サムライと執事(しつじ)
葵のママの先祖は加賀藩の米を扱っていた北陸の大きな米問屋だったと話し始めました
ママが子供の頃は学校に行くにも帰るのにも執事が送り迎えをしました
母親は葵のママが3歳の時に二人目の子供を生んですぐ悪く亡くなりました
実の父はすぐに若い後妻をもらいました
米問屋は葵のママが20歳になる前に父親が放蕩三味で店をつぶしました
その後 家族はバラバラでどこに居るのか分かりません
母親の顔も育ての親も記憶は残っていないのでそんなことはどうでも良い事よと話しをしました
葵のママ
執事の顔だけはまだ忘れないわ
執事の顔は覚えてました
一番覚えている事は子供の頃に住んでいた家の三軒隣に有った柿の木でした
その柿の木が秋も深くなる頃たわわに実り食べごろの美味しそうな色になります
しかもその柿の木は甘柿でどうしても食べたいと思ってました
一大決心をしてそぉ〜と柿の木に上り一番太い枝と枝の間に座りました
ようやく手をのばして中でも色の良い一番美味しそうな柿をむしり取りました
パクっと口に入れてみるとなんともいえない満足感が口の中に広がっていきました
満足感に浸って間もなく下から声が聞こえました
なにをしてるんだ!
葵のママ
やばい!見つかった
思わず声をあげて下を見ました
柿の木の持ち主の爺さんが長い竹の棒を持っておそろしい顔をして上を見上げていました
長い竹の棒でお尻を思いっきり2回も下から突き上げられました
その衝撃で柿の木から落ちて思いっきりお尻を打ちました
子供心にも不味いことになると思い住んでいる家とは反対の方角に逃げました
柿の木から落ちたお尻がすごく痛かったことを思い出しました
柿の木の持ち主は元々サムライの家だったことに気がつきました
夕暮れ時になりしぶしぶ家に帰ります
子供のころのママは静かにそう〜と家の人に気づかれないように帰りました
目ざとい継母は気が付きました
継母
お帰り!
手を洗って食事を済ませると継母が皿に入れた柿を持って来るのが見えました
思わずのけぞるのをこらえました
継母がむいてくれたので食べたらまさしくあの甘柿に間違いありません
甘柿を食べながら父と継母が話をしているのを聞いていました
継母
あのケチンボが珍しく坊ちゃんに食べさせてくれ
子供心にもサムライの心を強く感じました
今もそのサムライと柿の味は絶対に忘れることは出来ません
葵のママは柿木から落ちた時シッポを無くしたと話しました