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12 キャンペーンの終わりと新たなイベント





「なんだかんだ、結構狩ったよね」


「折角のキャンペーン期間だったしな。ま、俺らと関係あるのって「ギルド報酬増加」くらいだったが」


「ゲーム序盤は何かと入用にゃし、それだけでもやる意味があるにゃよ

それに、今は「東の魔物増加」も恩恵あるにゃ」


「<追風(テイルウィンド)>、<連射(シュートラッシュ)>。確かに、東には来ないと思ってたんだけどね」


「しっかし、それも含めて敵多すぎねぇか? <庇護(プロテクト)>」


「確かににゃ。<剣撃(スラッシュ)>! ...ゴブリンの沸き数の設定間違ってたとしてもうなずけるレベルにゃ」



2/26の夕方、キャンペーン最終日の夕方。私たちは今、最初の街からずっと東に1時間ほど歩いたところまで遠征してきている。


私がクリスのところでポーションを<錬成>していた一昨日、私以外の3人は生産組のカーネル、義太夫を連れて西の林でレベル上げに付き合ったようだ。

夜も更け、生産組は先に落ちたらしい。その後3人はそのままの足で北の岩場で岩トカゲ狩りをしていたが、転職を挟んだからなのか岩トカゲと戦っても手ごたえを感じなかったようだ。


「これはおかしい」と感じた3人はすぐ掲示板を確認、すると同様の意見と共に解決策も書かれていた。



――転職後はちょっと遠くにいるレベルの高い敵が適正っぽいぞ

――西の奥に行ったけど、めっちゃ狼にたかられて死に戻り。予想だが、前と同じく東→南→西→北の順に適正なんじゃないかと思う



そして昨日、私も含めたいつもの4人で東の平原を進むと、途中から明らかに敵のレベルが上がった。

素手で殴りかかってきた薄緑のクソ雑魚ゴブリンはもうそこにはいない。いたのは錆びた剣や盾を持つ、少し色が濃くなったゴブリンだった。


転職後初戦闘の私と、生産組に付き合ったためPLvはそこまで上がっていない3人。最初は少してこずったが、2日も戦えば慣れた。

レベルも私が19、友人たちが20まで上がり、今では雑談しながらでも戦えるようになった。

ちなみに、確認されていたエリアボスらしき敵は見つけられなかった。



「そういえば、東の森に魔物のリーダー種がいるらしいよ。<鏡片(ブレイクミラー)>」


「それマジか?どこ情報?」


「魔女」


「あぁ、それ確定だわ」


「そのリーダー種がいるから...<風球(ウィンドボール)>! ゴブリンが増えてるってこと?」


「聞いた感じによると、キャンペーンとは違う話が同時進行してる...ような?」


「他のイベントをキャンペーンで隠す...か。ここの運営ならやりかねんかもな」


「<添火(アドファイア)>、<速撃(ラピッドソード)>! そんなことより気づいているかにゃ?」


「何に?ってかそれかっこいいな」


「炎の剣は憧れだよね」


「えへ、かっこいいにゃろ? それよりもあっちにゃ」


「ん? ...なんだあれ」


「うーん...なんていうか、もうアレは"軍勢"だよね」



私たちが近場のゴブリンを叩いていると、遠く地平線に濃い緑の大集団。遠すぎてよく分からないけど、あれは...



「一面全部ゴブリンだよね」






『東の平原:奥地で魔物のスタンピードが発生しました。「最初の街<アイネール>」を目指しています』

『30分後より緊急イベント:魔物討伐戦を開催いたします。参加したいプレイヤーは東の平原に移動し、ウィンドウよりイベント参加を申請してください』

『魔物討伐戦では個人、PTごとに魔物のキル数や後方支援等を点数化し、獲得点数によってランキングを作成します』

『ランキング順位によって豪華景品が獲得できます。キャンペーンで鍛えた能力を存分に発揮して、ランキング上位を目指しましょう』





「アレだろうね」


「アレだろうなぁ」


「とりあえず戻って参加申請するにゃ。アレにいきなり突っ込むのはアホにゃ」


「これがさっき言ってた、キャンペーンで隠されてたイベントってところか?」


「そうだと思うけど...ふふ、案外まだいくつか隠れてたりしてね」


「楽しけりゃ何でもいいさ」



それから15分ほどかけて奥地から東の平原に戻る。そこには初日のオープニングイベントに引けを取らないレベルの人だかり。唯一違うのは、皆それなりにレベルを上げ、装備を整えていることだろうか。

