プロローグ
「ん…。」
目を覚ますと、部屋の中に朝日が差し込んでいる。
ベッドから抜け出し窓を開けると、澄み渡った青空が広がっている。
「おーい!ルカくーん!」
声のした方を見下ろすと、赤い髪をした少女がこちらに手を振っている。
「おはようリアーナ!」
「もう朝ごはん出来てるよー!早くおいでー!」
「わ、寝坊しちゃったんだ…。すぐ行くー!」
窓を閉めると、素早く着ていた上着を脱ぎ、椅子の背にかけた。タンスの引き出しから、綺麗に畳まれた新しいシャツを取り出して身にまとい、扉の外へ飛び出した。
左右に扉がいくつもある廊下を進み、階段を駆け下りる。小走りでさらに奥へと進んでいくと、他の扉とは違う作りの大きめの扉を両手で押し開いた。
扉の外は建物の裏手にある庭で、沢山の木々や草花が咲いている広い空間だった。その中央に設置してある細長いテーブルには、4人分の料理が用意されている。
「ルカくんおはよう。今、スープ持ってくるわね。」
「シェリアさん…寝坊しちゃってごめんなさい…。」
栗色の優しい色合いをしている彼女の長い髪が、心地よく吹いている風でふわふわとなびいている。
「そんなことないわよ~。今日は何故かみんな早起きしちゃっただけなの。」
ーゴーン…ゴーン…
風に流され、離れた所から街の鐘の音が聞こえてきた。
「あ、朝の鐘の音…。」
「ルカくん。立ってないで座ったら?」
同じ栗色の髪をしている青年が、こちらを見て微笑みかけた。
「あ、はい…!クラーレさん、それ何ですか?」
「依頼書だよ。ポストに届いてたんだ。」
「もー。ルカくん!クラーレさんじゃなくて、マスターって呼ばなきゃ~。」
「そ、そうだったね…。」
「僕はどっちでも構わないよ。好きなように呼んでくれて大丈夫だからね?」
全員の前に料理が置かれ、それぞれの席につくと手を合わせ目を閉じた。
「ミラ様に感謝して、頂きます。」
「「頂きます。」」
こうして新しい1日が始まるのである。