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18 通知と<魔力操作>








朝ごはんを食べながら、昨日寝る前に書いたメモを取り出す。

今日は2/27、土曜日。寒いけど、いい天気だ。



「えっと...今日は...予定は無しかな?」



メモ帳には、昨日の討伐戦を終えたときに一緒に戦ったメンバーの一部との予定がちょろっと書かれている。

カナデさんの服を作るとか、一緒にエリアボスを倒して2つ目の街に乗り込むとか、色々だ。



「服飾...そろそろ1次スキルにあげられないかな...」



<服飾>はメンバーとの合流前の隙間とかにチクチクやっていたこともあり、いまではLv12まできている。

今からログインしてそこそこ頑張れば、今日中にレベル最大までもっていけそうだ。



「あぁ、でもアレだ...クリスに聞きたいこともあったっけ...」



いつだったか<操水>で繊細な操作がしづらいと感じたときに、<魔力操作>的なスキルがあるんじゃないかとふと思ったことがあった。昨日だっけ?

予定もないし、さっさと聞きに行ってしまうのもアリかな...



「こんなところかな?」



残った朝ごはんをかきこみ、食器を食洗器に放り投げる。折角のいい天気だし、ちょっとだけランニングしてからお風呂入って、すぐさまログイン。



「いってきまーす」













「こんにちは、マリカード。未読の通知が3件あります。」



ログイン画面のサポートAI、アイちゃんがいつものように私の目の前にウインドウをポップアップさせる。え~と、なになに...?



・ストーリークエスト「影より出でる」開催について

・魔物討伐戦:個人ランキング報酬受け取り

・魔物討伐戦:PTランキング報酬受け取り



あれ? ここログイン画面だよね? と少し過ったが、あくまでもここは「ゲームへのログイン画面」。

アカウントにはバイザーを付けたときに既にログインされている。


一つ目はとりあえず置いておいて...報酬は先に受け取っておこうかな。

ポップアップをタッチする。内容は?


▽個人ランキング7位報酬

 ・7万セル

 ・1時間経験値増加チケット×3

 ・1次スキル有効化チケット


PTランキング報酬も7位だったので、まったく同じだった。てっきりSPとか貰えると思っていたのだけど、報酬には含まれていなかったようだ。

あー、お金本当に助かる...討伐戦で手に入れたゴブリン素材の売却も含めれば、これで良い布がたくさん買えそうだ。



「問題はこっちね...」



ストーリークエスト「影より出でる」開催について...ね。

前の"見習いを卒業しよう"キャンペーンでは、東の平原で起きたゴブリン大量発生がメインだった。それが進行した結果、最後は魔物討伐戦というイベントによって終結した。

「影より出でる」...今回のこのキャンペーンも裏に何かが隠れてるのかな?

兎にも角にも、まずは説明を読もう。


▽ストーリークエスト「影より出でる」開催について

 2/27 15時~3/5 未定

 ・魔物討伐時の経験値量増加

 ・エリート系魔物の発生

 ・初心者用ダンジョンの生成



「アイちゃん、ストーリークエストって何?」


「はい。ストーリークエストとは、Magiratora(マギラトラ)世界に小さな影響をもたらすイベント群を指します。

世界に大きな影響を及ぼす「ワールドクエスト」とは異なり、そのクエストの進行度によって、その後のMagiratora(マギラトラ)世界に対する影響は左右されません。」


「なるほど、ありがとうね」



つまり、ストーリークエストを達成しようが失敗しようが、大した影響は出ない...ってことか。

察するに、この場合の「その後の小さな影響」にあたるのは「初心者用ダンジョンの生成」かな?



「エリート系魔物か...」



「影」の要素が文章からは読み取れない。

影より出でるのは、このエリート系魔物の事なのかな?



「そのうち分かるか。アイちゃん、ログインお願い」


「了解しました、マリカード。本日も良い冒険を」












「ほう、ゴブリンキングと戦ったのかい...」


「強敵でした」


「そうかい。そりゃ腐っても「(キング)」だからね、弱いわけがないさね」



ログインしてすぐにインベントリ一杯のゴブリン素材をギルドで売り払い、そのまま薬屋「ポアロ」、魔女のクリスのところまで来た。

そこまでの大金にはならなかったが、粒のような「魔石」が大量に手に入ったので、ついでにクリスに聞いてみよう。

薬屋について早々に世間話をしながらちょっと休憩。そろそろ今日のお手伝い内容を貰いたいんだけど...