両手に剣を持つ二刀流の青年や、同じ青銅の鎧で揃えた騎士っぽい6人組、まるで主人公のようなイケメンとその取り巻き女と、個性豊かな様々な人がいる。

あそこにいる遠くから集団を眺めている強キャラ感の強い黒ローブ3人組に至っては



「へぇ...中々見どころのあるやつがいるな...」


「お前がそんなことを言うとは、意外だな」


「ふっ...俺とて感じるものは感じるさ」



なんて会話が聞こえてくるようだ。



平原エリアに足を踏み入れると、クエスト画面がポップアップする。参加するか聞かれるが、ここは迷わず「はい」だ。


――――――――――――――――――――――――――――

参加を受け付けました。東の平原エリアで待機してください。


      開始まで残り『13:09』

――――――――――――――――――――――――――――


残り時間がちかちかと減っている。あと13分ほどで始まるようだ。

その間に「魔物討伐戦」についての説明文を読んでおこう。



▽「緊急イベント:魔物討伐戦」について

 魔物の大量発生に応じて、ゲーム内で突発的に開催されるイベントです。 

 キルした魔物の数や種類、また消耗品の供給などでポイントを獲得できます。

 魔物討伐戦では、多数の魔物を討伐することで強大な力を持つリーダー種が登場します。

 このリーダー種の討伐が魔物討伐戦の最終目標となります。



クリスが言っていた通り、やはりリーダー種が出てくるようだ。こいつの討伐ポイントが一番大きいのだろう。

消耗品の供給でもポイントが得られる...HPポーション自分で作れるようになれたら、大きなアドバンテージになりそうだ。まだクリスの黒板がないと作れないから、早めに<錬成>を上げるべきかな。


ふと周りを見てみると、クロエは準備運動、グレンは大盾の握りを確かめ、ショーイチは虚空を見つめて何かを考えている。他のプレイヤーも似たり寄ったりだ。



「――俺まだ転職してないんだけど、平原奥地のスタンピード相手に戦えるんだろうか」


「さすがにそこまで鬼じゃないんじゃないか? 最初のイベントだし、集合場所も初期エリアだしな」


「だといいんだけど...とりあえずいい機会だし、このイベント終わったら武器と防具新調しようかな」



なんて会話が耳に入る。確かにいい機会かもしれない。私もイベントが終わったら着替えようかな...

髪も色が変わったし、新しく作る服もそれに合わせてみようかな?

あそこにいる赤い髪の少女が着ているような、少しゴスロリな感じのシャツワンピースもいいかもしれない...まぁ、間違いなく戦場に着てくるような服ではないけれど。



「マリ、最初どう動こうか」


「最初?」


「そ、ランキング上位を狙うなら、PTで計画的に動いた方がいいと思ってね」


「あちしは全部ショーイチに任したにゃ」


「俺も戦えりゃそれでいいわ」


「...っていう感じでね。相談に乗ってくれない?」


「分かった。まずどういう風に動こうか?」


「えっとね、まず此処の地形なんだけど―――」











――――――――――――――――――――――――――――

参加を受け付けました。東の平原エリアで待機してください。


      開始まで残り『00:31』

――――――――――――――――――――――――――――



計画を立てていたら、いつの間にやら残り30秒になっていたようだ。

周りのプレイヤーもざわついてきた。



「さ、レベル上げの成果を存分に発揮しようぜ!」


「5万人いるけど...せめてPTでトップ10くらいには入りたいよね」



トップ10は厳しい気がするけど...



「いけるかな?」


「多分行けるにゃろ。フルパーティじゃにゃいけど、あちしらのレベルは中々トップクラスにゃよ」


「それに固有(ユニーク)持ちもいるからね。まずは予定通りに動こう!」


「さ、時間だ!魔物は皆殺しだァ!!」



――――――――――――――――――――――――――――


      魔物討伐戦 GAME START   

      

――――――――――――――――――――――――――――




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