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アネモネと歯ブラシ

マルちゃんが静かに飲んで静かに帰ったお客の話をしました


マルちゃん

ちょっといい男だったわね〜また来るかしら?


未練みれんが有る様子です


ミーコさん

マルちゃん好みね!


マルちゃん

でも紫音ママもいい男ね〜って


口をとがらせて言いました 


小町ママ

紫音ママの得意な営業用なのよ!


小町ママ ミーコさん マルちゃんは飲み残しのブラッディマリーを美味しそうに飲みました


林檎の歌のお店では寺尾聡のルビーの指輪が静かに流れてました


マルちゃんが小町ママに叫ぶように美空ひばりの“悲しい酒“を小町ママにリクエストしました


マルちゃん

ひばりよ ひばり!


マルちゃんは美空ひばりが大好きです


悲しい酒 が流れると一緒に口ずさんでました


歌が終わると大粒の涙を・・ぼろぼろ流しました


そして大きなハンカチーフで涙をふきながら詰まった鼻声で言うのは何時ものことでした


マルちゃん

本当によかったわ やっぱり!ひばり!ねっ


マルちゃんは新宿コマ劇場のひばりの舞台はほとんど見に行ってました


特に美空ひばりの舞台物では“女の花道“が好きでした


コマ劇場で上演されている間はいつも出来るだけ厚化粧をして行きます


厚化粧で横浜の元町4丁目のキタムラで買った濃い黄色のキレイなバッグを持って行きました


美空ひばりの女の花道 を四回は必ず見に行ってました


マルちゃんは!美空ひばり命!です


美空ひばりが亡くなった時は一ヶ月ほど仕事に行くことが出来ませんでした


お店を休んでいるマルちゃんを小町ママが厚化粧をしてお見舞いに出かけることにしました


なにを持っていくか考えました


自宅にあるアネモネを持っていくことに決めました


小町ママはコロナリア・ド・カーンという種類の鉢植はちうえのアネモネをワザワザ切って持って行きました


泣いて目がはれて食事も出来ないほど・・傷心しきつってました 


体重も・・十二キロ位軽くなったように見えるマルちゃんが寝たきりで居ました


小町ママ

マルちゃん・・大丈夫?


心配そうに声を掛けました


マルちゃんは小町ママの顔を涙いっぱいためて見つめました


マルちゃん

ひばりがね・美空ひばりが・・お〜い〜 お〜い〜おい


大粒の涙を流しママに抱きついてきました


そしていつまでも泣き続けました


マルちゃんは林檎の歌のお店に近い新しいアパートに住んでいます


一ヶ月後マルちゃんが林檎の歌のお店に何事もなかったように出て来ました


やや太った幽霊が出た!


見間違えました・・


しかし お店に出て来たマルちゃんは心配なくらい食べ続けました


今度は一ヶ月も経たないうちに元の体重をはるかに超えてしまいました


よりいっそう首がみじかくなったように見えました


太ったことをマルちゃんは別に気にしているようにはまったく見えません


食べ物に特に興味が無いのでだいたいは何でも美味しくたくさん食べました


天丼だけは秋葉原のあきはばらに有る“天丼てんや”の天丼は 良く食べに行ってました


2回目にリクエストした美空ひばりの悲しい酒はなかなかかりません


マルちゃんはピンクに赤のチェック柄の大きなハンカチを握り締めてイライラしていました


マルちゃん

どうしたのかしら?


そんな時お店のドアが開きスナックのママがもっこり入って来ました


小町ママ

あら〜おはようございます


ややていねいにあいさつをしました


ミーコさん

お早うございます


入って来たママにかなり丁重ていちょうにあいさつをしました


入ってきたママは漢字であおいという名前のお店のママでした


小町ママが林檎の歌のお店を葵のママに紹介されて開店するかなり前から有りました


葵のママに聞くと源氏名はあるようです


幸子よ!と言う時も君江やお春などと言う時もありました


葵のママ

マリリンよ!モンローなの!違う違う!ほうれんそうよ!本当はね♪レモンって言うの♪


リズムをつけて言うこともありました


聞くたびに違うので葵のママと呼んでました


葵のママはお店の二階に住んでいました


葵のママの髪は緑色と薄黄色に染めていました


ごきげんが悪い時!啖呵たんかを切ります


葵のママ

戦前からおネエやってんだよ!


最近は啖呵も昔ほど力強さが無くなりました


葵のママはかなりの歳になるようです


ある時お客が年齢を聞きました


お客

ママ 何歳になったの? 


葵のママ

あら恥ずかしい・・女性に歳を聞くなんて!二十歳(はたち)で処女よ・


可愛らしく答えると平然としていました


おネエ通りではそれ以来 二十歳で処女 で通していました


葵のママに歳を聞いた客は(ひど)い目に合わされました


それなのに葵のお店に今もひんぱんに来ます


それ以来歳の話しだけはしなくなりました


歳を聞いたお客を珍しくほめました


葵のママ

シッポ巻いて逃げる男じゃないと思ったわよ でもやさしい男よ


葵のママは歳を取っているのにも・・かかわらず入れ歯は一本もありません


全部自分の歯だと言いました


不思議に思った紫音ママが葵のママに聞いてみました


葵のママ

これでみがいているのよ


おもむろに直径六センチ位の円筒形をした岩塩を見せました


葵のママは自分が使っている歯ブラシまでワザワザ持ってきました


使っている歯ブラシはしんかんせんの絵が描いてあるエビスというメーカーの子供用でした


歯ブラシは三本セットで300円のものを沢山購入して有りました


紫音ママ

しんかんせんの歯ブラシ どこで買ったの?


可愛かわいい歯ブラシをみた紫音ママが質問をしました


葵のママ

かっぱ橋本通り商店街の方のお店で買ったのよ


紫音ママ

なんと言うお店?


葵のママ

お店の名前は忘れたわ!私がじきじきに行かないと分からないの


どこで買ったか説明できない葵のママでした


紫音ママが葵のママがすこぶるご機嫌がよかったのをみて聞いてみました


紫音ママ

岩塩はどうして手に入れたの?


葵のママ

いただき物なのよ!


得意とくいそうに答えました 


紫音ママも割かし・・しつこく葵のママに聞きました


紫音ママ

誰からいただいたの?


葵のママは答えるまで少し間が開きました


葵のママ

それが?思い出さないのよぉ〜


ぼそっと言いました


紫音ママ

あらららら・・


葵のママ

私はね いろんな人からいろんなプレゼントをもらうから覚えていられないの


紫音ママ

そうよね〜私も真っ赤な大きいサファイアいただいたの誰だったかしら?


葵のママ

お返しがたいへんだわね


紫音ママ

あら?確か!たい焼きを5個もお返ししたわ


お返しは覚えていた紫音ママでした


葵のママは本当に誰からもらったのか忘れてました


紫音ママは帰りに林檎の歌に寄っていきます


紫音ママ

葵のババアはお迎えが近そうだね


別に心配しているふうではなく言いました


言い終わると小町ママが一昔前の布製のフィルターで入れたコーヒーを出してくれました


普通の白いコーヒー茶碗ちゃわんに見るからに濃いコーヒーが入っています


紫音ママは普通の白いコーヒー茶碗に入った濃いコーヒーをジィーとみていました


おもむろにコーヒー茶碗をつかむとイッキに飲み干しました


紫音ママ

ごちそうさま!


ウチマタで小走りに帰って行きました

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