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かけ落ちとメイク

ペガサスのお店の真正面にソロモンの宝というお店がありました


ソロモンの宝にはおネエ通りで一番若く美人だと評判のママがいました


本当に美しく出かけるときも帽子をかぶり誰もが振り向くような美女でした


弘田三枝子に良く似たママで源氏名は三枝子です


ミコちゃんと呼ばれてました


ミコちゃんは19歳の時に普通の2歳年上の女性とかけ落ちをして東京に来ました


男の頃のミコちゃんの名前は 源太 女性の名前は 初江 と言いました


ミコちゃんは男にしても素晴らしくいい男の部類に入りました


なぜ普通で二歳年上の女性とかけ落ちをしなければならなかったのか自分でも分りません


愛のなせるわざと考えてます


二人で東京に来てからは仕事もなかなか見つかりませんでした


目黒を歩いているとき従業員募集の小さな張り紙を見つけました


なんとかやっと従業員5人のネジを作る小さな会社に入ることが出来ました


ネジを作る会社の代表者はとってもやさしい人でした


他の古い社員で熟練工(じゅくれんこう)などと言われえらそうにしている人が居ました


とても意地が悪く仕事などまったく教えてくれません


熟練工

バカヤロウ!何やってんだ


怒鳴り散らしてよく人をイジメる古い社員でした


意地の悪い熟練工はとうに40歳は過ぎているのに独身でした


酒も煙草も吸わずパチンコだけが唯一ゆいつの趣味でした


人をイジメることも趣味ではないかと思いました


他に行く当ても無く我慢(がまん)をしようと努力をしました


他の従業員も良い社員もいました


良い社員

頑張れよ 気にするなよ


はげましてくれる人もいました


意地悪な熟練工のイジメにがまん出来なくて会社を辞めました


何も変化がない普通の二歳年上の初江さんはファミレスでアルバイトを始めました


初江さんも東京にも仕事にも馴染なじめませんでした


いかんせん2人で暮らしていくには大変でした


明日のパンの心配だけではなく今日のパンを探すのに明け暮れてました


くたびれ果てた2月16日の寒い冬の夕暮れに仕事を探して安アパートに帰りました


初江さんのボストンバックが無くなっていました


初江さんは一人でどこかに行方知れずとなりました


2人で固くちかい合ったことを思い出しました


源太・初江

死ぬまで一緒にいようね


人の心はもろく愛する若い2人が世の中に負けた瞬間を思い知らされました


源太と初江の恋物語はあっけなく幕を閉じました


だいぶ後になって二歳年上の初江さんは故郷に戻っていることが分りました


結婚して子供が居て 幸せに暮らしているとの風の便りで聞きました


ミコちゃん

そうなの たくさんの道が有ったのよ


幸せに続く道と生きる道は一つではありません


たくさんあることに気がつきました


ソロモンの宝のミコちゃんはサリーで作った裾絞(すそしぼ)りのバウパンツでお店に出ていました


バウパンツは明るい緑色でした


それにイラン製のピンクで真ん中にフリルの入ったサンダルをいて素敵すてきです


ブラウスはシルクの布地で薄い黄色でした


インナーは同じシルクのフィットインナーキャミソールのクリーム色でした


ブラウスからけて見えるインナーが何ともいえなくセクシーでした


お客はどうしても濃いクリーム色のシルクのインナーに目が釘付くぎづけになってました


ミコちゃんはメイクに2時間以上かかりました


特に目は念入りにメイクします


片方だけで30分はかかりました


ミコちゃん今日も素敵ね


ほめられると楽しそうに言いました


ミコちゃん

ありがとう メイクだけで30分もかかっちゃうの!


答えるのが日課でした


ソロモンの宝のお店には素晴らしい業務用のカラオケが入ってました


歌の競演をするのが大好きでした


ミコちゃんは弘田三枝子の 人形の家 が一番得意でした


次に得意な歌はTVのテーマ曲レオのうたとCM曲 アスパラで生き抜こうでした


弘田三枝子の歌はほとんど歌いました


しかもかなりの歌唱力でした


ソロモンの宝のお店には規律も強制もありません


弘田三枝子を知らないと入店出来ないことになってました


満月の夜の飲み物は無料になりました


ただし月に向かって()えることは厳禁となってました


ミコちゃんは一ヶ月に一度決まってお洒落をして十時半頃出かけます


メイクはいつもより入念でした


ツバの広い水色のミラーションの帽子をかぶってました


どこから見てもおネエには見えないミコちゃんはいつものように出かけました


横浜みなとみらいのインターコンチネンタルホテル二階のイタリア料理店ラ・ヴェラに着きました


ランチヴッフェを二人分注文します


注文し終わるとほとんど同時に一人の男が入ってきました


お待たせ


言って手も振らずに普通にラ・ヴェラの海が見えない側にゆっくり座りました


なんの変哲(へんてつ)も無い中肉中背の男でした


四十代後半か五十代位のサラリーマン風に見えました


特に格好が良いわけではありません

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