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24 クロエのお手伝い












3月3日。ダンジョン攻略を翌日に控えた私たちは、メンバー全員が各自で自由に準備するということになった。

私はスキル上げと消耗品の生産をメインにしようと、最初の街の近辺で薬草などを摘みつつ、光魔道と精霊術をメインで育てた。ついでに薬草類の品質が上がる初期スキルの<採取>もついに取った。



「そろそろいいかな...」



1人で黙々と作業のように薬草摘みをしていると、インベントリがいい感じに詰まってきた。フリマに帰ってポーションの生成に入ろうかな...


周りを見ると、精霊のほわっとした光が興味深そうにこっちを見ていた。ちなみに人の姿はとっておらず、ぼやっとした明るい球体だ。



「みんな、またね」



手を振り別れを告げると、意思が伝わったのか方々に散っていく。私もフリマに戻ろう。














「雇ってほしいのにゃ...!」



フリマに帰ると、見慣れた黒猫が頭を下げていた。雇ってほしいとな...?



「えっと、クロエ...雇うのは構わないんだけど、一体どうしたの?

昨日「明日はレベル上げするにゃー!」って言ってなかったっけ?」


「行ったにゃよ、レベル上げ。そのときにゃね...」





――――▽回想▽――――





「にゃー!これでしまいにゃ!」



あちし1人でがっつりレベル上げをしようと思って、最初の街<アイネール>の周辺でレベルを上げてた。

自分1人でも、南の森の奥地でレベル上げが出来てたんだけど...



「...物足りないにゃね」



もう少し敵が強い方がSLvを上げるのにちょうどいいし、何より弱い敵じゃ面白くない!

思い立ったら即行動にゃ。別の狩場に行こう。



「西の林の奥地はまだソロじゃ厳しいにゃ...ほかに行けそうなところは...」



短剣に付いたデカウサの血を拭いながら、あちしが1人で行けそうなフィールドを考える。

東の平原奥地、南の森奥地じゃ敵が弱い。かと言って西の林奥地はソロで狩るには厳しい。にゃら...



「レンヴァイツ付近」



あそこしかないにゃ。









「やっと着いたにゃ! ここからめくるめくあちしのレベル上げがはじまるのにゃ」



2つ目の街<レンヴァイツ>に着いたあちしは、まず死亡時のリスポーン地点を変えるために中央広場に行く。

武器屋に飾られたかっちょいい武器に目移りし、どこからともなく漂ってくるウマそうな匂いにおなかが鳴る。出所を探ると、街行く人が握っている甘辛いタレがしっかりとついたホカホカの焼き鳥だった。

アレはどこで買え



「...違うにゃクロエ、あちしはレベル上げに来たんにゃ...!」



食べ歩きに傾いた天秤を意志の力でひっくり返し、リスポーンの設定を終えるとそのままの足でギルドに向かう。

ギルドでクエストを確認して、レンヴァイツ周辺の魔物のレベルを確認する。猫は計画的なのにゃ。



「南がいいにゃね。そうと決まれば早速...の前に、消耗品揃えていくにゃ」



見たところ、アイネールのある元来た道の西が1番魔物が弱く、そこから東に向かってどんどん強くなっていくのにゃね。北と南は同じくらいの強さだけど、北から東にかけて流れている川が厄介そうだから南がいいにゃね。


必要なことを確認して、あちしはギルドを出る。ポーション等を揃えるために隣に建っている雑貨屋に入る。



「...いらっしゃい」


「にゃ、ポーションありま...にゃッ!? おじさん何があったにゃ!?」



雑貨屋に入ると、なんだか元気のないおじさんが声をかけてくる。

ポーションがあるか聞くために声の方に目をやると、控えめに言ってぼっこぼこにされたケガだらけのおじさんと、その後ろで監視するように立つ鷲鼻のおばあちゃんがいた。



「...」


「こいつのケガは気にするだけ無駄さね、猫の嬢ちゃん。ポーションが必要なのかい?」


「えっと...そうにゃ。5本くらいあればいいにゃ」


「あいよ。2500セルさね」



あちしはお金を出すと、ポーションを受け取る。さ、狩りに行くにゃ!と気合を入れたその時、視界の端っこにそれが映った。

まさか、これは...!



「にゃ...? これは...ッ!」


「...それが気になるのか? ちょっと高いぞ」


「いくらにゃ!?」



それを認識したとき、あちしの猫耳と尻尾はピンと立ち、毛がぶわっとなる。

そのままの勢いでおじさんに迫る。言い値で買うにゃ!!



「元気のいい嬢ちゃんだね...10万だよ」


「...にゃ...ッ」



脳内にぴしゃーんと電撃が走る。...払えない。

でも、これは絶対にあちしに必要なものだ...!

