8話 朝食を食べよう
かなり間が空いてしまい申し訳無いです。
今回はいつもより多めです。
2021/09/30 修正箇所直しました。
ーーまだ志露賀が起こされる1時間前の食堂内ではぞろぞろと天使達が集まって来る時間帯で1人の天使が入り口で佇んでいた。
「遅いなぁ、ティナちゃんまだかなぁ?」
いつもなら自分を待ってくれてる友人が今日はまだ来ていないことに気づいて、もう20分は入り口で待っているのだが来る気配が全くない事に少し焦っていた。
他の天使も入り口で1人そわそわして立っている天使が気になりそのままにしては置けず、入り口付近に座っていた1人の天使に周りの知り合いらしき天使達の視線に促され、はぁ、と溜息を吐きつつも声を掛ける。
「君1人でずっと立ってるけどどうしたの?」
「あ、あの大丈夫ですからお構いなく」
「流石にずっと立ってる子をはい、そうですかと言って放っておく訳にもいかないし、何より周りの奴らがうるさいからね」
最後の言葉に反応して頷く天使達に視線を向けながら言う。
「友達を待ってるだけですから、本当に大丈夫です」
「そう、なら席だけでも取っといてあげるよ、 何人分必要だい?」
半ば強引に話を進められて、断れなくなり
「…じゃあ2人分お願いします」
後で知る事になるが結局志露賀の世話係のティナリーゼは志露賀と一緒に上級天使の席に行く事になるのでこの2人で食事する事になってティナリーゼは後日愚痴に付き合う事になるのだが。
ーーそして寝坊したティナリーゼと志露賀が食堂に着いた頃、2人は扉の前で譲り合いをしていた。
「さあ志露賀さん食堂に入ってください、やはり主役の志露賀さんが先の方がいいと思いますし」
「いやいや俺食堂に来るの初めてだから席とかシステム的なのがわからないし、紳士としてここはレディファーストでお願いします」
そんな2人に近づいて来る人に気づいたティナリーゼは少し驚きそっちに目を向け、それに気づいて志露賀もそちらに目を向ける。
「どうしたんだ扉の目の前で痴話喧嘩なんかして」
2人をからかいながら来たミアは天使に相応しい微笑みを浮かべる。
その微笑みにティナリーゼは見とれながらも抗議する。
「別に好きでここにいる訳じゃないですよ、ただ少し遅刻して入りずらいだけで…」
「主にティナリーゼさんの寝坊が原因で」
「それ言っちゃいますか!志露賀さん!」
さっきまで気にしてた事をほじくり返されて顔を赤くするティナリーゼ。
「ほう、ティナリーゼは寝坊して遅刻したのか?」
遅刻という言葉に反応したミアが眉をひそめて聞き返す。
ティナリーゼはそんな上級天使に言い訳するにもいかずに謝るしかなかった。
「すいませんでした」
そんな素直な姿勢が気に入ったのかミアの機嫌は元に戻った。
「まあ素直に謝るなら良しとしよう、とりあえず中に入らないか」
「その入りづらさで僕たちは話してたんですけどね」
「あっそういえば私が起こしに行った時志露賀さんはまだ起きてなかったんですよ」
さっきの仕返しとばかりに爆弾を投下するティナリーゼ。
「何?、それは本当か?」
ミアは志露賀の目を見て確認するが。
「まあ世話係ならきちんと起こしにきてもらわないと困りますし、俺朝弱いですし」
「ふむ、一理あるが朝が弱いとはまるで悪魔のようだな」
ミアが志露賀を特に責めないのはニシアが志露賀の事を気に入ってるという事と何より自分でも志露賀を気に入ってるからの方が理由として大きいのかもしれない。
そんな2人に爆弾が不発に終わりさらに会話から外されたティナリーゼは責めるような視線を志露賀に向ける。
視線に気づいたかはわからないが背筋に寒気がしたので志露賀は話を進める。
「悪魔は朝に弱いんですか?」
「朝というよりは日光に弱いけどある程度の強い悪魔には効かなくなるな、まあ詳しくはシャリーナに聞いてくれ」
ティナリーゼの顔が段々怒ってきたのに気づいたミアは志露賀との話を切り上げる。
ティナリーゼは志露賀に怒った視線を向けプイッと視線をずらしミアに話しかける。
「そういえば、ミア様もなんで遅刻したんですか?」
ミアはティナリーゼの疑問にあははと苦笑しながら答える。
