お稲荷さんとご愁傷様(しゅうしょうさま)
葵のママが路地の古い話を持ち出しました
葵のママ
お稲荷さんが在ったのよ
小町ママ
江戸末期ぐらいなの
たずねました
葵のママ
そんなもんかねェ
普通に答えました
葵のママ
ここにもう一度お狐さんに来てもらおうよ
とても良い話をしたようにごきげんよく話しました
葵のママに小町ママがたずねます
小町ママ
どこから来てもらうのよ
葵のママ
稲荷神社の総元締めの伏見稲荷大社が一番良いの
小町ママ
勉強になったわ
葵のママ
だけど京都は遠いからお狐さまも大変だから豊川稲荷でどうかしら
来ていただくお狐様をきずかいました
お狐さんを呼んできてお稲荷さんを作る話はおネエ通りにはまたたく間に広がりました
ペガサスのママがでしゃばって来るはずなのにお狐さんの話はでしゃばって来ません
ある日 葵のママがお茶を引いている晩のことでした
ペガサスのママがほろ酔いで葵のお店に立ち寄りました
葵のママ
あら 珍しく酔ってるの
ペガサスのママ
お狐さんに来てもらうのはお願いだからやめてほしいのよ
涙ぐみながら申し出がありました
ほろ酔い加減のペガサスのママが涙ぐんで普通ではないので理由を聞いてみました
田舎に帰ったときの話をしました
痩せて神経質そうで目が細い川向こうのさっちゃんの話を涙ぐんでしました
終わると涙ぐんでいた目からポロ・ポロポロ・ポ・不規則に涙を流が落ちてきました
でしゃばりのママらしくありません
葵のママ
怖い思いをしたのね
でしゃばりのママを慰めました
ペガサスのママ
お稲荷さんが路地に出来たらこわいわ
葵のママ
どうしたの
ペガサスのママ
同級生のさっちゃんに毎日見られているようで我慢出来ないの遺書を書いてあるのロープは貸してもらえるかしら
今度は葵のママを強迫しました
葵のママ
かっぱ橋本通り商店街に行くと何でも売ってるわ
ペガサスのママ
かっぱ橋ね
葵のママ
今度かっぱ橋行くときに丈夫なロープを買って来てあげるからそれまで死ぬんじゃないよ
力強くペガサスのママを励ましました
ペガサスのママはさっちゃんのことはものすごく嫌いです
うで玉子は好きです
次の日の午後目をはらしたでしゃばりのペガサスのママがおネエ通りを歩いていました
カモメのトモちゃんが前の方から急ぎ足で歩いて来ました
トモちゃんは一度あいさつをして通り過ぎました
もう一度わざわざ後ずさりで戻って来ました
ペガサスのママの顔を覗き込みました
トモちゃん
ママどうしたの
目がはれているママを見逃さないで心配して後ずさりで来てくれました
ペガサスのママ
昨日故郷の母が亡くなったの悲しくて・
確かペガサスのママの故郷の母親はすでに三回亡くなってました
今回お亡くなりになるのは四回目です
トモちゃん
ご愁傷様力を落とさないで頑張るのよ
四回目のお悔やみを述べて急ぎ足で大通りの方にツーツツーと歩いていきました
お稲荷さんをつれて来ることはミコちゃんがやや反対でペガサスのママが激しく反対でした
その他は無口でした
結局善なるかほる子がお祈りをすることになりました
かほる子
反対した人も反対しなかった人も等しく幸せあれ
葵のママ
終わりね
かほる子
これからよ 話しかけないで
葵のママ
ああ あれ これから
かほる子
丐丱〜久之乎亶仍俛〜月俤冴冉冀! 人土地木花兮冢剪 来万物幸〜天地乎亶仍俛〜
葵のママ
これでよかったわ
かほる子
まだよ えっーい!やつっ!ゴホン ゴホン!あ あら!も もう一度最初からね
葵のママ
かほる子のお祈りは充分ご利益があるから一回で大丈夫だよ〜う
呪文を唱えおネエ通りで出席したおネエさん方全員で塩をまいて終わりになりました
おネエ通りでは誰が何回亡くなろうが ご愁傷様 頑張るのよ と声をかけます
香典は出さないことがおネエ通りの決め事でした