「......キングねぇ...この辺りじゃ生まれるはずがないんだがね...」


「クリス?」


「うん? 何だい?」


「今日は何をしたらいいですか?」


「あぁ、まだ何も渡してなかったね...

今日もHPポーションをお願いしよう。やり方は覚えているかい?」


「問題なく」



ぼそぼそと考えに耽るクリスを呼び戻し、いつものようにHPポーションの生成を始める。

しばらく無言で手を動かしていたが、ふと今日ここに来た目的を思い出す。

そういえば、聞きたいことがあったんだった。



「そういえば、<魔力操作>のようなスキルって、どのように解放するのでしょうか?」


「ん? アンタ、まだ持ってなかったのかい?」


「え?」



もしかして、既に誰にでも取れるようなお手軽スキルだったのだろうか?

魔法のあるゲームならほぼ間違いなく存在するスキルだし、もしかして見逃してたかな...?

慌てて有効化可能なスキル一覧を探していたら、



「くくっ、冗談さね。アンタ、私が前に言っていたことを覚えているかい?」


「えっと、どの話でしょうか」


「[魔女]と明かせば目の色を変える輩が多くいるって話さね」


「前回言ってましたね」


「[魔女]というのはね、その名があらわす通り「魔を扱う術に長けた女」なのさ。

世の中には色々な能力に秀でた魔女が隠れ住んでるけどね、この近くだと...そこの森か。

そんなあたしら魔女達の根幹には、必ずいくつかのスキルがあるのさ」


「その一つが<魔力操作>ですか?」


「その通り。<魔力操作>、<魔力視>、<魔女魔術>...色々あるうちの一つがそれさ。

そして、このスキルは[魔女]にしか扱えないのさ」


「だから、目の色を変える人が多いと...」


「そういうことさね」



他のVRゲームだと普遍的に存在する<魔力>系のスキル。ゲームによっては魔法使いに必須級と言えるこれらのスキルが[魔女]限定だとするなら、そりゃ集られて当然か...



「あんたももう[魔女]の一人。これらのスキルを覚える条件は整っているよ」


「では、何故私は覚えられないのでしょうか?」


「あたしが教えてないからさ」



教えてくれよ...



「くくくっ、そう睨むんじゃないさね。これはある種、[古い魔女]が新しい[魔女]を認めた証みたいなものさ。

ゴブリンキングの討伐祝いとでもしておこうかね」



クリスは乱雑に置かれていた一枚の何も書かれていない茶色い紙を拾い上げると、しゅしゅっと指でなぞる。すると、じんわりとよく分からない文字列が浮かび上がる。

その紙を手渡してきたので、ありがたく拝借。<鑑定>すると、「<魔力操作>のスクロール」と表示される。スクロール?



「そいつを使いな。アンタくらいの力量があれば、問題なく覚えられるだろうよ」


「ありがとうございます。では早速...」



<魔力操作>のスクロールを手に持ち...ここからどうするんだろう? 使い方が分からない。

クリスを見ると、どこか感慨深げな表情だ。使い方を聞けるような雰囲気じゃないし...


とりあえず文字をなぞる...違う。魔力を通す...通し方が分からない。文字を読む...読めない。

頭の中で「使用する」と念じ続ける...『使う使う使用する使用する使う使う...』


『<魔力操作>のスクロールの使用により、<魔力操作>を解放しました。』


出来た。

スクロールは空気に溶けるように消えていく。



「これで、アンタは[魔女]としてようやく半人前さね」


「ありがとうございます」


「それにしてもアンタ、スクロールの使い方知っていたんだね」


「...ハイ」


「そうかい、良かったよ」



この魔女、分かっててとぼけやがったな...

<魔力視>、<魔女魔術>もついでにくれないかな.......くれなさそうだ。

何はともあれ、<魔力操作>は解放された。早速有効化しよう...消費SPは10。...10!?



「1次スキルじゃないんですねコレ」


「[魔女]のスキルが1次程度なわけないだろう?」


「確かに...」



言われてみればそうか。そんな簡単なスキルなら、[魔女]限定とは言えないだろうし。

なんて考えていると、勝手に鏡魔術が発動する。またか...