「上級天使になると仕事が増えるからどうしても時間が取れなかったりするし人によっては食堂に来なかったりするやつもいるからな
、まあ上級天使だと自分のテーブルが食堂の2階にあるから席とかは気にせず食べることができるしな」
ティナリーゼはまだ知らなかったのか驚きすぐに納得する。
「道理で上級天使の方を見たことがないわけですね、それにしても2階なんてあったんですね」
「まあ初級天使はともかく中級天使ですらあまり知られてないからな」
「そんなこと話してもいいんですか?」
自分の身が危なくなるのではないかと怯えるティナリーゼに笑って大丈夫と伝えるミア。
「別に秘密じゃないし元々上級天使と話せる天使が少ないからあまり伝わらないだけだからな」
ホッと溜息を吐くティナリーゼにしびれを切らした志露賀が声を掛ける。
「そろそろ行こうよお腹減っちゃって待てないよ」
さっきのティナリーゼの視線に気づいてないから言えることでありそれがわかった2人の天使は目を見合わせながら溜息を吐く。
なぜだろうすごく疎外感を感じるぞ。
「志露賀もこう言ってるし良かったら私のテーブルで食べないか?志露賀は昨日きたばかりで噂の中心だろうし噂を知らない他の天使が混乱しない為にもな」
この時噂を知らない天使は余程の潜りか外に用があっていなかった天使ぐらいだった。
その情報の伝わる速さはやはり女子だからというのもあるが、女しかいない天界に他種族の異性が現れて1人の天使が世話係になったと聞けば気になってしまうのが女子の女子たる所以だろう。
本人達は気づいてないが今一番注目されてるであろうこの2人をこのまま食堂に行かせるのは酷だと思いミアは2人を誘ったのだった。
そんな事を知らないティナリーゼは自分より上の中級天使もあまり知らない上級天使のテーブルにお呼ばれされたのが嬉しかったのか即「行きます!」と返事をしたかったが志露賀が悩んでる様子だった。
「どうしたんです?志露賀さんも行きたいですよね」
興奮した様子のティナリーゼが早く行こうと強引に話を持っていくが志露賀は首を横に振った。
「どうしてですかせっかくミア様が誘ってくれてるんですから行きましょうよ、それともさっき会話から外されて怒ってるんですか?でもそれはおあいこですからね」
静かになったタイミングで志露賀が口を開く。
「そうじゃなくて俺はいつもティナリーゼさんが食べてる物とかティナリーゼさんの友達
と話して見たいと思っただけだよ」
志露賀の言ったことが意外だったからかフリーズするティナリーゼ。
あれ、変なこと言ったかな俺?普通に来たこと無いから教えてもらおうとしただけなのに。
ティナリーゼはやはり異性の世話係として思うことがあり何より少し志露賀の事が好きになっている自分がいるのを自覚していたからその言葉を受けたティナリーゼは頭の中で(これは志露賀さんも私の事が…)とすでにオーバヒートしそうだった。
そこに無理矢理水を差すミア。
「まあ、とにかく私のテーブルに行こうか」
「まあティナリーゼさんがこうなっちゃってるし仕方ないですね」
志露賀まさか自分でこうしたという自覚ないのか?それともこうなる事すら予測済みなのか?
ミアは少し志露賀が鈍感か計算でやったのか悩んだがどっちにしろ恐ろしい奴だなと少し呆れながら思っていた。
ーー結果、放心状態のティナリーゼをこのまま連れてくのは難しいという事でミアのテーブルで一緒に朝食を取らせて貰うことになった。
「ミア様このまま入ったらみんなに見られて結局意味ないんじゃないですか?」
ドアノブに手を掛けるミアに志露賀は疑問を口にする。
「まあ、普通のドアならそうなるがこのドアは魔法回路が組み込まれていてドアノブに触れた相手の魔力を感知して登録されている相手なら登録されるときに一緒に登録された場所に行く事ができる優れものだ、ちなみに部屋の増設も出来るぞ」
「一体全体そんな凄いもの誰が作ったんですか」
ミアは待ってましたと言わんばかりにドヤ顔になりながら口を開く。
「それはだな!天使の中の神天使!私の全てであり愛くるしく愛おしいニシア様がお造りになられたのだ!」
いやそんなニヤケ顔とドヤ顔繰り返さなくても…あと神と天使って別々の存在の筈だよな?
