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魔女と同級生

葵のお店の一番奥にほおずきと言うお店がありました


カウンター三席とボックス席一つのそんなに大きくないお店です


団塊だんかいの世代のママがいました


生まれも育ちも静岡県の小さな田舎町でした


良く(かた)るママでした


本人は語っているつもりはありません


本人も気がつかないうちに余分なことまで解説します


源氏名は茶古ちゃこと名乗ってました


背も大きくなく華奢きゃしゃでなで肩でした


女性物をきれいに着こなしてました


冬になると黒のアニエスベイのマントを着て出勤します


葵のママ

もう少し鼻が高ければ魔女なれたのに〜まことに残念だわ〜


無責任なことを言いました


健康のためだと十五分位のマンションから歩いて通っていました


茶古さんは反応が少し遅い・盛り上がらない・静かに話をするおネエでした


盛り上がらないのも静岡県人の特徴だといつも語っております


結婚してましたがおネエになる前は大手企業の生産会社で総務課長までなりました


仕事が大変で残業続きでした


自宅に戻れないことなども有り二年も経たないうちに離婚しました


仕事と結婚すれば


奥さんは一言残して実家に帰りました


奥さんとの間には子供は居ません


当時奥さんとベッドを共にしたことは三回だけありました


疲れていたので不覚にも三回ともそのまま眠ってしまいました


ある日茶古さんの所に静岡の友人からほんとうに久しぶりに電話が入りました


仲良くしていた鈴木君という同級生の父親が昨日亡くなったと言う訃報(ふほう)でした


連絡をよこした友達は静岡で古くから自転車店を開いている同級生です


次の久しぶりに静岡に帰りました


葬儀が終わり同級生達10人程集まって松ノ木という蕎麦屋で軽く食事をしました


同級生の一人が葬式の後なので小さな声で遠慮しがちに乾杯をと言うことでした


出席者全員は小さな声で(おそ)る恐る乾杯をしました


茶古さんはその内におねえ言葉で話してします


同窓生の一人が茶古さんの顔を覗き込んで言いました


山本君もしかしておネエ?


聞いてきました


茶古さん

「そうよ!」


わお〜おおお〜はははは


出席した同窓生全員が大笑いをしました


同級生で一番仲が良かった佐野君がかばうように言いました


佐野君

今日は実家に寄ってから帰る?


茶古さんは迷いました


一番上の兄は五十代になると直ぐに(がん)で亡りました


実家に帰っても兄の嫁と子供が居るだけでした


茶古さん

忙しいことがあるので今日は帰るわ


佐野君

そうか!たまにしか会えないからゆっくりしていけばいいのに


やさしく言ってくれました


結局 佐野君に新幹線の新富士駅まで送ってもらいました


車から降りるときのことでした


茶古さん

ありがとう 又ね


ウインクをしてサイドブレーキに置いた佐野君の手を上から軽くにぎりました


佐野君はだまって茶古さんの目を見つめていました


茶古さんはその日に東京に戻りました


おネエだと笑われたことは少しだけ心が傷ついていました


職業 おネエ・・・


つぶやきました


葵のお店を通り過ぎようとした時です


お店のドアが開け放しでした


お店の中でママがエアコンもかけずにカエルのような顔をして居眠りをしてました


茶古さんは声をかけようか?


余り気持ちよさそうなのでそのままにして行こうかと思った瞬間でした


葵のママ

帰ったのかい


目をあけずに聞いてきました


茶古さん

あら 昼寝してた じゃないの


葵のママ

お店では眠ったりしないのよ ホホホホ お葬式だったの


茶古さん

そうなの 田舎だからたいへんよ でも お葬式帰り分るの?


葵のママ

お香の匂いがするのよ


茶古さん

えええっ まだお香の匂いが


葵のママ

普通は 七日ごとに七回 四十九日まで行う事が正式ね


茶古さん

お友達の父親なの


葵のママ

そうかい 何歳だったの?


茶古さん

数えで84歳だったのよ


葵のママ

へえ〜まだ若いね まだ まだこれからが楽しいのよ


残念そうに言いました


茶古さんは同級生におネエだということがばれて大声で笑われたことを話しました


葵のママ

あれ〜茶古さん おネエじゃなかったかしら?


茶古さん

おネエよ


葵のママ

何も言うことないわね!それよりネカマって分かる?


茶古さん

え〜ネカマ??


葵のママ

やはり知らないのね 勉強不足よ


茶古さん

ネカマってなんのこと?


茶古さんが質問をすると葵のママはしばらく顔を傾けてました


葵のママ

説明すると長くなるからそうだ こんなことをしていられない 今度ね!


歌を歌いながら階段を上がり始めました


葵のママ

ママからもらったクラ〜リネット〜あれ〜パパだっけ!


途中で振り返りました


葵のママ

今度私が暇な時に一度出ておいでな 説明をしてあげるから


茶古さん

そうね お邪魔じゃまするわ!


葵のママ

そん時はくれぐれも品川巻きの手土産なんて持ってこないでね


二階に姿が消えていきました


消えたはずの葵のママがヒョコッと顔だけ出しました


葵のママ

品川巻きは東京駅でも売てるらしいよ


そう言うと顔が引っ込みました


茶古さんは取りあえずお店を開けにおネエ通りでは一番奥に在る自分のお店に向かってました


オリーブのお店からかなり大きな声で泣き声が聞こえてきました


「おおお〜お〜い〜おい〜おおおお」


オリーブのママは悲しい本を読んで涙を横にこぼしていると分かりました

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