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うでたまごとコックリさん

川向こうのさっちゃんのことは三郎も良く知ってました


三郎が昨年実家に帰った時にモモが入ったダンボール箱を持って来ました


3キロ離れたさっちゃんの家から4キロのモモを歩いて届けに来た力持ちの女性です


昔から同じ村なので知ってました


確か離婚して実家に出戻っていると聞いてました


悪い予感がしました


三郎

ぼ 僕は仕事であちこち行くので結婚は考えていない


やや強めの口調で言いました


兄嫁

いやだ!明日さっちゃんが来ることになっているだよ


三郎

なにも聞いてない いったい何しにくるの


兄嫁

三郎さんの大好きな うで玉子 を持って来るだよ!


すねたように三郎の顔を再び平べったい顔でのぞき込むように言いました


そう言えば川向こうの目が細く痩せて力持ちのさっちゃんの実家は養鶏場を経営してました


さっちゃんが出戻って来る前に一度だけ行ったことがあります


思いっきり詰め込まれた多分幸せな一生を送ることは出来そうもないニワトリを見ました


養鶏舎の中を見た三郎はなんだか分からない切なさを感じて思わず天を仰ぎました


そこにはスレートの古く汚れた屋根だけが見えたことを思い出しました


三郎はそれでも うで玉子 は好きです


川向こうのさっちゃんはやせて目が細くお稲荷さんのような顔をしてました


三郎は大事なことを思い出してました


小学校六年生の夏休み頃までさっちゃんはとてもかわいい女の子でした


冬休みさっちゃんと二人の女友達がさっちゃんの家に集まってコックリさんを始めました


コックリさんにいろんなことを聞いてみました


コックリさんが終わると窓を開けてお礼を言います


さっちゃん

コックリさんありがとうございました お帰りください


お礼を言いました


うっかり窓を開けるのを忘れました


コックリさんは帰れないで今もさっちゃんの家にいる事を思い出しました


もしや さっちゃんはコックリさんなのかもしれないと思いました


三郎

う〜寒い


全身がチキンスキンになり寒気がしました


三郎はそれ以来コックリさんを試みる場合は終わると必ず窓が開いているか確認します


三郎

コックリさんありがとうございました是非お帰りください


お礼を言ってコックリさんがお帰りになってから窓を閉めることにしました


それより表に在った赤色のワーゲンゴルフのことが気になりました


話しをそらすように昨年より更に顔の平べったくなった兄嫁に話しかけました


三郎

姉さん車変えたの?


聞きました


話が終わるか 終わらないうちに兄の二朗のせきばらいが聞こえてきました


兄の二郎

うっおふ〜おん!


三郎を見ていました


三郎も何かありそうだと感じてその場で話は終わりました


後で姉の春子が三郎に告げ口しました


今年の五月の連休に二男の嫁と車のことで大ゲンカをしました


兄嫁は自分の乗っていた古いスズキの名車アルトをバカにされたとかんちがいをしました


その時 兄嫁の顔が更に平べったくなったそうです


次の日DUO山梨に飛んで行くとワーゲンゴルフEハッチバックの赤を注文しました


勿論60回払いのローンでした


それで今回は次男の兄二郎の嫁が来ない訳が分りました


三郎も うで玉子 には未練を残しながらも早めに帰ろうと次の朝早く東京に戻ることにしました


三郎は帰りの朝早い電車の中で考えました


どこに住んでどんな仕事をしていようがおネエだろうが個人の自由よと思いました


古里の匂いは必ず心のどこかに潜んでいて生まれ故郷には帰りたくなるものだと気が付きました


三郎

うさぎ追いしかの山♪小鮒釣りしかの川夢は今もめぐり〜忘れがたきふるさと♪


小さな声で口ずさみました


やせて目が細く力持ちの出戻りのさっちゃんが早くどこかにとついでくれる事を強く祈りました

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