志露賀はミアの残念な所に心の中で突っ込みながらも笑うしかなく、そんな志露賀を見て少しは恥ずかしく思ったのかミアは頬を朱に染めながらも咳払いをして改めて口を開く。
「まあとにかくだな詳しく魔法回路について知りたいならシャリーナに後で聞くといいさ、今は朝食を取ろうか」
その後は大人しくミアがドアノブに手を掛け回すと魔法回路が作動したのかドアの隙間から青白い光が漏れすぐに収まりそのままミアがドアの中へ進むとそこは落ち着いた高級レストランの個室のような場所に高級感のある木で出来た1人には十分すぎるテーブルとそれに見合った柔らかそうなクッションのついた椅子が4脚あるだけだったが他の家具が入る隙間のないくらい完璧な空間だった。
「凄いとしか言いようがないな」
「本当ですね」
いつの間にか現実から帰って来ていたティナリーゼが志露賀に共感する。
「ふふっ、私も最初に来た時は驚いたものだ1人で使うには勿体無いぐらいだが慣れというのは恐ろしいな」
2人が落ち着いた頃を見計らってミアが席を勧めて座らせる。
結局昨日は何も食べれてないからこれが死んでから初めての食事だけど何が出てくるんだ?というか天使って何食べるんだ?
「よしでは食事にするか」
ミアのその言葉とともにテーブルが青白く光る、すると卓上にはスープから果物と一通りの物が現れた。
「これも魔法回路ですか?」
半分驚きと半分呆れを込めた口調で志露賀は聞く。
「そうだ、これもニシア様がお造りになられた」
やはりドヤ顔でミアが答える。
「凄すぎですね、まさか朝食を魔法で作り出してしまうとは」
ティナリーゼもこれには志露賀と同じ意見なのか苦笑いをしていた。
するとふと疑問に思った志露賀が口を開く。
「ティナリーゼさんはいつもこんな感じじゃないの?」
「私みたいなのがこんなに凄いもの貰えるわけないじゃないですか!」
「ならいつもはどんな感じなの」
「パンが主食でメイン数品とサラダと果物ですね」
まあ良くあるホテルの朝食に近い感じか。
「まあいくらでもおかわり出来るからいっぱい食べてくれ」
ミアにそう言われティナリーゼが集中して食べ始める。
そんな光景をミアと志露賀は微笑しつつ食べ始める。
ミアさんってニシア様が絡まないと基本的に頼れるお姉さんって感じだな。
そう思いつつも志露賀も食事に集中する事にした。
澄みきった透明なスープをスプーンで掬い一口飲む。
美味しいな、なんていうか具が無いのにしっかりと具材の出汁が出てるからこそ具を必要としてないのかな
次はレアに焼かれたステーキを食べてみる。
個人的にはもう少し焼いてほしいと思ったが、このステーキはこれ以上焼くと脂が全て溶けてしまいそうなぐらい滑らかで、肉質の良さがこれでもかってくらい判るな、この塩だけで食べるというのもとても良い甘い脂と塩の塩っぱさがとても合う。
そのほかにも少し形の違うフルーツだったりと志露賀とティナリーゼは大いにミアの朝食を堪能した。
「それで俺の今日の予定は?」
志露賀は食後のティータイムを楽しんでるティナリーゼに聞く。
「えーっとまずはミアさんとの訓練でその後にシャリーナさんの座学って事になってますね」
「先に訓練なのか、ミアさんお手柔らかにどうかお願いします」
志露賀は懇願に近い形でお願いするが、
「昨日厳しくすると約束したし、寝坊の件もあるからそれは却下だな」
あっさりと志露賀は敗れ、昨日のことと寝坊の事を言われティナリーゼも志露賀同様に落ち込むのであった。
「この後は先にティナリーゼと共に武器庫に行って一通りの訓練用の武器を貰って訓練場に行っててくれ、私はニシア様の所に行ってから向かう」
志露賀はニシアの所に向かうと聞いてもしかしてそのままニシアの所にいるのではと思ったがそれを察したミアが口を開く。
「何、少し見てから魔法で駆けつけてやるさだがそれまでに武器を運んでおけよ、もし出来てなかったら訓練もっと厳しくするからな」
志露賀はきっとこの人は爽やかな笑みを浮かべながら千尋の谷に突き落としてくるに違いないと思った。
「さて、そろそろ行くがティナリーゼ、武器庫と訓練場の位置は分かっているか」
ミアは心配そうにティナリーゼを見る。
分かりますミアさん、この人天然だからもしかするとがあるんですよね。
2人の心配をよそに自信を持った声でティナリーゼが言う。
「はい、大丈夫です!」
この場で志露賀のみが思うのであった『あっこれフラグ立ったな』と。
頑張って5000字以上書いたけど内容はほぼ進んでない件について。
ブクマ登録、感想、評価はとても励みになります。
よければまだブクマ登録されてない方はしていって下さい。
次回は少なくとも12月以内には上げたい!。