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まくはうりと不機嫌な女

お花のママの彼氏らしいかっちゃんはおネエ好みではありません


職人といわれればそう見えるごく普通の青年でした


無口で無心風が吹くがごとしなのでどこにいるのか分からないような人物でした


ある年五月の桜にはもう遅い春の日ブラ〜とどこに行くか決めないで出かけました


たまたま見たオペルベクトラの赤いステーションワゴンの右ハンドルを新車で買いました


赤いオペルベクトラを買ったかっちゃんは早速お花のママの所にいつもの普通の顔で来ました


お花のママ

かっちゃん車 買ったの


普通の顔をしているかっちゃんにたずねました


かっちゃん

甲州に出かける


お花のママ

お仕事で行くの


聞いてみました


かっちゃん

ふつうにドライブ


お花のママ

一緒に行ってもいいかしら


かっちゃん

うん・


普通に答えました


お花のママ

ちょっと待ってお化粧直すから


かっちゃん

うん・


お花のママはお店の中に入ると念入りにお化粧を直しました


赤いオペルベクトラの助手席にお花のママが乗り込むとギュ〜と発進しました


中央高速道路に入るとかなりのスピードで下り線を走って行きました


お花のママがスピードメーターを見ると!百六十キロをさしていました


お花のママ

かっちゃん少し早いかも・


かっちゃん

何時ものスピード・


普通の顔でそう言いながらもスピードを百二十キロぐらいまで落とします


日曜日でもないのに韮崎インター手前から渋滞してました


韮崎インターで下りて国道二十号線を右折して甲州街道を北西に向かって走り続けてました


北杜市に入ると間もなく道の駅 はくしゅう という看板かんばんが目に入りました


お花のママ

少し休んでいきましょうよ


かっちゃん

うん・


駐車場にオペルベクトらを入れました


道の駅はくしゅうに入ると右側にカフェがあるのが見えました


二人は甲州街道が見える側に座りました


他のお客がお花のママとかっちゃんをジロジロ見ているのが分りました


お花のママはかっちゃんの向かい側に座っていました


わざとかっちゃんの隣に座りなおしました


お花のママはやさしくたずねました

かっちゃん何にする


かっちゃん

アイスコーヒー


注文をとりに男性の店員が来てお花のママをジロリと見ました


男の店員

ご注文をどうぞ


ぶっきらぼうでした


お花のママ

アイスおコーヒーおふたつ


そう言うとお花のママはきつくアイラインを入れた右目を思いっきりウインクしました


ぶっきらぼうに注文をとりにきた男性の店員はほほが赤くなりました


男の店員

は はい


厨房の方に入って行きました


厨房ちゅうぼうの影からそっと顔を出してお花のママの顔をのぞいているのが見えました


お花のママ

かっちゃん今の男おネエに向いているわね お花も好きかしら


かっちゃん

そおぅかなぁ


そんな話をしていると今度はアイスコーヒーを女が運んできました


不機嫌にアイスコーヒーの入った厚い重そうなグラスをドスンと音をたてて置きました


アイスコーヒーを運んで来たブスのどでかい顔を見て言いました


お花のママ

あら 美しいわね〜手が でも不機嫌ね!何か悪いものでも食べたのかしら


不機嫌な顔の女はムッと明らさまに(まゆ)をつり上げ口をへの字にしました


どう見ても安物のサンダル形のウエッジソールのかかとを引きずっていきました


お花のママ

不機嫌でも人間美しい所が一つ位は・・でも歩き方がいかにもお下品ね


お花のママはアイスコーヒーにガムシロップとミルクを入れてあげようと手に取りました


かっちゃん

両方入れない!


お花のママ

えっどうしたの


聞きました


かっちゃん

両方とも入れない


普通に答えました


食品添加物の元セールスマンが書いた 食品の裏側という本をを読みました


それから何も入れないと言いました


お花のママもお付き合いをしてアイスコーヒーに何も入れないで飲み終わりました


帰りに入り口左側にあった農林産物販売コーナーに向いました


販売コーナーに入るとそうめんウリと書いた名札が張ってある沢山のウリが並んでました


隣に橙色だいだいいろのウリがコロンと一個だけ置いてあるのを見つけました


そうめんウリの四分の一ぐらいの大きさでした


かちゃんはお花のママに聞きました

なんだろうか


お花のママ

何か昔見たことがあるわ


かっちゃんはそ〜と優しく手にとって見ました


ウリは長く持っていると消えそうな緑色の縞模様(しまもよう)がありました


裏返してみると“まくはうり”百五十円税抜きと裏にシールが張っ有りました


かっちゃん

ママ 買って帰ろう


お花のママ

そうね帰って冷やして食べてみましょうか


早速レジで支払いを済ませました


まくはうり をお花のママが大事に抱えて助手席に乗り込みました


お花のママはレジで入れてくれたビニール袋から出して香りをかいでみました


お花のママ

「そんなに遠くない昔どこかで出会ったなつかしい香りがする


お花のママはやさしい顔になってなにか思い出していました


のんきなまくはうり を乗せて元来た道を戻りお花のお店に着いたのは夕方6時でした


お花のママ

かっちゃん!冷蔵庫で冷たくしておくわよ


かっちゃん

うん!明日来る 明日食べる


かっちゃんは明日 まくはうりを食べるとめずらしくはっきり言いました


その日かっちゃんはそのまま帰って行きました


その夜はすずらんのお店はけっこうお客が入りました


お花のママは冷蔵庫の中に入っている まくはうり を誰にも見せませんでした


冷蔵庫の中に秘密の物が入っているかのように用心深く開け閉めしました

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