マヌカハニーとコーヒー
ドレミファソラシドのママは源氏名をレミと名乗っていました
お店の名前から取ったのかレミーマルタンから取ったのかはっきりしません
ドレミファソラシドは一番新しく開いたおネエ通りでは一番大きなお店です
お店は鉄筋コンクリートの二階建てでした
一階がお店で二階にママと3人居る従業員の一人が住み込んでいました
住み込んでいるおネエはカレンちゃんと言います
カレンちゃんは短い髪をきれいな黄色に染めた小柄でスタイルの良い若いおネエでした
レミママの隣の部屋に住んでました
ママが住んでいる部屋のそうじも毎日でした
カレンちゃんはとても愛嬌があってやさしい働き者のおネエでした
カレンちゃんはレミママが起きるまでにコーヒーを入れます
フラスコに水を入れアルコールランプに火を点けて沸騰するのを待ってました
コーヒー粉を入れてフラスコからお湯がロートにあがってくるのを良く見てました
濃い目のコーヒーが好きなママのために少し長めにアルコールランプにかけました
火を消してフラスコに降りてくるコーヒーを待ってます
低血圧で冷え性のママは朝がとても苦手でした
やっとコーヒーの香りに誘われておきて来ました
カレンちゃんに聞こえるか聞こえない位小さな声であいさつをしました
レミママ
お〜は〜よ〜う
カレンちゃん
おはようございます
ゆっくり言うとスローモーションでコーヒーを入れているキッチンの何時もの椅子に座りました
レミママ
どっ〜こい〜し〜よう〜
同時にカレンちゃんが入れたコーヒーをステキなコーヒーカップで飲み始めます
ステキなコーヒーカップはお店の旅行で軽沢に行ったとき買いました
七月二十日位から八月の終わりまでお店を開いている伊万里焼のお店でした
染付けで青彩菊絵のステキなコーヒーカップでした
レミママは起きると必ずカレンちゃんが入れたコーヒーを飲みます
それと一枚の厚めのトーストにマヌカハニーを塗って食べるのが日課になってました
入れたてのコーヒーを一口飲むとまだスローモーションのレミママはいつも同じ事を言いました
レミママ
いつ飲んでも美味しい おコーシーね 今日は何曜日なの?
カレンちゃん
火曜日よ
カレンちゃんは今日もやさしく答えました
それを聞いてからママはマヌカハニーをたっぷりぬったトーストを食べます
レミママ
マ フ カ ハヌーは森の香りがするのよ〜
鼻の穴を大きく膨らませていつも同じ一日がコーヒーと森の香りから始まりました
カレンちゃんは古いソニーのパソコンを使ってインターネットなどで時々買い物をしてました
ソニーのパソコンが最近どうもご機嫌が良くありません
レミママが毎日起きたてに飲むコーヒー豆も土居珈琲ライフ贅沢倶楽部に注文してました
今回も甘みが有り苦味が程よくとても香りがいいブラジル産のアマレロです
一ヶ月に五回ほどインターネットで注文を出すと焙煎したてで送ってくれました
コーヒーに煩いママもすごく気に入ってました
ドレミファソラシドのレミママは色んなことに拘っているので少し生意気な所があります
おネエ通りにお店を開いて間もない頃少し酔っ払ったお客とケンカしました
ケンカの理由はよく分かりませんでした
低血圧で冷え性のレミママが着ているロングドレスをかなりたくし上げて黄ばんだ声を上げました
レミママ
何!もう一度言ってごらん!
カレンちゃんと他の従業員 鈴子ネエさん 夕子ネエさんは一斉にママの方を振り返りました
レミママのたくし上げたロングドレスを三人で同時に指差しました
指差されてロングドレスをたくし上げ過ぎたのに気が付きました
レミママ
やだ〜ん うっふ〜ん 見たわね〜
平然とロングドレスを元に戻しました
一応ケンカは収まりました
次の日 ドレミファソラシドのお店が開くとすぐに葵のママがもっこり入って来ました
ケンカの話は葵のママの耳に入っていました
レミママと話をしていた葵のママがわりかし大きな声でレミママに言いました
葵のママ
まだ青いわね!ケツをお見せ
脹れっ面をしてロングドレスの裾をわざとまくって見せます
葵のママは出したケツをペタンと叩きました
葵のママ
やっぱり青いじゃないの!それに優しいシッポだわね〜心根は優しいのね〜
レミママ
え〜シッポって?
葵のママ
人間はいろんなシッポを持っているのよ
レミママ
いやだ!シッポが!
レミママは急いで降ろしたロングドレスの上から撫でるように押さえつけてました
葵のママ
レミママはウサギのシッポのように可愛かったわ!
レミママ
よかったわ!可愛いシッポで!
安心しました
葵のママ
人間はシッポを引きずって生きているのよ 本人が気付かないだけなの・
ドレミファソラシドを普通の顔で平然と後にしました
それ以来レミママも表面上は何もなかったように振舞ってました
おネエ通りでは情報はいち早く葵のママの耳に入ります