ボンボンキャップとママドール
おネエ大募集の後から出来たもう一軒はポン太のお店の隣でした
クイーンのママは源氏名をデモちゃんと付けました
源氏名は特に意味は無いようです
確かに美しくスタイルもよくニューハーフ系でした
おネエ通りでは目新しい存在でした
当然おネエですといわれても分からない位ぜんぜんおネエになどに見えません
幕張メッセで開かれるイベントの面接に行きました
まったく疑われませんでした
デモちゃんはもし面接が受かったらどうしようか考えてました
期待と不思議な気持ちで発表を待ちました
面接は受かりませんでした
デモちゃんの出身は東京です
しかし人がこんなに多い都会でもに同級生に会うことがありました
お洒落でヒカリ物が大好きなデモちゃんはデパートの宝石貴金属売り場を歩いてました
向かい側からジッーとデモちゃんを見つめて歩み寄ってくる同級生と出くわしました
同級生
よお〜やっぱり定夫君か
話しかけてきました
デモちゃん
おう 久しぶり
返事をしました
同じ貴金属売り場に居たいかにも金持ち風の背の低いおば様がいました
太目の指に大きなダイアモンドらしい立て爪の指輪をしてました
太めの首に犬の首輪と見間違わんばかりのこれも多分18金のネックレスをしてました
手首から腕まで同じ太さの手首らしい場所にカルチエの時計が輝いてました
キンキラキンのおば様はデモちゃんを天然記念物でも見ている様子でした
デモちゃんはおばさんの足元が見えました
ヒールがすごく細くて高い白いエナメルのハイヒールをはいてました
デモちゃんはゆくりとキンキラキンのおばさんに近づいて優しくささやきました
デモちゃん
おば様何か御用でも
すご〜くていねいにゆっくりお嬢様風な話し方でたずねてみました
キンキラキンキラのおば様
ん・・ん・ん?
首をかしげてあたりをぎょろりと見渡しました
すぐに何も言わずに少し早足で遠ざかって行きました
デモちゃん
あっかんべぇ〜
その場でクルリと一周回ってキンキラキンのおば様を見ました
カッ〜ンカッ〜ン ハイヒールの音だけが貴金属売り場に響いてました
それを見ていた貴金属売り場の色白のいくらか美しい女性が下を向いて笑いをこらえてました
デモちゃん
こんにちわ〜
普通に声をかけると貴金属売り場の色白のいくらか美しい女性が顔を上げました
目には涙がいっぱいたまって笑い涙がこぼれてました
デパートの貴金属売り場の女性はすでに知り合いでした
クレジットカードでデモちゃんのことはおネエだと知っています
最初は貴金属売り場の女性にはデモちゃんの細い指を見て女性だと思われました
若くて美しいデモちゃんは姉が三人いました
デモちゃんは一番下でした
一番上の姉は結婚した相手の都合で関西の方に家を建て住んでました
両親も健在です
デモちゃんのことはおネエという事も分かってました
決して賛成をしているわけではなく表立って反対をしないだけでした
一番歳の近い姉はデモちゃんと美しさを競ってました
自分のほうが綺麗だとデモちゃんの同級生に言いふらします
姉の名前は貴美子と言いました
デモちゃん
ふん 貴美ちゃんはブスよ 鼻が上を向いているもの
自分のほうが美しい事を強調します
姉の貴美ちゃんがクラウンにうさぎの毛がついたボンボンキャップを買ってきました
可愛らしいキャップでした
デモちゃん
貴美ちゃんが帽子をかぶると豚がボンボンつけているようね
言ったとたんに姉の貴美ちゃんはものすごく怒りました
そしてボンボンキャップをデモちゃんに投げつけてきました
デモちゃん
「貴美ちゃんはかわいそう 父似だから私は母似だから美しいのよ」
貴美ちゃん
デモちゃんはブスよ
デモちゃん
貴美ちゃんほどではないわ 今度豚でも似合う帽子プレゼントするわね
ボンボンキャップを持って逃げ帰ってきました
貴美ちゃんはわざわざ玄関まで追いかけて来ました
貴美ちゃん
もう帰ってこないで〜今度来たらおとうさんにいいつけてやる
大騒ぎをしました
デモちゃん
貴美ちゃんは大きい口を空けて大騒ぎするから余計にブスに見えるのよ
デモちゃんは後を振り返りました
デモちゃん
あかんべぇ〜
貴美ちゃんが大きな口を空けてまだ騒いでました
時々実家に帰るデモちゃんはそのままの姿で実家に帰ります
周りの人は全部知っていてもワルガキだったデモちゃんになにも言う人は居ません
きっと居ないところでは陰口言われているだろう位はデモちゃんも知ってました
元々反省する気持ちも後悔する気持も懺悔する気もまったくありません
人が何を言おうがぜんぜん意に関しないクイーンのお店の若く美しいデモちゃんでした
葵のお店に挨拶に行く事を隣のポンちゃんから助言されました
ポンちゃん
ちょいと 葵のお店にご挨拶済んだの
デモちゃん
まだよ
ポンちゃん
戦前からおネエらしいわよ
デモちゃん
ひえー な何歳になるの
ポンちゃん
ダメよ 歳なんか聞いたら
デモちゃん
う〜ん
あいさつに行くことにしました
デモちゃんは葵のママを訪ねるのに手土産を考えてました
実家に寄ったとき父親が持たせてくれた菓子折りがあることを思い出しました
甘いものが好きではないデモちゃんは袋に入れたままだった菓子折りを取り出してみました
ままどおる と書いてある箱が出てきました
賞味期限8日間と書いてあったので確認しました
まだ賞味期限切れまでには2日ほどあります
ままどおる を持って葵のお店を訪ねました