教育勅語と土足厳禁
羽織袴の葵のママがやおら立ち上がりました
おネエさん方が座っている反対の方角に向かって深々と頭を下げて向き直りました
チン オモウフニ ワガ コウソ コウソウ クニヲ ハズムルコト
葵のママの声がお店の中に響きました
出席したおネエさん方は思わず背筋をピンと伸ばして座りなおしをしました
ペトロフのピアノの上にほほづえをついていたリリーさんとあんこさんそしてデモちゃんも見て座りなおしをします
カウンターの席に座っていたカレンちゃんは思わず立ち上がって起立をしたままでした
いっきに朗々(ろうろう)と教育勅語の奉読が終わりました
出席したおネエさん方全員が誰からともなく一斉に拍手が起こりしばらく終わりませんでした
葵のママはそれを制するように両手で押さえるようなしぐさをしました
静かになった所で葵のママが言いました
葵のママ
今日はおネエ様方ご苦労様ですね
集まったおネエさん全員に深くていねいに頭を下げました
立ち上がった葵のママの足元を隣に座っていたリリーさんが何気なく見ました
葵のママはゾウリをはいています
あまり大きくない声でリリーさんが葵のママに言いました
リリーさん
ママ ママ
リリーさんは足元を指差しました
出席しているお姐さん達が気付いていっせいにペトロフのピアノの下をのぞきました
再び元に戻ると全員で葵のママを指差しました
おネエさん全員
ママ 土足厳禁
思わずハモりました
葵のママは自分の足元を見つめました
葵のママ
おや そうなの
普通に言い終わるとお店のドアを開けて外に出て行きました
しばらくすると又戻ってきました
それを見ていたカレンちゃんが葵のママに伝えました
カレンちゃん
ママ入り口にゲタ箱があったでしょ そこでいいのよ!私が入れて置くから
優しく葵のママに言いました
葵のママ」
いいのよ しばらく はいてないからほして置くのよ
カレンちゃんの申し出を断りました
小町ママ
誰かに持っていかれたらどうするの 素晴らしいゾウリでしょ
小町ママがつけくえました
葵のママ
な~に 大した値段の物じゃないよ
それから考えるように言いました
葵のママ
三万七千円だったかな~安物よ
小町ママに向って答えました
葵のママのはいてきたゾウリのはなおは白の牛皮でした
台の表は藤 裏は本皮仕立ての 素晴らしい物でだいぶ前に解説されていました
小町ママ
良い物よ!
説明しました
するとペガサスのでしゃばりのママが自慢します






