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圏外とキサス

若宮氏は一生懸命に働こうと思ってました


言われた事しかできない 気が利きません


ふさちゃんも絶対に出世は出来ない(えら)くなれないことは分かってました


まだ平社員でした


家族は奥さんと二人の子供が居ました


若宮氏

もう子供の時代には先祖がお公家さんなどと言うことはまったく関係なくなる


話してくれました


ふさちゃん

いろんな家系や家の格があってもそれなりに悩みも有り生き方もある


それから考えるようになりました


それ以来若宮氏と仲良しになって他のお店も一緒に飲に歩きました


若宮氏からの電話だけは困ってました


若宮氏から電話があります


若宮氏

もしもし若宮ですが


間が空きました


ふさちゃん

もしもしどうしたの


こちらから聞くまで答えがありません


会社でもそうなのか?仕事の電話は大丈夫なのか?心配になりました


余分なことは話しませんでした


ふさちゃんが東京に出て来てうさぎのお店を開いてから音信がありませんでした


若宮氏から突然!電話がありました


若宮氏

もしもし若宮ですが


相変わらず間合いがあってこちらから答えないと話が前に進みませんでした


ふさちゃん

久しぶりね どうしたの


話しかけました


若宮氏

東京に転勤なった


一言だけ言いました


ふさちゃん

それでどうするの


こちらからと聞きました


若宮氏

お店に顔を出す


しばらく間を空けて一方的に電話を切りました


三日ほどしたら若宮氏がふさちゃんのお店に来ました


相変わらず!バランタイン17年物に氷入れて静かに飲んでました


バランタイン17年物は一方的に電話を切られた後に用意しておきました


若宮氏はどこのお店に行ってもバランタインの17年物があると思っているようです


ふさちゃんにはどうでもいいことでした


お公家さんのお客がうさぎのお店に来ていると聞いて葵のママが見学に来ました


若宮氏の顔を見てました


葵のママ

うん・うん


うなづきました


葵のママ

若宮というと確か華族(かぞく)には入れなかったはずよ


博識はくしきの所を見せました


葵のママ

キサス キサス うん・うん


歌いながらうなずくと意気揚々(いきようよう)と戻りました


葵のお店に戻って行く後姿は心なしか大きく見えました


若宮氏は相変わらずうさぎのお店にたまに来てました


バランタインの17年物をグラスに氷を一つ入れて静かに飲んでました


ふさちゃんの話を楽しそうに聞いて静かに小さく微笑んで静かに帰ります


ふさちゃんにも未だにどうしても分からないことがありました


若宮氏

こんばんわ


入って来ると座りもしないで帰ることがありました


若宮氏

忘れ物をした


それきり来ないことが度々(たびたび)ありました


ふさちゃん

いったい何を忘れたの


若宮氏

忘れ物


答えるだけでした


何を忘れたのか?どうして帰らなくてはならないのか?分かりません


分からないことがまだありました


若宮氏は携帯電話を持ってました


お店にいるときに若宮氏の携帯電話の着信音が聞こえてきました


電話をポケットから出そうともしませんでした


ふさちゃん

電話鳴ってるわよ!


若宮氏

「うん 圏外だから」


ふさちゃん

だって呼び出しているわよ


若宮氏

いつも出ない


ふさちゃん

急用かもしれないわよ


若宮氏

「急用なんて無い」


ふさちゃん

携帯電話なぜ持ち歩くの


若宮氏

会社で渡された


ふさちゃん

「はあぁ〜 そう」


そう言えば若宮氏が携帯電話を使っている所を一度も見た事がありません


電話番号も聞いたことがありませんでした


お店に電話かけてくる時も公衆電話でした


おネエ通りでは高価なお酒をボトルでガブガブお飲みになるお客が大好きです


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