『ゴブリンキング討伐おめでとう。鏡を通して僕も見てたよ』


「ミラさん」


「精霊っていうのは、なんでいつも唐突に出てくるのかね...知っているかい? 鏡の」


『気まぐれだからじゃないかい?』



[鏡の精霊]ミラ。CDの裏面のような複雑な輝きを放つ白い髪を揺らし、優男のように微笑む青年。

まぁ、私もそんな色の髪色が混じりましたが。



『おや? マリ、イメチェンでもしたのかい? 良い髪色だね』


「お互いさまで」


『それにしても、まさかゴブリンキングを倒すとはね。君だけじゃなかったにしろ、「(キング)」を屠るに至ると...ふむ?』


「...鏡の、それはレディに対して失礼さね」



話の途中で、ミラは私の胸辺りをみて首をかしげる。何かが腑に落ちなかったのだろうか...

これはぶん殴っても文句言われないのでは?



『...霊術.......込み違いだったか...?...』



ミラがつぶやく。霊術...? <精霊術>のことかな?

何か思うところがあるのだろうか? こいつまだ取ってねぇのか、とかそういう事かな?

んー、直接聞いた方が早いか。



「<精霊術>がどうかしたんですか?」


『え? あぁ、声に出てしまっていたか...いや、特に何でもないんだけど、<精霊術>有効化しないのかな?と思ってね』


「1次スキル有効化のためにSP温存していたので...

というか、そもそも<精霊術>ってどういうスキルなんですか? 仲良くなった精霊を呼び出すとかなら、私ミラしか呼べないんですけど...」


『説明してなかったっけ?』


「一切」


『なるほど、道理で...

<精霊術>というのは、触れた精霊の力の一部を借りて使う魔法のことだね』


「それ、私の「鏡」の魔法と何か違うんですか? これもミラの力を借りているとか聞いた気がしますけど」


『ん? 僕は君に力を少し写したけれど、その後は力のやり取りは行われていないよ。

今はもう、君の「鏡」だ』


「精霊なんてのはそこかしこにいるからね。有効化出来るのなら、取っておいて損はないさね」


「そうなんですか...」



ミラとクリスが大絶賛する<精霊術>。魔物討伐戦で手に入れた「1次スキル有効化チケット」の使いどころではなかろうか?

もう一枚のチケットは、<服飾>の上位スキル用かな。



「では、有効化しておきます」


『優先的にスキルレベル上げてね』


「え? はい」



それからしばらく、他愛もない世間話に花を咲かせる。

鏡を通して色んなところを覗いているミラは、思いのほか博識だった。



「さて、休憩は終わりにして、作業の続きでもしようかね」


『じゃ、僕もお暇するよ』



<錬成>でHPポーションを量産し、渡された量の仕事をこなして薬屋「ポアロ」を出る。

呉服屋で大量の布を買いこみ、フリマへ直行。みんながログインしてくるまで<服飾>頑張ろう。











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<マリカード> ヒューマン ♀ Lv21

 職業:鏡の魔女 SP:20

▼装備

<R> 薄手の黒ローブ 

<R> 見習い魔女の帽子

<R> フリル付き白ワンピース

<R> 薄手の黒ケープ

<HN>オーバーニーソックス

<HN>兎革のローファー

<-->古い心の首飾り


▽有効スキル

 ▽魔法系スキル

  鏡魔術 Lv24 水魔術 Lv10 精霊術 Lv1

  ▽複合魔法

   <水鏡魔法>

 ▽生産系スキル

  <服飾> 解体 Lv19 錬成 Lv12 裁縫 Lv1

 ▽便利系スキル

  夜目 Lv13 察知 Lv7 鑑定 Lv11 ミニマップ表示 Lv3

 ▽パッシブスキル

  物攻微上昇 Lv14 魔攻上昇 Lv5 物防上昇 Lv5 魔防上昇 Lv5 器用上昇 Lv4

  敏捷上昇 Lv4 魔力操作 Lv1



▽称号

 【合鏡(あわせかがみ)の邂逅】

 【Dランク冒険者】

 【悠久の魔女の弟子】

 【魔女】



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◇◆◇ 上位スキルになったもの ◇◆◇


<服飾> → <裁縫>

製作物の品質が良くなる。


<地図> → <ミニマップ表示>

ゲーム内の視界の邪魔にならないところに簡易ミニマップを表示する。



◇◆◇ 今回から非表示になったスキル ◇◆◇


<地図>

<魔攻微上昇>

<魔防微上昇>

<物防微上昇>

<器用微上昇>

<敏捷微上昇>

※レベル最大&上位のスキルを持っているとき、そのスキルは非表示になります。


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