時は、ゲームプレイ中ずっと「顔が見えなくなるフード」を装備し続ける羽目になった。色んな人から追い掛け回されたし、今回のこのゲームではそういう事が起こらなければいいけど。



「ほんと、<鑑定>がまだなくて助かったよ」


「ほんとにゃ。話変わるけど、SPの余りはあるにゃ? ステータス上昇系のパッシブスキルは先に取っとかないと損するってもっぱらの噂にゃよ」


「え、なんで?」


「パッシブスキルはプレイヤーレベルが上がったと同時に上がるにゃ。

 にゃから、プレイヤーレベルが低いうちから取っておけば、それだけレベルが上がってくれるのにゃ」


「なるほど、これはいいこと聞いた」



 残りSPは3。初期スキルであればSP1で一つ有効化出来るようだ。

 選択肢は


▽パッシブスキル

 物攻微上昇

 物防微上昇

 魔攻微上昇

 魔防微上昇

 敏捷微上昇

 器用微上昇


 うーん...とりあえず、物攻は無しかな? <杖術>を取るなら捨てがたいけど...

 防御系も<鏡魔術>あるし...いや、後々を考えると防御系もアリかな。耐久は重要。

 魔攻は取ろう。攻撃方法が魔法しかない今、取らないとダメだ。マストだね。

 問題は敏捷と器用か...服飾考えるなら器用だけど、敏捷も捨てがたい...うーむむ。


 ということで、<魔攻><物防><魔防>のパッシブスキルを有効化した。

 防御系は後々の事を考えて先に取っておいた。器用と敏捷は、次のレベルアップと<水魔道>のLv5で有効化しよう。


 パッシブスキルを有効化し、引き続きクロエとレベル上げ。

 19時になるとクロエもご飯とお風呂を済ませるらしく、20時頃にまた一緒にやる約束をしてログアウト。


 私も色々済ませてこようかな。





-----------------------------------------------------------


<マリカード> ヒューマン ♀ Lv4

職業:鏡魔術師 SP:0

▼装備

 <N> 旅人のローブ

 <N> 旅人のシャツ

 <N> 旅人のズボン

 <N> 履き潰れた靴


▽有効スキル

 ▽魔法系スキル

 水魔道 Lv5 鏡魔術 Lv3

 ▽生産系スキル

 服飾 Lv1

 ▽便利系スキル

 目利き Lv6

 ▽パッシブスキル

 魔攻微上昇 Lv2 魔防微上昇 Lv2 物防微上昇 Lv2 器用微上昇 Lv1 敏捷微上昇 Lv1


▽称号

 【合鏡(あわせかがみ)の邂逅】


-----------------------------------------------------------




木の棒は投げ捨てました。






追記:2019/4/12


<水魔道> → [見習い水魔術師]

<鏡魔術> → [鏡魔術師]

<服飾> → [見習い服飾師]

<目利き> → [見習い鑑定士]


と、職業が解放されています

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