占いと整形手術
オリーブのお店はドレミファソラシドのママがお店を開く前からありました
林檎の歌より少し後に出来たお店です
オリーブのママの年齢は良く分りません
住まいはお店の裏にあたるビルの余り大きくないマンションに住んでました
元々は古いアパートをバブルの時に大家が六階建てのマンションに建替えしました
マンションになってからも同じ家賃で住み続けてました
2DKのマンションですが一室は沢山の本で部屋は埋まってます
オリーブのママは源氏名を良子と名乗ってました
同じおネエ通りのかほる子と言う占い好きのお店のママが勝手に源氏名を変えてしまいました
かほる子
お店の方角から見るといかにも名前が悪いわ 私が占ったら南と出たわ
勝手に南と名前をつけました
オリーブのママ
いい名前よ 南なんて ステキ!
かほる子
違うわ 南て読むのよ
オリーブのママ
ホホホホ 美味しそうな お名前 ね
とっても気に入っていました
オリーブのママ
南て読むの よろしくのことね
おネエ通り中のお店に片っ端から自分の新しい名前をお披露目して歩いてました
しかもお披露目パーティまで開くつもりでした
それだけはかほる子のママに何とか考え直すよう 一生懸命説得されて止めました
葵のママ
オリーブは熱でもあるの 誰か早く病院に連れて行くほうがいいわよ
心配してました
オリーブのママは昔から痩せていて沢山食べても太らないため貧相な顔立ちでした
顔の頬を整形手術で膨らませました
少しでも顔をふっくらと見せようとしました
失敗して頬が顔の前のほうに出ただけで正面から見るとほとんど整形手術前と変りませんでした
どこで いつ 整形手術を 前の顔は どんな顔だった等 誰も聞かないことにしていました
写真も昔の物は育てられた叔母の所に置いて有りました
叔母の家が火事で焼失して子供の頃から整形術前までの写真はその時一緒に焼けました
育ててくれた叔母も十年ほど前に亡くなったと泣きながら話しました
オリーブのママ
亡くなった時間に叔母の魂が会いに来たの 周りを飛び回ったのよ
すごく輝いて飛び回ったので自分のことを心配してくれていると今も信じていました
その話を葵のママにしました
葵のママ
私のところには誰も来ないね〜お前さんをお迎えに来たのよ
オリーブのママ
まだ逝くのいやだわ
葵のママ
渡し賃はまだ三文だろうね 値上げになっているとこまるわ
葵のママは三途の川の渡し賃は用意してあると自分の心配をしてました
オリーブのママ
困った 私は三文ためてないわ
葵のママ
大丈夫だよ ママは長生きするわよ
力強くオリーブのママをはげましました
オリーブのママは泣き虫で涙もろいところがありました
涙もろいのは優しい証拠だと確信してました
オネエ通りでは誰も信じておりません
涙もろいオリーブのママは相変わらず悲しい本を読んで さめざめ泣いて涙を流してました
涙は整形手術で顔の前に出た頬の上を横に流れて耳の方に回り込むように落ちて行きました
オリーブのママは読書好きで本を読むことは大好きです
ヒマな日には必ず本を読んでました
カウンターの右のに大きな水玉と小さい水玉のブックエンドに本がはさまってました
本は時々変わります
一ヶ月半位前から一冊の読みかけの本がありました
貧困の終焉
自分たちが生きている世界の貧困を無くすために書かれた本です
もう一冊は夏目漱石の「吾輩は猫である」犬山市の明治村に行ったとき買いました
だいぶ前の事なので詳しくは覚えてません
確か名古屋駅から名鉄線の犬山駅東口で降りてバスで二十分程の所にあるはずと言ってました
もう一冊どうしても読んでおきたい本がありました
題名はエコロジカル・ダイエット副題(生きのびるための食事法)ジョン・ロビンズの本です
初版本は1987年で再販予定は無く少し時間が経っている事から手に入りませんでした
ドレミファソラシドのパソコンが出来るカレンちゃんにインターネットで探してもらってました
ヒマな時は早めに本が入れ変わりました
一ヵ月半ばかりお客が途切れる事はなくお茶はひくこと無く忙しく働いてました
オリーブのママ
読書は余り進んでいないの ホホホ
お客が途切れないことを余り嬉しくはない様子でした
オリーブのママはブックエンドと壁の間の本を眺めて 複雑な表情でした
オリーブのママ
いそがしいのも良し悪しよ
お店のお客に普通に言います
相変わらず悲しい本を読んで一ヶ月に3リットルは涙を流してました
おネエ通りでは知らない人は居ないのですが見ない振りをしてました
葵のママ
女は泣いた数だけ幸せになって男は泣いた数だけ幸せを無くすのよ 私は泣いたことないの
葵のママは笑いを浮かべて幸せそうな顔をしてました
おネエ通りでは答えたくないことは聞き漏らします