ポラリス
「大したことはありません」
「さすがは100年に1人の逸材!」
少女はテレビの表彰式を見ている。興味がない今どきのアーティスト、カッコワライ。情勢把握のために仕方なく見ているだけで、他意はなかった。
「適当に描いたら受けたような絵だな」
母の仕事の都合で展覧会に招かれ、好待遇の特等席から鑑賞させられる。なぜ僕が貴重な時間をこんなクソつまらない絵に消費しなければならないのだ。
「実力があるのにまともに描いてないのね」
「こらこら聞こえるよ」
父の付き添いで来てみれば何が逸材、どうせ次に現れたやつが1000年の奇跡的神絵師!と大々的に取り上げられるに決まっている。
「あー帰りたい」
「俺もです」
「あ、ご本人……」
少女は動揺する中年と違い気にせず歩いていく。普通の人間なら取り繕うところを真顔である。
◆
「最近表の仕事ばかりだな」
天才アーティスト丹画ベルタは仮の姿で、悪の組織のエリート幹部という裏の顔を持つ。彼の裏での仕事は芸術を通して上層部と組織を癒着させることである。
今回の任務は大統領補佐の娘を勧誘することで、古個展を開き表の顔で本人と接触するのだった。
その最中に学生時代からのライバルで正義の組織のエースである祥文、本名は白部エイジと遭遇してしまった。調査報告によれば補佐の娘はエイジに好意があるらしい。