何としても手に入れてみせるにゃ...そのためには



「マリのとこでバイトするにゃ...!」


「...ん? マリ?」


「おじさん、それ取り置きしといてにゃ! 今日中に買いに来るにゃ!」



雑貨屋を飛び出した。



「待ってるにゃ...<聞き耳>ッ!」



猫は耳がいいのだ。





――――▽回想終わり▽――――




「どうしても欲しいのにゃ...<聞き耳>...!」


「なるほどね...ちなみにいくら足りないの?」


「5万にゃ...!」


「結構足りてないね...」


「お金の稼ぎ方を知らない無力な猫なのにゃ...」



私が店を開いて得られる利益はだいたい3万くらい。今までは空き時間でちょこっと開いていた程度だったから、素材の工面さえどうにかできれば、昼過ぎの今から一日中店を開けば...



「10万はいけるか...? 半分の取り分だとしても十分元が取れる...?」


「マリ?」


「クロエ、今度私のいう事1個聞いてね」


「にゃ! なんでもするにゃ!」



言質は取った。そして今日一日のスケープゴートが確保できた。

カンペキじゃないか...



「店長!あちし何したらいいにゃ?」


「店番してください。私は裏で生産します」


「任せろにゃ!」



ダンジョン攻略を翌日に控えた私たちは、こうして一日中商売することになった。









「なるほどね...なんていうか、クロエらしいね...」


「だよね。猫RP(ロールプレイ)のために一日中接客するなんて」


「ふふ、初期スキルで<夜目>を取ってるくらいだからね」


「お買い上げありがとうございましたにゃ!」



おやつの時間を過ぎた頃、今日一日をダンジョン情報の収集に充てたショーイチがやってきた。

いつものように私に薬草類を大量に渡してくると、即座に現状を把握して「なにもダンジョン攻略前日にやらなくても...」と呆れつつ、クロエらしさを垣間見てほほ笑む。



「ふーん...マリ、在庫は?」


「十分かな。貰った薬草類で余剰分もできそう」


「なら、僕もちょこっと手伝うよ」


「いいの?」


「任せてよ。情報収集ならここでも出来そうだし」




そろそろマギラトアイドルNo.1決めようぜ Part.14【考察板】


523.名無しの長弓師

おいお前ら! 魔女っ子の店で黒猫ちゃんがポーション手売りしてるぞ!

しかもポーション魔女っ子のお手製なんだが!

今日の夜までやるらしいぞ! お前ら急げ!

ちなみに、薬草とか布を持ってきてくれたら割引してくれるらしいぞ




「こんなもんかな...」


「ショーイチ?」


「さ、忙しくなるよ! マリは引き続き生産ね! ペース上げたほうがいいかも」



よく分からないけど、彼がこう言うってことはそうなるのだろう。

流石は我らが軍師だ。頼りになるね。









「お買い上げありがとうございましたにゃあ!」


「ふぅ、すごい人だったね」


「まさか列整理が必要になるとは...」



晩御飯を食べる暇もなく、夜の21時。ようやく長かった列が捌け、店を終わらせることが出来た。

結果的に儲けは30万近く。過去一番の利益だ。

あとで3等分かな。



「さっすが嬢ちゃんの店だな! 一日店を開くだけでこんなになっちまうとは」


「おかげで僕もお零れにあずかれたよ。これなら毎日お店開いてほしいくらいさ! 他の生産の人たちも感謝してたよ」



隣に店を構える義太夫とカーネルが話しかけてきた。クロエの接客ととんでもない集客の結果、フリマのほかの店にも客が流れていったようで、長い列を作って迷惑をかけていたにもかかわらず感謝されているようだ。良かった。

なんなら途中から列整理手伝ってくれてたし。ありがたいことだ。



「にゃ! お給料欲しいにゃ! <聞き耳>!<聞き耳>!」


「はいはい、お給料ですよー」


「やったにゃああああ!!!」



給料の入ったねこみみ巾着袋を受け取ると、獣人特有の素早さで駆け抜けていく。今から行くのだろうか...?



「はい、ショーイチも」


「ん? 僕ももらっていいのかい?」


「働いたんだし、正当な対価だよ」


「じゃ、遠慮なく」



ショーイチは販売アイテムの説明をしながら、ダンジョンに挑んだプレイヤーから情報の聞き込みをしていた。明日にはダンジョンの話が聞けるかな?



「まさか、ここまで人が来るとはね...僕も予想外だったよ」


「ショーイチが予想外なんて、珍しいね」


「うん、甘く見てた。ところでマリは晩御飯はいいのかい?」


「よくないね。私晩御飯食べてくるよ」


「おっけ。じゃ、また明日ね!」


「ばいばい」



ログアウトして晩御飯食べよう。

今日は何を作ろうかな...














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