表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/62

冬瓜(とうがん)とバカラのグラス

紫音ママはきどった手つきで引き出しをあけました


再びきどった手つきで真ん中に穴の開いたスプーンを取り出します


カウンターの右の奥に座った初老の紳士はそれを静かに見てました


アイスピックで大きめの氷をアブサングラスに入る大きさに割って入れました


ミネラルウオーターのふたを開けて氷の入ったアブサングラスにほんの少しだけ入れました


アブサンのボトルの横に滑り込ませておいた真ん中に穴の空いたスプーンを右手で持ちました


角砂糖を一個スプーンの上に置いて角砂糖を一つだけ置いたスプーンを左手に持ち替えました


片手でアブサンのボトルを持ち親指でボトルの(ふた)をクルクルクルと三回ほど回して開けました


角砂糖の入ったスプーンの上からゆっくりと少しずつアブサンを角砂糖の上にたらしていきます


グリーン色のアブサンはスプーンの真ん中の穴を通って氷に触れながら落ちていきました


淡く美しく白濁はくだくしてアブサングラスに流れていくのが見えました


初老の紳士はママの美しく流れるような手つきを見ていました


淡く白濁したアブサンが流れ落ちていきました


初老の紳士はしり上がりに低くつぶやきました


ウィ トレビアン!


お店の美人の愛ちゃんはまるで映画のクライマックスのワンシーンを見ているようでした


身動き一つせずその光景を見ていました


愛ちゃん

「ステキ!」


声をあげてわりと大きな音の拍手をしました


初老の紳士はわりと大きな音の拍手はくしゅをしました


髪の長いやや美人のチャイナ服の愛ちゃんを見てニコッとやさしく微笑ほほえみました


初老の紳士

ルーシアからィヨォロッパ経由で昨日の朝 日本に着きました


愛ちゃんのほうを向いて普通の声で話しました


しかし発音が素晴らしく愛ちゃんは何のことか分かりません


紫音ママの方を向いて困ったような何とも言えない顔をしてました


ママは愛ちゃんの目を見ておネエ同士の阿吽あんうんの呼吸です


紫音ママ

ロシアからヨーロッパ経由で・


愛ちゃんに聞こえるように大きな声で言葉をなぞるように伝えました


紫音ママは初老の紳士の顔を見ました


初老の紳士はやさしい目で愛ちゃんを見てました


初老の紳士のお通しはアブサンに合わせて上質な馬肉のジャーキーカルパスを出しました


紫のお店では今夜のメインお通しは冬瓜の含め煮でした


冬瓜の含め煮は冬瓜の皮を薄くむいて冬瓜に塩をこすり付けてゆで下ごしらえをして有りました


日高の肉の厚い昆布こんぶと上等な本節(ほんぶし)でだしをとります


下ごしらえをした冬瓜をだし汁で時間を掛けて煮込んで有りました


煮込んだ後ゆっくり冷やして味を含ませた冬瓜でした


お通しのもう一品は絹ごし豆腐の冷奴ひややっこでした


京成線お花茶屋駅から歩いて八分ほどのところに有る埼玉屋本店の絹ごし豆腐でした


それに本わさびがそえられてありました


本わさびは東海道新幹線静岡駅から車で四十分行った有東木うとうぎの里で取れた本わさびでした


有東木の里で取れた本わさびをサメ皮のおろがねで卸して絹ごし豆腐にそえて出しました


紫音ママは月に一度は葛飾宝町の気合い豆腐で有名な埼玉屋本店に絹ごし豆腐を買うために行ってます


京成線のお花畑駅の一つ前の堀切菖蒲園駅で下りて遠回りをして埼玉屋本店に行きました


愛ちゃん

京成線の堀切菖蒲園駅よりもう一つ先のお花茶屋駅の方が近いのに?


紫音ママ

そうね・・


素っ気なく全く意に関しない返事をしました


ママは料理がとても上手で材料にもこだわっています


何を作っても美味しい味と素敵な器に盛り付けることを大切にしてました


初老の紳士はジャーキーカルパスを食べるとペルノアブサンをおいしそうに飲み終わります


初老の紳士

ひやをお願いします


低い声でていねいに愛ちゃんに言いました


愛ちゃんはバカラのグラスに氷を入れたミネラルウオーターを出しました


初老の紳士はグラスを左手で持ちクルッとやさしく回しました


バカラのグラスに氷が当たって チリ〜ン すんだ音をたてました


いかにも 良いグラス と言っているように聞こえて来ました


グラスのミネラルウオーターを美味しそうに一口飲みました


待っていたかのようにママが本日もう一品のお通し冬瓜の含め煮をすすめました


冬瓜の含め煮は程よく冷えてました


紫音ママ

どうぞ めし上がれ!


天削てんそげの割り箸をえて初老の紳士の前のカウンターに置きました


それを見た初老の紳士は天削の割り箸を持ち軽く割って程よく冷えた冬瓜の含み煮に箸を入れました


三分の一ほどに切って口に含みます


初老の紳士

う----む・・


紫音ママの目を見つめていました


ママは日高の昆布こんぶと上等な本節でだしを取り ていねいに作ったことをと話しました


紫音ママ

たっぷりの水を入れて下ゆでする前にうすく皮をいて塩をりつけることが大事なことなの


大事そうに話すママでした


初老の紳士うんうんと首を立てにふりました


初老の紳士

「手が込んでいるものは少なくなりましたね!」


見事なまでに鮮やかな緑色をした冬瓜の含め煮を見てました


初老の紳士

こだわっているね


冬瓜の含み煮をとても美味しそうに残さず食べて満足げに帰って行きました


真っ白な麻のスーツの上下を品良く着た初老の紳士はドレミファソラシドのママの知り合いでした


知り合いと言う事は後になって分かりました


紫のお店にどうして行ったのか?ドレミファソラシドのママも分かりませんでした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